「年収の壁」はどう変わる?年末調整ポイント解説! 「年収の壁」はどう変わる?年末調整ポイント解説!

近年、パート・アルバイトを中心に注目されている「年収の壁」。
令和7年度の税制改正では、この「壁」に関する制度が見直され、従業員のみなさんの手取り額や会社が行う年末調整の事務にも大きな影響が及ぶと考えられます。
当サイトでは、本改正で見直された年末調整における控除について基本的な解説を行います。さらに、実務上必要になる詳細な情報については無料動画で解説しますので皆さまの実務にお役立てください。

「収入」と「所得」、混同しやすい2つの違い

「収入」と「所得」は、日常会話では同じ意味のように使われがちですが、税務の世界では明確に区別されます。
収入とは、給与であれば、労働の対価として受け取るお金の総額を指します。一方、所得はそこから経費や控除額を差し引いた、所得税の金額の計算の基礎となる金額です。
この違いを正しく理解することで、従業員のみなさんに正しい情報を伝えることができ、実務を円滑に進めることに役立ちます。

「収入(給与)」
⇒給与や賞与などの受け取るお金の総額
「給与所得」
⇒給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いた金額
「課税所得」
⇒すべての所得金額から基礎控除や社会保険料控除等の所得控除を差し引いた金額
「収入」と「所得」、混同しやすい2つの違い

そもそも「年収の壁」とは?改正でどう変わる?

そもそも「年収の壁」とは?改正でどう変わる?

令和7年度税制改正で給与所得控除額と基礎控除額が見直されたことに伴い「年収の壁」が引き上げられました。

確認したい4つのポイント

■主な変更点

①基礎控除の見直し
②給与所得控除の見直し
③特定親族特別控除の創設
④扶養親族等の所得要件の改正

①基礎控除の見直し

合計所得金額に応じた基礎控除額が引き上げられました。
合計所得金額が132万円以下の場合
【改正前】48万円 ⇒ 【改正後】95万円

基礎控除の見直し
合計所得金額 〔給与収入のみの場合
の収入金額〕
基礎控除額
改正前 改正後
令和7・8年分 令和9年分
132万円以下 〔200万円3,999円以下〕 48万円 95万円
(+37万円 ※1)
132万円超336万円以下 〔200万円3,999円超
475万円1,999円以下〕
88万円
(+30万円 ※2)
58万円
336万円超489万円以下 〔475万円1,999円超
665万円5,556円以下〕
68万円
(+10万円 ※3)
489万円超655万円以下 〔665万円5,556円超
850万円以下〕
63万円
(+5万円 ※4)
655万円超2,350万円以下 〔850万円超2,545万円以下〕 58万円

※1~4は改正後の控除額に加算された金額
※2~4は令和7・8年限定の時限措置の加算額

②給与所得控除の見直し

給与所得控除の最低保障額が引き上げられました。
【改正前】55万円 ⇒ 【改正後】65万円
給与の収入金額190万円超の場合は改正前の給与所得控除額に変動ありません。

給与所得控除の見直し
給与の収入金額 給与所得控除額
改正前 改正後
162万5,000円以下 55万円 65万円
162万5,000円超~180万円以下 給与等の収入金額×40%ー10万円
180万円超~190万円以下 給与等の収入金額×30%+8万円
190万円超~360万円以下 給与等の収入金額×30%+8万円  
360万円超~660万円以下 給与等の収入金額×20%+44万円  
660万円超~850万円以下 給与等の収入金額×10%+110万円  
850万円超 195万円  

③特定親族特別控除の創設

「特定親族特別控除」が新たに創設され、居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、特定親族1人につき、その合計所得金額に応じて一定の金額が控除されます。

〔給与収入のみの場合の収入金額〕 特定親族の合計所得金額 特定親族特別控除額
〔123万円超150万円以下〕 58万円超85万円以下 63万円
〔150万円超155万円以下〕 85万円超90万円以下 61万円
〔155万円超160万円以下〕 90万円超95万円以下 51万円
〔160万円超165万円以下〕 95万円超100万円以下 41万円
〔165万円超170万円以下〕 100万円超105万円以下 31万円
〔170万円超175万円以下〕 105万円超110万円以下 21万円
〔175万円超180万円以下〕 110万円超115万円以下 11万円
〔180万円超185万円以下〕 115万円超120万円以下 6万円
〔185万円超188万円以下〕 120万円超123万円以下 3万円

【特定親族とは】
居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人および白色事業専従者を除く)で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人を指します。親族には里子を含みます。

④扶養親族等の所得要件の改正

基礎控除の見直しに伴い、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました。
扶養親族及び同⼀⽣計配偶者の場合 または ひとり親の⽣計を⼀にする⼦の場合
【改正前】所得要件=48万円以下 ⇒ 【改正後】所得要件=58万円以下

扶養親族等の区分 所得要件
(収入が給与のみの場合)
改正前 改正後
扶養親族
同一生計配偶者
ひとり親の生計を一にする子
48万円以下
(103万円以下)
58万円以下
(123万円以下)
配偶者特別控除の対象となる配偶者 48万円超133万円以下
(103万円超201万5,999円以下)
58万円超133万円以下
(123万円超201万5,999円以下)
勤労学生 75万円以下
(130万円以下)
85万円以下
(150万円以下)

令和7年分の年末調整における留意点

従業員への確認事項

新たに扶養控除等の対象となる親族等がいるか。

【該当者がいる場合】
改正に伴い新たに扶養控除等の対象となった親族等がいる場合、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を確認・再提出してもらう。

特定親族に該当する親族を有し、特定親族特別控除の適用を受けるか。

【該当者がいる場合】
特定親族特別控除の適⽤を受ける場合、「給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」(兼用様式)を提出してもらう。

「令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受ける際に記載が正しく行われているか。

【従業員への注意喚起】

  • 令和7年分は「控除対象扶養親族」の記載欄が令和8年分では「源泉控除対象親族」に変更
  • 合計所得金額が100万円以下である特定親族は「源泉控除対象親族」とされた
  • 「源泉控除対象親族」が「特定親族」に該当する場合のチェック欄が追加

令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書

申告書

【変更箇所】
①「基礎控除申告書」の「控除額の計算」表が改正後の金額に変更
②「配偶者控除等申告書」の「判定」表が改正後の金額に変更
③「特定親族特別控除申告書」欄の追加

実務における対応について

税務研究会発行の「週刊税務通信」では、実務で役立つ年末調整のポイントや留意点などをわかりやすく解説しています。
下記を含む年末調整に関する記事をお読みになりたい方は、「税務通信データベース」を資料請求ください。

国税庁 令和7年分年末調整のしかたを公表 (週刊税務通信3866号 2025年09月08日)

この記事でわかること(ポイント)

<令和7年分の年末調整の主な改正点>

所得税の基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の新設など、年末調整に関する最新の法改正内容がわかります。

<扶養親族等の所得要件の見直しと実務対応>

扶養控除等の対象となる親族の所得要件が変更されるため、従業員からの申告書の取得や確認が必要な点が整理されています。

<令和8年分以降の源泉徴収事務の変更点>

特定親族特別控除の創設に伴い、源泉徴収事務や申告書の記載内容がどのように変わるかがわかります。

特定親族特別控除 夫婦両方で控除可能なケースも (週刊税務通信3862号 2025年08月04日)

この記事でわかること(ポイント)

<特定親族特別控除の基本ルール>

特定親族(19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超123万円以下)に対して、最大63万円の控除が受けられる制度の概要がわかります。

<夫婦共働き世帯での控除の原則>

原則として、特定親族特別控除は夫婦のいずれか一方のみが適用できることが説明されています。

<例外的に夫婦両方で控除が可能なケース>

夫または妻が年の途中で出国または死亡した場合、控除の判定日が異なるため、夫婦両方が控除を受けられる可能性があることが解説されています。

<出国・死亡のタイミングによる対応の違い>

出国等が令和7年12月1日以前か以後かによって、控除の適用方法(更正の請求が必要か、準確定申告で対応可能か)が異なることが整理されています。

<実務対応の流れと注意点>

控除を受けるための申告書提出のタイミングや、国税庁のQ&Aに基づいた具体的な対応方法が紹介されています。

「税務通信データベース」では、「週刊税務通信」掲載記事の全文をお読みいただけます。
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