【社会保険料負担支援制度が2026年10月開始!】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第43回

2026年7月23日
ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー
○●——————————
このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。
先般、日本年金機構より企業宛に「短時間労働者の社会保険料を支援する制度開始」の案内が出されました。社会保険の適用拡大に伴い新たに対象となる短時間労働者については、「年収の壁」の問題もあり、離職や就業調整が進むのではないかと懸念する声もあります。その懸念を払拭するため策の1つが今回取り上げる保険料調整制度です。10月の制度開始前に、対象となる範囲や仕組み、手続きなどをしっかり確認しておきましょう。
——————————●○
現状の社会保険加入対象者
現在、従業員数51人以上の会社については、主に週20時間以上勤務するパートタイム従業員について社会保険の加入対象とする適用拡大措置が進められています。加入対象となった会社は「特定適用事業所」として登録され、条件に合致したパートタイム労働者が入社する都度、社会保険の資格取得手続きを行う必要があります。この適用拡大の流れは下記のように従業員数が少ない事業所でも対象となることが既に決定しています。
| 対象期間 | 2027年10月~ | 2029年10月~ | 2032年10月~ | 2035年10月~ |
| 従業員数 | 36人~50人 | 21人~35人 | 11人から20人 | 10人以下 |
社会保険料支援制度の対象事業所
対象事業所の増加で気になるのが、拡大して新たに加入対象となるパートタイマーが「手取りが減るから会社を辞める」または「意図的に働く時間を抑制する」等を行って労働力が減ってしまうのではないかということです。ここで今回の社会保険料支援制度が効力を発揮します。
今回の制度は、通常、パートタイマーと会社は労使折半で社会保険料を負担するわけですが、この制度を導入するとパートタイマーの負担すべき保険料が減り、その分会社が一時的に多く負担(一定期間経過後に還元(相殺)される対応を予定)することで、加入するパートタイマーの経済的、心理的負担を減らすということを目的としています。対象となる事業所は以下のAまたはBの事業所となります。
A 2026年10月1日以降、任意で社会保険に加入する事業所
2026年10月1日以降、労使の合意により、任意でパートタイマー従業員を社会保険の加入の対象とした「任意特定適用事業所」になると、この制度の対象となります。注意すべきは、2026年9月30日以前にこの任意特定適用事業所となった事業所は今回制度の対象外となることです。制度を利用したいと考えている場合は注意しましょう。
B 2027年10月1日以降、順次、社会保険の適用拡大の対象となる事業所(上記(1)の表)
すでに社会保険の適用事業所だったり、10月1日より前に加入していたりした場合は対象外です。
対象となる従業員とその効果
今回の重要ポイントが、この制度の対象となる従業員ともたらす効果です。まず、対象となる従業員についてですが、これは以下の条件全てにあてはまるパートタイマー(短時間)従業員です。
|
(1)週の所定労働時間が20時間以上である。(ただしフルタイム労働者の4分の3未満) (2)1か月の収入が13万円未満(標準報酬等級月額が12.6万円以下) (3)学生ではない |
特に注意すべき点は(2)の収入額についてです。上限額が標準報酬等級月額12.6万円以下とされています。この制度はパートタイマーでも低収入(短時間)の方をターゲットにしていますので、週20時間以上のパートの方が全員対象になるわけではありません。
次に、得られる効果についてですが、本来パートタイマーが負担すべき保険料の一定額を会社が負担しますので、パートタイマーの負担する保険料が安くなります。また、会社がその分多く負担することになる保険料は、一定期間後に調整(相殺)されて会社に還元されることが予定されています。
| <月収8.8万のパートタイマーをイメージ> | ||||||||||||||||
| 本来 | 制度利用後(例) | 利用後一定期間経過 | ||||||||||||||
| <従業員> 12,500円/月
半額従業員
|
<会社> 12,500円/月
半額会社
|
<従業員> 6,250円/月
従業員負担減
|
<会社> 18,750円/月
会社が負担
|
<会社> 12,500円/月
会社の追加負担分は一定期間経過後、納付される保険料から減額 |
||||||||||||
<制度の有効期間と負担割合の変化>
この制度の有効期間は、会社が制度を利用開始後3年間です。また、その3年間でも制度利用開始2年目までと3年間では会社が負担する割合も変化します。
| 標準報酬月額 | 報酬月額 | 制度利用1~2年目の負担割合(従業員:会社) | 制度利用3年目の負担割合(従業員:会社) |
| ~88,000円以下 | ~93,000円未満 | 25:75 | 37.5:62.5 |
| 98,000円 | 93,000円~101,000円未満 | 30:70 | 40:60 |
| 104,000円 | 101,000円~107,000円未満 | 36:64 | 43:57 |
| 110,000円 | 107,000円~114,000円未満 | 41:59 | 45.5:54.5 |
| 118,000円 | 114,000円~122,000円未満 | 45:55 | 47.5:52.5 |
| 126,000円 | 122,000円~130,000円未満 | 48:52 | 49:51 |
上記のように会社が負担できる割合は、対象者の標準報酬月額により異なります。また、会社が利用できる期間が3年間ですので、開始1年後に入社したパートタイマーに適用できる期間は残り2年間ということになります。
制度を利用するための手続き
希望する会社は保険料調整制度の対象となった日から2年以内に、「保険料調整開始申出書(後日公表予定)」を管轄事務センターまたは年金事務所に提出することとされています。
また、この制度はこれから任意で社会保険に加入する「任意特定適用事業所」となることが要件です。この「任意特定適用事業所」となるための要件は下記になります。
|
<加入要件>対象者の2分の1以上の同意 <提出書類>(1)任意特定適用事業所申出書、(2)2分の1同意の証明書類、(3)被保険者資格取得届 |
まとめ
今後の人生や会社生活での安心を考え、できれば社会保険に加入したいと願っているパートタイマーは相当数存在していると考えられます。今回の制度はその考えを先取りするものです。短時間労働者の立場からも、この制度が活用できる企業を選ぶということも十分考えられるところです。優秀なパートタイマー確保を願っている経営者の方は、しっかり情報収集をして制度の活用を検討してはいかがでしょうか。
ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー
特定社会保険労務士小野 純
一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。
















