損益計算書から読み取る儲けの仕組みの違い
~Googleを運営するAlphabetと、Facebookを運営するMeta Platformsの比較~

2022年8月10日

 

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0.はじめに

決算書分析の基本は「比較」です。ある数字を見る際に、比較対象がなければ、その数字がいいのか・悪いのか、そもそも判断ができませんよね。だからこそ、決算書分析においては必ず2つ以上の数字を使って比較する必要があります。

実際どのように比較していくのかという話になるわけですが、この比較分析には大きく2つの方法があります。1つの企業を時系列で見る「時系列分析」と、他の競合とを比較して見る「競合比較分析」です。すぐれた分析には必ずといっていいほど含まれるこの2種類を、この記事を通じて紹介します。

今回は、世界を代表するIT企業である、AlphabetとMetaを比較しながら、両者のビジネスの共通点や相違点についてを理解し、決算数値にどのような違いが現れるのかを順を追って解説していきます。

 

 

 

1.テーマ企業の紹介

今回の登場企業は、Googleを運営するAlphabetと、Facebookを運営するMeta Platformsの比較です。

 

Alphabetの事業内容

Googleを運営するAlphabetの事業内容を見ていきましょう。

Alphabetは、Google広告をはじめとした広告ビジネスや、GoogleCloudを展開するCloudビジネス、Google Pixel、Google Home等のデバイス開発など様々な事業を展開しています。

2021年度のAlphabetの収益は257,637百万ドルであり、日本円で換算すると約30兆円近い金額となります。世界トップレベルの収益を生み出すAlphabetの売上の大部分を占めているのが広告事業です。AlphabetはGoogle検索やYouTube広告、Googleネットワークと言った様々な種類の広告商品を有しており、広告収入だけで売上高の7割以上を生み出しています。

出典:Alphabet Form 10-K 2021

 

Meta Platformsの事業内容

次はFacebookを運営するMeta Plattforms(以下Meta)の事業内容を見ていきましょう。

MetaはFacebookやInstagram等のSNSを展開しています。FacebookのDAU(月間利用者数)は2021年12月の時点で約19万人にも及びます。上場以来、Metaの運営するSNSの利用者数は右肩上がりで増加していましたが、直近の決算でついに頭打ちとなり、減少傾向が確認されました。

出典:Meta Form 10-K 2021

Metaの売上高は2021年12月の決算で117,929百万ドルであり、日本円に換算すると10兆円以上の規模となります。Alphabetに及ばずとも、世界でもトップレベルの売上高を生み出しています。

売上高の内訳はAlphabetと同様に広告収入が大部分を占めています。Metaの広告ビジネスは、FacebookやInstagramのような自社で運営するSNSプラットフォーム上に人を集め、集めた人に対して広告を出稿したと考える企業から収益を得ています。

 

両者の共通点の整理

両者の事業内容や売上高を確認すると、多くの共通点に気付きます。

両者共に、10兆円を超える売上高を生み出しているという共通点、さらに、その売上の大部分を広告収益という収入で生み出しているという共通点が読み取れます。

出典:Alphabet、Meta共に Form 10-K 2021

 

 

 

2.数値から読み取る相違点

ここからはAlphabetとMetaの損益計算書の内訳についてを確認し、両者の相違点についてを把握していきます。

損益計算書は企業の成績表です。損益計算書を確認することで、企業がどのような方法で収益を生み出しているかを知ることが可能です。

出典:https://navi.funda.jp/article/profit-and-loss-statement

 

原価率から見る両者の相違点

両者の損益計算書からコスト構造を確認すると、まずは売上高原価率に大きな違いがあることに気付きます。両者共に広告ビジネスを展開しているにも関わらず、2倍近く原価率に差が生まれる原因は一体何なのでしょうか?それぞれの原価の内訳を確認していきます。

出典:Alphabet、Meta共に Form 10-K 2021

 

Alphabetの広告ビジネス

Googleの原価の内訳を見ると、Googleの利用者を増やすための第三者のブラウザ プロバイダーやGoogleネットワークのパートナー企業への支払いコストが含まれており、YouTuberやブロガーへの閲覧回数に応じた報酬も売上原価に含まれていることがわかります。そのため、Googleの広告事業は比較的売上原価が大きくなりやすい傾向にあります。

 

Metaの広告ビジネス

一方で、Metaは自社が作ったプラットフォーム(FacebookやInstagram)上に広告を出稿しているため、特にアフィリエイターなどへの支払いというものが発生しません。従って、 売上原価の比率はGoogleに比べて小さくなっています。

 

 

 

3.まとめ

このように、同じ広告ビジネスを行っているにもかかわらず、原価率で25%近く差が出るのはなぜかというと、蓋を開けてみたら、「実はビジネスモデルが違う」ということがわかります。決算書を読むことで、日常生活では気付けない企業の儲けの仕組みを知る切っ掛けにもなると同時に、ビジネスの面白さを知ることができます。

この記事を読んで下さった方は、ぜひ興味のある企業の決算書を確認してみてください。

 

 

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大手町のランダムウォーカー

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公認会計士試験合格後,PwCあらた有限責任監査法人で財務アドバイザリー業務に従事。独立後,会計及びマーケティングに関するコンサルティング業務をメインに行うと同時に,学習アプリ「Funda」を運営。
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著書『世界一楽しい決算書の読み方』(KADOKAWA)、続編『世界一楽しい決算書の読み方〔実践編〕』(KADOKAWA)は、シリーズ累計30万部突破。

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