年金の受給資格期間25年から10年へ

今年も残すところあとわずかとなりました。年末年始の緊急時の連絡体制の確認や、年始のご挨拶の準備など、事務担当者の方は今のうちに計画しておきましょう。さて、今回は先日成立した年金法の改正について確認しておきましょう。

改正法成立

img_onepoint_0050_01.jpg平成28年11月16日の参議院本会議において「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律(いわゆる年金機能強化法)」が全会一致で可決、成立しました。

今回のポイントは、老齢年金が受け取れる受給資格期間(注)が現行の25年から10年に短縮されたことです。この改正は来年8月に施行され、10月から約64万人が新たに老齢年金を受けられるようになる見通しです。本来、この改正は消費税率の10%引き上げに合わせて実施される予定でしたが、おおもとの消費税引き上げが延期された為、延び延びになっていました。

(注)受給資格期間とは「保険料納付済期間」だけではなく、「保険料免除期間」と「合算対象期間(カラ期間)」も含まれます。

他国との比較

外国で老齢年金を受け取れるようになる受給資格期間は、アメリカで10年、ドイツでは5年、となっています。今回の我が国の10年への改正は上記の他国並みになったともいえます。

ただし、日本の年金制度では無業者も含めて強制適用の対象であり(アメリカやドイツ等では無業者は対象外)、所得の少ない人は保険料免除制度を設けていますので同列に比較するのは正しくありません。

会社への影響

今回の改正は会社にとってはあまり影響がないと感じる方もいるかもしれませんが、中高年の中途採用者で国民年金の未納期間が多かった方などについては無関係ではありません。

入社前に未納期間が多いと入社してから年金保険料を納付しても25年を満たせないことがあり、社会保険の加入を強く嫌がって会社担当者を困らせるケースが見受けられたからです。今後は10年以上の納付で支給されるのですから「私はもらえないから(社会保険に入りたくない)」ということは言えなくなるでしょう。

外国人への影響

img_onepoint_0050_02.jpg日本の法律は属地主義ですので、外国人の方でも日本にいる限りは日本の法律に従ってもらわなければなりません。これは社会保険についても同じなのですが、外国人の方については「私はいずれ母国に帰るので、日本で社会保険に入るのは掛け捨てになる。だから入りたくない」という方も少なくありませんでした。

もちろん日本に25年いなかった場合でも一定要件を満たせば「脱退一時金」という制度で一部は返金されますし、社会保険の恩恵は老齢年金だけではないので社会保険の加入はけっして無駄ではないのですが、現実にはなかなか受け入れられないことも多い状況でした。

しかし、今後はこのような外国人の方の社会保険の加入に対する意識も変化してくるでしょう。

今後の考え方

受給資格期間の短縮によって老齢年金を受給できる方は多くなるわけですが、10年を満たせばそれでいいというわけではありません。

本来、国民年金は20歳から60歳までの40年、厚生年金なら入社から定年まで、そして、定年後も仕事を続ければ70歳に達するまでの働いている期間納めるわけですから、10年だけではもらえる額が大幅に少なくなってしまいます。

そこで、もし入社する前に国民年金の未納期間がある従業員については、過去5年分まで遡って保険料を納めることができる「後納制度」という制度を案内するといいでしょう。遡って保険料を納めることによって、今後もらうことのできる年金額を増やすことができるからです。

この制度は平成27年10月から平成30年9月までの3年間の期間限定ですので、早めにアナウンスしておきましょう。

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