企業版ふるさと納税 【用語解説】

「企業版ふるさと納税」は、地方創生応援税制の通称です。「企業版ふるさと納税」は、個人版のふるさと納税と同様、正確には道府県や市町村の自治体に寄附をすることによる寄附金控除の制度を利用した税額軽減制度です。直接の寄附金の支出の他、人材派遣型という方法も認められています。

日本では、世界に先駆けて人口減少問題や超高齢社会問題を抱えています。人口減少により、地方の活力が低下し、将来的に日本全体の競争力が弱まることが懸念されていることから、人口減少を克服し、社会全体の活力を維持する必要が出てきました。そのために、地方創生が課題となり、これを実現するためには、産業界・行政機関・教育機関・金融機関・労働団体・メディアをはじめ、各界各層の参画と協力の下で取組を進めていくことが必要とされるところです。特に、民間企業における産業界の役割は非常に大きいものとされ、民間企業から積極的に寄附を行っていただけるよう、平成28年度税制改正において、地方創生応援税制いわゆる「企業版ふるさと納税」が創設されました。

「企業版ふるさと納税」の特徴は、企業が寄附しやすいよう、寄附金の(全額)損金算入による税額軽減効果に加えて、税額控除制度を設けることにより、法人税等の税額を寄附金額の約9割軽減、逆に言えば寄附金の負担を約1割に抑えることができることです。

また、寄附金額の下限は10万円と低めに設定しており、個人版でいう返礼品といった寄附企業への経済的な見返りは禁止されています。なお、本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外です。

個人版のふるさと納税とは異なり、道府県や市町村と企業が一体となり、地域再生に取り組みます。流れを示すと次の通りです。

①地方公共団体が事業(地方版総合戦略)の企画立案し、企業に寄附の依頼・相談をする。
②企業は、寄附を検討する。
③地方公共団体は、地域再生計画の作成し、国の内閣府に認定申請をする。
④内閣府は、地域再生計画の審査・認定・公表を行い、地方公共団体も公表する。
⑤地方公共団体は、事業の実施・事業費を確定し、企業に寄附の支払いを要請する。
⑥企業は寄附金を支払う。
⑦地方公共団体は寄附金の支払を受け、企業に領収書の交付をする。
⑧企業は、法人税等の確定申告をすることによって、税額軽減の適用を受ける。

執筆者:税理士 森田 純弘


森田純弘税理士事務所所長。昭和62年中央大学商学部卒業。大原簿記学校税理士課法人税法科講師、会計事務所勤務を経て、平成9年森田純弘税理士事務所を開設。元全国青色申告会総連合副会長。主な著書として、「固定資産税の課税の誤りと他方面への影響」(税務研究会)、「誤りやすい地方税の実務Q&A」(税務研究会)などがある。