2020.12.11  ※本原稿は令和2年11月末現在の法律に基づいています。

ふるさと納税の仕組みと手続き(6/7)

〔6〕留意点と最近の動向
(1)退職金とふるさと納税

① 退職金の所得の計算
 退職金は、一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合がありますが、ここでは一時金で受け取るものに限定して説明をします。なお、年金で受け取る場合は通常の確定申告と同様になります。
 退職所得の税額計算を示すと次の通りです。
(退職金収入-退職所得控除)✕ 1/2 ✕所得税率
 退職所得控除は以下のようになっています。

例えば、勤続年数30年の場合、退職所得控除額は
800万円+70万円×10年=1,500万円
となります。
仮に退職一時金が2,000万円だとすると退職所得は
(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円
となります。

② 更に2つの選択
 退職一時金については、更に2つの選択があります。退職金の支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を勤めていた先に提出したかどうかで取扱いが違います。

  • (イ)「退職所得の受給に関する申告書」を提出している
    原則として確定申告が不要です。この場合、源泉徴収だけで所得税及び復興特別所得税の課税関係が終了します。所得税率は通常の〔2〕(1)①と同じですが、他の所得とは分離課税となっています。ただし、所得控除の余剰額がある場合には確定申告をすることもできます。
  • (ロ)「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
    退職金等の支払金額の20.42%の所得税額及び復興特別所得税額が源泉徴収されます。

③ 退職金にふるさと納税の適用は?
 残念ながら退職所得となる退職一時金の場合、住民税の所得割額について、ふるさと納税の適用はありません。これは、退職所得控除の額が大きいことや1/2で計算するなど、税制上の優遇がなされているためです。
 なお、退職年金の場合は、雑所得なので対象となります。

(2)令和2年1月1日からの所得税・住民税

 令和2年1月1日からの所得税(住民税では令和3年度に該当)について給与所得控除・公的年金等控除の控除額や基礎控除の控除額が変更されます。この改正に伴い、ふるさと納税への影響があります。

① 主な改正の概要

  • (イ) 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への移行
     給与所得控除額・公的年金等控除額が各10万円引下げられています。したがって、給与所得や公的年金等の雑所得は10万円増加することになります。
     また、基礎控除額は10万円引き上げられています。
     給与所得と公的年金等の雑所得がある人は、片方の10万円の控除のみが減額されるように調整がされます。結果として、基本的にはプラスマイナスゼロとなり課税所得及び税額には影響がありません。
     ただし、給与所得や公的年金等の雑所得がない人で、不動産所得や事業所得といったその他の所得がある人は、単に10万円分の基礎控除のみが増加しますので、課税所得及び税額は減少することになります。
    • ・給与所得控除・・・10万円の減
    • ・公的年金等控除・・・10万円の減
    • ・基礎控除・・・10万円の増
  • (ロ) 給与所得控除の見直し
     給与所得についての改正を(イ)を含めて示すと次の通りです。
    • ㋑ 給与所得控除額を一律 10万円引下げ。
    • ㋺ 給与所得控除の上限額が適用される給与収入金額を 850万円(控除上限額195万円)に引下げ。
    • ㋩ 給与収入金額850万円超の場合、23歳未満又は特別障害者を扶養する者等については、所得金額調整控除あり。
  • (ハ)公的年金等控除の見直し
     公的年金等の雑所得についての改正を(イ)を含めて示すと次の通りです。
    • ㋑ 公的年金等控除額を一律 10万円引下げ。
    • ㋺ 公的年金等の収入金額が 1,000 万円超の場合、公的年金等控除の上限が設けられた。
      • ・他の所得が1,000万円以下      ・・・195万5,000円
      • ・他の所得が1,000万円超2,000万円以下 ・・・185万5,000円
      • ・他の所得が2,000万円超       ・・・175万5,000円
  • (ニ) 基礎控除の見直し
     基礎控除についての改正を(イ)を含めて示すと次の通りです。
    •  ㋑ 所得税(改正前一律38万円)
       (合計所得金額)
      2,400万円以下        ・・・48万円
      2,400万円超 2,450万円以下 ・・・32万円
      2,450万円超 2,500万円以下 ・・・16万円
      2,500万円超         ・・・0円
    • ㋺ 住民税(改正前一律33万円)
      (合計所得金額)
      2,400万円以下        ・・・43万円
      2,400万円超 2,450万円以下 ・・・29万円
      2,450万円超 2,500万円以下 ・・・15万円
      2,500万円超         ・・・0円

② ふるさと納税への影響
 ➀で取り上げた税制改正では、所得税や住民税が減額になる人、変わらない人、増額になる人が出てきます。ふるさと納税制度は、所得税や住民税の寄附金控除に基礎があります。また、所得税や住民税の税額を控除するという仕組みです。このことを踏まえると、今回の改正で税額が、減額、不変、増額されれば、それに連動して、ふるさと納税の上限も減額、不変、増額することが予想されます。
 そこで、大まかに減額、不変、増額する人を分類すると次のようになります。

  • (イ)減額する人・・・給与所得、公的年金等の雑所得以外の所得のみある人
  • (ロ)変わらない人・・・給与所得、公的年金等の雑所得以外の所得のある人
  • (ハ)増額する人・・・比較的高額収入の人
 ふるさと納税の最適点を求めるには、それぞれご自身の収入予想によって行動する必要があります。今回の改正は、その収入予測に影響を少なからず与えるものと言えるでしょう。

(3)新型コロナウイルスの影響

① 収入が減った場合
 新型コロナウイルスの影響により収入が減り、その結果所得が減少することも考えられます。ふるさと納税による減税をより効率良く受けようとすれば、その年の予想の下に寄附をすることになります。そこで、収入が減る見込みがある場合には、減税効率を考えれば寄附を減らす人も出てくることが考えられます。

② 確定申告と更正の請求
 新型コロナウイルスの影響により例年通りに所得税の確定申告をすることができなかった方も多いと思います。還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
 また、確定申告書を既に提出した方で、ふるさと納税制度のための寄附金控除の記入漏れがあった場合には、寄附金控除を記載した「更正の請求書」を税務署長に提出することによりふるさと納税制度の適用を受けることができます。
 特にワンストップ特例制度を適用する予定だった方が、確定申告書の提出をする場合、確定申告書に「寄附金控除」の記載をしなければふるさと納税制度の適用を受けることができません。もし、確定申告書に「寄附金控除」の記載漏れがあった場合には、「更正の請求書」を利用すれば良いということになります。

③ 純損失の繰越控除・繰戻還付
 新型コロナウイルスの影響により所得金額がマイナス(純損失)となる方も多いと思います。所得がマイナスの場合、純損失の繰越控除や繰戻還付の適用を受けることができます。繰越控除は、翌年以降3年間に損失を繰り越して所得金額から控除することができるという制度です。
 繰戻還付は、前年の所得から損失を控除することによって、前年分の負担した税金の還付を受けるという制度です。
 繰越控除制度や繰戻還付制度は、税金の発生と所得のタイミングがズレることになりますので、ふるさと納税の減税の体感も異なるということになります。

④ 新型コロナウイルスに関わる給付金等(補助金等)の交付を受けた場合
 新型コロナウイルスの影響による景気の落ち込みを抑えるために様々な給付金等や補助金等が国、都道府県、市町村から交付されています。これらの給付金等のうちには、特別定額給付金のように、所得税や住民税が非課税のものもあれば、持続化給付金のように課税対象のものもあります。ですから、課税対象の給付金等を受取った場合には税額も増加となるので、ふるさと納税の限度額も上昇することになります。

《補助金等の取扱い》3パターン

  • (イ) 非課税・・・(例)定額給付金
  • (ロ) 事業所得又は不動産所得・・・(例)持続化給付金
  • (ハ) 一時所得・・・(例)ふるさと納税の特典品
     ※ 一時所得には、50万円の特別控除額があり、更に2分の1した金額が課税の対象となります。また、国庫補助金等の収入金額不算入の特例の適用の対象となり非課税となる可能性もあります。