所得税に係る令和8年度税制改正のポイント
[アクタス税理士法人 News Letter2026.7]


所得税に係る令和8年度税制改正のポイント[News Letter

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所得税関連の令和8年度税制改正の内容としては、所得税の基礎控除や給与所得控除の見直しが注目されていますが、個人の資産形成や一定の高所得者の税負担に関わる制度についても重要な改正が行われております。国税庁から、税制改正に関連する通達等も公表され、改正内容を実務的な視点から確認できるようになってきました。そこで今回は、所得税に係る令和8年度税制改正のポイントについて解説していきます。

 

■所得税の基礎控除と給与所得控除の見直し

現行制度の概要

所得税の基礎控除は、合計所得金額に応じて所得から差し引くことができる控除で、改正前は原則として58万円でした。給与所得控除は、会社員などの給与収入から一定額を必要経費相当額として控除して所得を計算できる制度で、改正前の最低保障額65万円となっていました。

改正の内容

所得税の基礎控除の本則部分が58万円から62万円に引き上げられます。さらに、令和8年分および令和9年分については、中低所得者を対象とした特例が拡充され、基礎控除額は所得に応じて最大104万円となります。給与所得控除については、最低保障額69万円に引き上げられるとともに、令和8年および令和9年分は5万円の特例加算が行われ、最低保障額74万円となります。

改正のポイント

今回の基礎控除と給与所得控除の引上げにより、給与所得者の所得税が課税され始める給与収入の目安は、最大で178万円まで引き上げられます。また今回の改正は令和8年分の所得税から適用され、令和8年12月に行う年末調整から反映されます。

 

未成年者へのNISA制度拡大(こどもNISAの創設)

現行制度の概要

NISA制度は2014年の制度開始以後、適宜制度の見直し(一般NISA、ジュニアNISAなど)が行われ、2024年1月より現行の新NISAが利用可能となっています。この新NISAでは年間投資枠非課税限度額大幅に拡充され、非課税保有期間が無期限になるなどの改正内容でしたが、ジュニアNISAは2023年末で廃止となり、現行のNISA制度では18歳未満のNISA口座を開設することができませんでした。

改正の内容令和9年以後の各年より適用)

次世代の長期的な資産形成を支援し、教育資金や住宅取得資金等の将来資金の準備を促進する観点から、「つみたて投資枠」に限り、未成年者のNISA口座(以下こどもNISA)が開設可能となりました。

改正のポイント

こどもNISAでは、現行の新NISAと比べ利用範囲が一定程度制限されています。年間投資枠が60万円非課税保有限度額が600万円で、投資対象も一定の投資信託に限られます。また、投資で得た金銭の引出しにおいても、12歳未満は原則引出し不可(災害時などの例外を除く)、12歳以降では、学費等での利用に限り、引出しに関する子供の同意書や金融機関への届出書を準備の上で引出しが可能となります。 なお、こどもNISAの投資資金を親や祖父母が用意する場合、親や祖父母より未成年者へ贈与しているとみなされる場合があります。こどもNISA口座の運用資金の60万円とは別に贈与しているものがあるときは、贈与税が課税される可能性 (暦年課税の非課税限度額は110万円) に注意が必要です。

出典:2025年12月金融庁「令和8(2026)年度税制改正について-税制改正大綱における金融庁関係の主要項目

 

ミニマムタックス制度の課税強化

現行制度の概要

ミニマムタックス制度(きわめて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)は、所得税が累進税率(最大45%)であるにもかかわらず、高額所得者のうち株式譲渡益や配当所得など、申告分離課税の適用を受ける所得の割合が高い場合に税負担が軽減されている方に対して、課税の公平性の観点から、通常の所得税額が一定水準を下回る場合に追加負担を求める制度になります。


基準所得金額:総所得金額及び分離課税の各所得の合計額
特別控除額 :3.3億円(改正あり) 最低税率:22.5%(改正あり)

改正の内容令和9年以後の所得税より適用)されます。

特別控除額「3.3億円→1.65億円」へ、最低税率「22.5%→30%」へ改正されたことにより、対象となる高額所得者の範囲が拡大され、最低税率の引き上げが行われます。

改正のポイント

株式や不動産の売却により一時的に多額の所得が生じる年度や、金融所得の割合が高い方は、追加の所得税負担が生じる可能性があることから、申告不要とした上場株式等の所得も含め、事前に試算し影響を確認することがポイントとなります。 また今回の改正によって、おおよそ6億円の所得となる場合に、ミニマムタックス課税による追加納税が発生する可能性があります。申告実績に基づく各所得金額と実質負担率(所得に対する税額の割合)によると、改正前は約30億円の所得発生時に影響がでるケースが多かったですが、今回の改正では約6億円の所得発生時に影響がでる試算がされており、高所得者の内、より多くの方で改正前よりも追加税額の発生が想定されることとなります。

 

ふるさと納税の控除限度額の見直し

現行制度の概要

ふるさと納税とは、自治体へ寄附を行うことで、自己負担額2,000円を除いた寄付額について所得税・住民税の控除を受けられる制度です。その内、住民税(特例控除)の限度額は、「住民税所得割額の2割」として設定されていますが、所得額によって控除限度額が変動する仕組みであり、高所得者より多くの控除を受けることができる制度であったため本改正で定額上限が設定されました。

改正後の限度額の算定方法(住民税からの控除(特例分)) 令和10年分以後個人住民税より適用)

改正後は、現行の「(住民税所得割額)×20%」又は「道府県民税77万2千円市町村民税115万8千円(指定都市の場合はそれぞれ38万6千円・154万4千円)の計193万円」のいずれか低い金額が、控除限度額とされることになります。

改正のポイント

改正後は、所得金額に関わらず、193万円の限度額が設けられることになるため、改正前に多額のふるさと納税を行っていた方は控除を受けられない部分が発生してしまう可能性があります。また株式や不動産の売却で所得が一時的に増えた年も、寄附額を増やすと控除しきれない可能性があります。 また、今回の改正で自治体がふるさと納税で得た寄付額のうち、自治体運営の財源とすべき割合が段階的に引き上げられることになります。よって、返礼品の内容も縮小されることが想定されます。自治体によっては同額の寄付でも過去の返礼品内容と変わるケースも出てくるため、例年同じ自治体に寄付をされている方は、一度内容の再確認をされる必要があります。

 

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