《人事制度構築》その3 「評価シートの活用」について

人材不足にならない会社経営 ~「人が辞めない会社作り」について~

2021年3月1日

 

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300社以上の経営を支援してきた経営改善の専門家が、「人が辞めない会社作り」についての取組みをご紹介します。

 

「評価シートの活用」について


シリーズで「会社をやめる理由」対策をご紹介しています。これまで、対策の二つ目である「人事制度構築」の際に重要となる業績、能力、意欲の3つの評価軸と、その評価軸を元にした、「評価シート」の組み立て方についてお伝えしました。
今回は、「評価シート」の活用方法についてお話ししたいと思います。

 

 

1.「評価シート」の活用方法

公正な評価を行うためには、「評価シート」を導入するだけでなく、運用方法にも注意を払う必要があります。一般的には【図-1】のような流れで行います。

【図表1】人事評価運用の流れ

 

「評価シート」を元にして個人目標やアクションプランを設定することにより、会社の理念や方向性を全社共通認識とすることができます。また、ここで重要となるのは、上司と部下とのコミュニケーションの機会を複数回設け、双方が共通認識を持って目標達成に挑むということです。詳しくは後述しますが、コミュニケーション不足による認識の相違によって、部下のモチベーション低下の原因になる場合が多くあります。

 

 

2.「評価シート」活用のメリット

「評価シート」を活用した際のメリットの一例をご紹介します。

 

① 共通認識を持つことによる社員の意識統一

前述の通り、「評価シート」の目標を元にして個人目標やアクションプランを設定することで、会社の理念や経営方針に基づいた個人目標となります。それにより、全社員の向かうべき方向性が統一され、共通認識が生まれます。共通認識が生まれると、業務の判断基準においても迷うことがなくなり、社員同士のコミュニケーションも円滑に進めることができます。

 

②コミュニケーションの活性化

人事評価を運用するにあたり、上司と社員とが共通認識を持つ必要があります。その中で必然的に、上司と部下がコミュニケーションを取る機会が増え、双方向で良い関係性が生まれます。上司との関係性が良くなることで、話しやすい雰囲気を醸成し、チーム全体のコミュニケーション活性化に繋がります。

 

③人材育成

アクションプランを作成することにより、社員一人一人のやるべきことが明確になり、日々の業務の中でも目的意識を持って行動できるようになります。さらに、アクションプランと実際の進捗度合との乖離を認識することで、すぐに軌道修正することが可能となり、誤った方向に進んでしまうという状況を回避することができます。

また、アクションプランの進捗度合が「速いのか」「遅いのか」を確認することで、対象社員の強みと弱みを把握することができます。強みを強化し、弱みを克服できるような教育計画や研修プログラムを実行することで、社員の成長を促すことが可能となります。【図-2】であるように、PDCAサイクルをまわすことで、人材の育成を進めます。

【図-2】人材育成のPDCAサイクル

 

 

④ 社員のモチベーションアップ

「自分が向かうべき方向性」や「明確な達成目標」が社員に浸透すると、それらを達成するために、日々の業務に対する意識も向上していきます。評価過程において、自身の成長を実感でき、その成長を評価されることで、社員のモチベーションアップに繋がります。

また、「② コミュニケーションの活性化」で述べた通り、社員同士のコミュニケーションが増えるため、より良い組織文化が生まれ、離職率の低下や、社員の定着に繋げることができます。

 

⑤ 生産性、業績の向上

【図-3】のように、適切に人事制度を運用することで、人材の成長が期待できます。人材を育成し、能力を高めることで、生産性・業績の向上に繋がり、さらには会社の成長に繋がります。

【図-3】人事制度導入の効果

 

 

3.「評価シート」活用の注意点

「評価シート」を活用する際の注意点をご紹介します。

 

① 評価内容や運用方法によっては社員のモチベーションが落ちる可能性がある

下記のケースの場合、社員のモチベーションが低下してしまう可能性が高く、注意が必要です。

 

<ケース1>目標作成段階で、「評価シート」の目標を元に個人目標を作成しても、目標が高すぎるなど、社員本人が納得していないまま進めてしまっている。
<ケース2>評価段階で、自己評価と上司の評価が大きく異なってしまっている。(特に上司の評価が低い)

<ケース1><ケース2>どちらのケースも、上司と社員のコミュニケーションが不足していることが原因で起こっていると考えられます。上司と社員が同じ目的意識を持ち、基準の妥当性と評価の透明性を確保することが重要です。

 

<ケース3>自分と他人を比較して、自分の評価の方が低い。
<ケース4>評価は高いのに、給与や賞与に反映されない。

<ケース3><ケース4>どちらのケースも明確な基準が設けられていないことが原因で起こっていると考えられます。自分が何を達成したらどう評価に繋がるのか、また、その評価を何にどう反映させるのかを明確にした上で、基準を公表することが重要です。

 

② 短期業績志向に陥ってしまう可能性がある

評価項目に「今期の個人(またはチーム・部署)の売上目標」など、短期的な数値目標を設ける場合、長期的な目線が失われてしまう可能性があります。会社を安定的に成長させるためには、社員一人一人が長期的な目線を持つことが不可欠です。そのため、目標を作成する際は「短期的な目標」と「長期的な目標」のどちらも入れておく必要があります。

長期的な目標を設ける場合は、評価も長期的な視点で行う必要があり、社員のモチベーションマネジメントと併せて検討する必要があります。

 

③ チャレンジ精神の醸成が難しい

「評価シート」を用いて評価することで、『目標にないことはやっても評価されない』と考えてしまうと、新しい事業へのチャレンジなどを進めるのが困難になります。そういったことを防ぐためにも、「意欲」を評価できるような目標を盛り込む必要があります。「人事構築制度その1」でもお伝えしている通り、評価軸は「業績」、「能力」、「意欲」の3つを組み合わせて評価基準を設けることで、公平な人事評価制度を構築することができます。

 

 

4.人材不足にならないために

これまで、3回にわたって人事制度構築についてお伝えしてきました。人事制度を構築し、適切に運用することで、大事な会社の資産である「ヒト」の流出を防ぐことができます。お伝えしてきた内容を参考にしていただき、人が辞めない組織を作っていきましょう。

 

 

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中小企業診断士前田節(まえだ とも)

株式会社ジャストコンサルティング 代表取締役。
中小企業支援をメインとした経営コンサルティング会社「株式会社ジャストコンサルティング」を2014年設立。コンサルタント12名を率い、専門性とチームワークを活かした実行型支援を行っている。

» 会社URL   https://www.just-c.net
» Facebook https://www.facebook.com/JustConsulting.buntbrain

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