個人事業者に屋号等の公表をお願いすべきか|税務通信 READER’S CLUB

2022年10月18日

 

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解説 読者限定特別企画 LIVE座談会 財務省担当官に聞く! インボイス制度の疑問点<第2回>
Q1

 個人事業者が請求書等に氏名(個人名)ではなく屋号を記載している場合、適格請求書発行事業者公表サイト(以下「公表サイト」)で登録番号を検索しても表示されるのは氏名(個人名)であるため、登録の有無が明確にならないことがあります。このような場合には、個人事業者に屋号や住所の公表をお願いしたほうがいいのでしょうか。他によい確認方法があれば教えてください。

A1

 私見ですが、登録の有無を確認するためだけに、個人事業者に屋号や住所の公表までお願いをする必要はないと思います。他の方法で登録の確認を取れるよう検討してみてはいかがでしょうか。

1. 公表サイトでの個人事業者の公表事項

適格請求書発行事業者が個人事業者である場合には、原則として、登録番号と氏名(個人名)、登録年月日のみが公表されることは、「インボイス事業者公表サイトで屋号等を公表するメリット」で解説したとおりです。

住所(正確には主たる事務所の所在地)や屋号などは、本人が追加で公表することを希望し、その旨を記載した申出書を税務署に提出した場合にのみ公表されるもので、本人に無断で公表されることはありません。

 

2.屋号によるインボイスの発行

個人事業者が交付するインボイスに記載する名称は、電話番号などを記載することで適格請求書発行事業者を特定することができれば、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えない、としています(インボイスQ&A問44)。これに対して公表サイトは、その個人事業者が「事務所の所在地」や「屋号」を追加公表していない場合には、登録番号を検索して表示されるのは「氏名」であるため、インボイスに「屋号」のみが記載されているときは、その「氏名」と「屋号」が同一人物のものか確認できないという懸念があります。

しかし、この公表サイトで確認するのは、受領した請求書等に記載されている番号が「適格請求書発行事業者として登録されている有効な番号かどうか」です(詳細は「インボイス事業者公表サイトで屋号等を公表するメリット」を参照してください。)。したがって、「屋号」と「氏名」との確認までは求めていないものと考えます。

それでは、登録をしていない事業者が適格請求書発行事業者になりすまして偽物の番号を記載するのではないか、と心配になります。しかし、このようないわゆる「偽造インボイス」を交付した事業者に対しては、罰則規定が設けられています。具体的には、適格請求書発行事業者の登録をしていない事業者が、登録番号等を記載した「適格請求書類似書類(受け取った側にインボイスと誤認されるおそれのある表示をした書類)」を交付した場合には、「1年以下の拘禁刑(懲役等)または50万円以下の罰金に処する。」とするものです(新消法57の5、65①四)。

このような罰則が適用される大きなリスクを冒してまで、登録をしていないにも関わらず偽物の番号を記載する事業者がどの程度いるのかは不明ですが、この前提を理解した上で、請求書等に屋号のみが記載されている場合の確認方法を検討する必要があります。

3.請求書等に氏名が記載されていない場合の確認方法

請求書等に屋号のみが記載されている個人事業者に対して、屋号や主たる事務所の所在地の追加公表を求めなくても、例えば次のような方法で確認を行うことが可能です。

① 取引相手の個人事業者に振込で報酬を支払っている場合

銀行の振込先の口座名義が氏名(個人名)である場合には、この「口座名義の氏名」と「公表サイトで表示される氏名」とで確認をすることができます。ただし、この口座名義が屋号のみである場合には、この方法では確認をすることができないため、他の方法を検討する必要があります。

② マイナンバーの提供を受けている場合

原稿料などの報酬を支払う際には、マイナンバーの提供を受けることがあります。マイナンバーは提供を受ける際に本人確認書類の確認も併せて行います。この「本人確認書類に記載されている氏名」と「公表サイトで表示される氏名」とで確認をすることができます。

③ 「登録通知書」で確認する方法

適格請求書発行事業者の登録を受けると、登録を受けた事業者本人に対して「登録通知書」が交付されます。他の方法で確認ができない場合には、この登録通知書の提示をお願いするといった方法も考えられます。

ただし、先にも述べた通り、公表サイトは「受領した請求書等に記載されている番号が適格請求書発行事業者として登録されている有効な番号かどうかを確認するためのもの」であり、「偽造インボイス」を交付した事業者には罰則規定が設けられているため、個人的にはここまでお願いをする必要はないと考えています。

インボイス制度のスタートまであと1年です。

継続的に取引をしている事業者間での登録の確認など、導入に向けての準備を進めていきましょう!

 

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