生前に長男に預けていた現金の相続財産の帰属

2026年4月30日
生前に長男に預けていた現金の相続財産の帰属
[質問]
(1)被相続人甲の情報は以下のとおりである。
性別 男性
年齢 80才
死因 病死
相続開始日 令和6年12月25日
(2)被相続人の相続人の情報は以下のとおりである。
配偶者 A 78才
長男 B 50才
次男 C 48才
基礎控除額 4,800万円
(3)被相続人の遺産の概要は以下のとおりである。
①不動産 相続税評価額3,000万円
②金融資産 相続開始日時点の残高5,000万円
(質問事項)
令和6年中に甲は長男Bに「生前に預金をお前に預ける」と告げて、甲名義の預金口座から4,000万円の出金を行い、現金で長男Bに手渡しました。
長男Bは4,000万円の内、300万円で自動車を購入及び100万円で国債を購入して自らの名義にしました。
残額の3,600万円はB名義の預金口座に入金して一切費消せずに保管しています。
この場合、自動車購入資金300万円と国債購入資金100万円の合計400万円は、長男Bが費消したことにより甲から長男Bへの生前贈与、残額の3,600万円は甲の名義預金として相続税の対象とすることに課税上問題はありませんか。
[回答]
1 相続税の課税対象
相続税の課税要件である「相続又は遺贈により取得した財産の価額」とは、相続の開始の時点において当該相続に係る被相続人に帰属していた財産の価額のことをいい、当該財産には、物権、債権又は無体財産権等の財産の種類を問わず、その相続の開始の時点において経済的に客観的交換価値のある、あらゆる財産のことをいうものと解されています。
2 相続における不当利得返還請求等
被相続人から預かった現金を同人の同意を得ることなく、相続人等が無断で費消したことが明らかである場合、この費消した金銭に相当する金額については、被相続人は不当利得の返還請求権(債権)を取得して死亡したことになりますので、当該返還請求権相当額の債権は被相続人の死亡の時点における財産に該当することになります。
この場合、他の相続人は不当利得返還請求又は不法行為に基づく損害賠償請求という手続きで使い込まれた遺産を取り戻すことになります。具体的な手続きとしては、相続人間で遺産分割協議も含めた話し合いにより解決を図りますが、解決の見通しが立たない場合は、地方裁判所に訴訟を起こすことになります。
なお、不当利得返還請求で取り戻せる額は、請求する相続人の法定相続分までとなっています。また、その請求する権利を行使できるとき(遺産の使い込みがあったとき)から10年で時効になります。
3 照会事例における相続財産
ご照会の事例では、税理士としては、相続人から金銭授受の際の状況やその費消の経緯等について聴取等を行って、その金銭が贈与なのか預け金なのかについて事実認定を行なう必要があります。
この際、令和6年中に長男B名義で購入した自動車(300万円)及び国債(100万円)が被相続人甲の同意を得て行われたものであれば、その購入資金は甲から贈与を受けたことになりますので、贈与税の期限後申告を行なうとともに、相続税法第19条《相続開始前七年以内に贈与があった場合の相続税額》の規定に基づいて相続税の課税価格及び相続税額を計算することになります。他方、被相続人甲の同意を得て行われていないのであれば、その購入資金の金額は「不当利得の返還請求権」(債権)として相続財産に計上することになると考えます。
また、長男B名義の預金(3,600万円)については、贈与ではなく被相続人甲が長男Bに預けていた金銭であると認定できるのであれば、Bに対する「預け金」(債権)として相続財産に計上することになります。この場合、この預金は甲が作成・管理していたものではありませんが、甲に帰属する「名義預金」として相続財産に計上しても差し支えないと考えます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
















