2018/02/12 9:00
個別対応方式における用途区分とは、どのような区分なのでしょうか。
個別対応方式では、納付する消費税額を計算する際に、仕入れに対する消費税を次の3つに区分して、売上げに対する消費税から控除する金額を計算します。
<個別対応方式の用途区分> 1.課税売上対応(課税売上げにのみ対応する課税仕入れ) 2.非課税売上対応(非課税売上げにのみ対応する課税仕入れ) 3.共通対応(課税売上げと非課税売上げに共通する課税仕入れ) |
個別対応方式では、上記1に係る消費税額の全額と、上記3に係る消費税額に課税売上割合を乗じた金額が控除の対象になります(個別対応方式の計算方法について、詳細はこちらを参照してください。)。
上記1から3の区分は、課税仕入れを行った日において「その課税仕入れが、どの売上げ(課税売上げ・非課税売上げ・それ以外)のために行ったものなのか?」という用途により判定をします。
1.課税売上対応(課税売上げにのみ対応する課税仕入れ)
課税売上げにのみ対応する課税仕入れとは、課税売上げをあげるためにのみ必要な課税仕入れをいいます。例えばパソコンの販売会社の場合、次のようなものが課税売上対応になります。
(例) パソコン販売会社における課税売上対応 ① 販売用のパソコンの仕入代金 ② 販売用のパソコンを製造するためにのみ消費(使用)される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品などの購入代金 ③ 販売用のパソコンに係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料、支払加工賃など |
これらの支払いはいずれも、消費税が課税される課税仕入取引です。これらの課税仕入れが「どの売上げ(=用途)のために支出されたのか」といえば、すべてパソコンを販売するためです。パソコンの販売は消費税が課税される課税売上取引です。したがって、これらの課税仕入れは、課税売上げにのみ対応する課税仕入れ(課税売上対応)といえます。
2.非課税売上対応(非課税売上げにのみ対応する課税仕入れ)
非課税売上げにのみ対応する課税仕入れとは、非課税売上げをあげるためにのみ必要な課税仕入れをいいます。
例えば、株式を売却するために証券会社に売買手数料を支払ったとします。証券会社に支払う売買手数料は消費税が課税される課税仕入取引です。この課税仕入れが「どの売上げ(=用途)のために支出されたのか」といえば、株式を売却するためです。株式などの有価証券の譲渡は、消費税が課税されない非課税売上取引です。したがって、この課税仕入れは、非課税売上げにのみ対応する課税仕入れ(非課税売上対応)といえます。
3.共通対応(課税売上げと非課税売上げに共通する課税仕入れ)
課税売上げと非課税売上げに共通する課税仕入れとは、上記1と2のいずれにも区分されなかったものをいいます。
個別対応方式の用途区分は、課税仕入れを行った日の状況で判定します。
株式を購入するために証券会社に支払った売買手数料は、売買手数料を支払った日において、その購入した株式のその後の用途によって区分します。
購入後の用途 | 個別対応方式の用途区分 | |
株式を購入するための売買手数料 (課税仕入取引) |
財テク目的 (売却して利益を得ることが目的) |
非課税売上対応 |
保有目的 (企業支配などの株式保有が目的) |
共通対応(※) |
(※)保有目的での株式の購入(取得)は、課税売上げをあげるためのものでも、非課税売上げをあげるためのものでもありません。このように、上記1(課税売上対応)と2(非課税売上対応)のいずれにも区分できないものは、共通対応として区分することになります。
本誌関連ページ
税務の動向 「仕入税額控除・個別対応方式 保有目的株式購入手数料の区分を再確認」
No.3494(平成30年2月12日号)7頁