インボイス制度の実務対応 ~ 施行から1年経過して~
[アクタス税理士法人 News Letter2024.10]
2024/10/22
インボイス制度の実務対応 ~ 施行から1年経過して~ [News Letter]
インボイス制度が2023 年10 月1日より施行され1 年が経過しました。制度が導入されてから実務上の取扱いの疑問点や課題を国税庁が抽出し、より柔軟で弾力的な対応が認められています。今回は、『制度開始後に公表された柔軟な取り扱い』と『インボイス制度に関して問い合わせが多い質問』についてご紹介いたします。
■インボイス制度の概要
消費税の納税額は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を差し引いて(仕入税額控除)計算します。
買手は、仕入税額控除のために帳簿及び適格請求書(インボイス)の保存が必要になり、売手は適格請求書発行事業者の登録を行ったうえで、インボイスの交付義務を負うことになります。具体的には、適格請求書発行事業者である売手は取引相手から求められたときは、記載事項の要件を満たすインボイスを交付し、その写しを保存しなければなりません。そして、買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として取引相手(売手)である適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
<インボイスの要件とされる記載事項>
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②課税資産の譲渡等を行った年月日
③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
■制度開始後に公表された柔軟な取り扱い
●従業員が経費を立替払いした際のインボイス
従業員が会社経費を立替払いした際に、宛名が従業員名であるインボイスを受領した場合は、記載事項⑥を満たさないことになるため、今まではそのインボイスのみをもって会社は仕入税額控除を行うことができませんでした。しかし、その従業員が自社所属であることが明らかとなる従業員名簿等の保存が行われているときは、そのインボイスと従業員名簿等の保存をもって仕入税額控除を行うことができることになりました。
●複数年をまたぐ取引に係るインボイスの交付
一定期間内に行った課税資産の譲渡等について、まとめてインボイスを作成する場合、記載事項②にはその一定の期間を記載します。ただし、取引の期間が売手の消費税の課税期間をまたぐ場合は、インボイスは課税期間ごとに区分し交付することが原則となります。しかし、毎月の保守契約のように、一定期間継続して同一の課税資産の譲渡等を行う取引については、取引期間中に売手が継続して適格請求書発行事業者である場合に限り、課税期間の範囲を超えるまとめたインボイスの交付を行ってもよいこととされました。
●交付を受けたインボイス等に誤りがあった場合
売手が交付したインボイスの記載事項に誤りがあったときは、原則、買手に修正したインボイスを交付しなければならないこととされており、買手側でインボイスに追記や修正を行うことは認められていません。しかし、買手が誤りを修正した仕入明細書等を作成し、又は受領したインボイスを自ら修正し、売手の確認まで受けた場合は、その仕入明細書等の保存で仕入税額控除の適用を受けることができます。
●金融機関の振込手数料等の保存
金融機関の入出金の手数料等について、仕入税額控除の適用を受けるには、原則、インボイス及び帳簿の保存が必要です。ただし、取引数が多頻度にわたるなど全ての取引に係るインボイスの保存が困難な場合は、①金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等と、②その金融機関における任意の一取引に係る適格請求書を併せて保存することで、仕入税額控除が可能です。また、オンライン上の通帳等の電子データは電帳法上の電子取引にも該当し、その電子データが随時確認可能な状態であるときは、ダウンロードせずとも仕入税額控除の適用を受けられます。電帳法においても、オンライン上で真実性及び検索機能確保要件や保存期間などの要件を満たすことで、ダウンロードせずにオンライン上の通帳等のまま電子保存することができます。
■□■Q&A■□■
Q1. 免税事業者が課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける手続きについて教えてください。
A.免税事業者が登録を受けるためには、原則として「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。ただし、令和5 年10 月1日から令和11 年9 月30 日までの日の属する課税期間中において登録を受ける場合には、適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から15 日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日)を記載することで、その登録希望日から課税事業者となる経過措置が設けられています。そのため、この経過措置の適用を受ける場合には、登録希望日から課税事業者となり、登録を受けるため、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要となります。
Q2.適格請求書発行事業者の登録を取りやめる手続きについて教えてください。
A.適格請求書発行事業者がインボイス番号の取り消したい場合には、下記の手続きが必要となります。
Q3.免税事業者等からの仕入れ等について、仕入税額控除が受けられなくなるのでしょうか。
A.インボイス制度開始から一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。経過措置を適用できる期間等は、次のとおりです。
Q4.取引先に経費を立て替えてもらう場合に必要な対応について教えてください。
A.取引先が自社の経費を立て替え払いしているケースにおいては、経費の支払先である会社から取引先に交付された適格請求書を受領しても自社のインボイスとすることはできませんので、取引先から自社の負担するべき費用であることを示すための『立替精算書』を取引先から受領し、保存する必要があります。
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