【最低賃金、今年はどうなる?!】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第44回

2026年8月21日

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

秋は最低賃金が変更となる時期ですが、ここ数年、連続の高額UPが続き、労使ともに気になるところではないでしょうか。今回は今年の(地域別)最低賃金の動きについて、その決定プロセスについてもふれながら取り上げます

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想定外?だった今年の目安

最低賃金は、まず、【1】中央最低賃金審議会が全都道府県をABCの3ランクに分けて改定額の目安について答申します。この結果を受けて次に【2】地方最低賃金審議会が都道府県労働局長に答申。そして最後に【3】都道府県労働局長が決定する流れです。

今年は令和8年7月28日に開催された【1】中央最低賃金審議会】で、引き上げられる目安が公表されました。具体的には下表の通りです。

ランク 都道府県 金額
A 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 54円
B 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 56円
C 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 56円

昨年はAランクとBランクが63円、Cランクが64円でしたので、引上げ幅が少しだけ鈍化傾向となりました。ただし、AランクよりもB、Cランクの引上げ幅が大きくなっていますので、最低賃金の水準が低い地域に配慮された傾向が見受けられます。

なお、最低賃金には各都道府県で定める「地域別最低賃金」と特定の産業だけが該当する「特定最低賃金」の2つが存在し、「特定最低賃金」は、当該産業の労使が「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されるもので、具体的には鉄鋼業や精密機械、繊維業などが該当します。ここでは地域別最低賃金をとりあげていますのでご注意ください。

 

 

これまでの推移と注目すべき背景(方針転換)

目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合、全国加重平均は1,176 円となります。この1,176円という金額は昨年と比較して55円の引上げ額(率にして4.9%)となり、昨年度の引上げ額66円(同6.3%)よりも鈍化していることがわかります。

<全国加重平均額過去10年の推移> *令和8年は目安値
平成29 平成30 令和元 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6 令和7 令和8
848 874 901 902 930 961 1,004 1,055 1,121 1,176

上記の1,176円(55円UP)という数字に違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。それは、政府が昨年(令和7年、2025年)の骨太の方針で「2020年代に1,500円を目標」と掲げていたからです。この目標を達成するためには、令和7年(2025年)が1,121円だったので、2020年代として残る4年間で379円UPさせる必要があり、単年度平均で94.75円引き上げる必要があったからです。

この背景についてですが、令和8年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」の「賃上げ環境整備」の項目で、「最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(骨太方針2025)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」との記載がありましたので、全国平均1,500円の達成は2030年代前半に先送りされたとみるべきでしょう。個人的にも毎年100円近くUPされては中小企業では体力が持たないのではと危惧しておりましたので、この結果に安堵したというのが小職の本音になります。

 

 

まだ油断できない理由

上記から考えれば事業者の立場では「今年は安心」と思われるかもしれませんが油断は禁物です。なぜなら、この後に続く【2】地方最低賃金審議会の答申内容が不透明だからです。

まずは現状(令和8年の決定前)を確認してみましょう。

都道府県名 現在の最低賃金額 令和6年 UP額 引き上げ率 昨年度の発効日
秋田県 1,031円 951円 80円 8.4% 8年3月31日
愛媛県 1,033円 956円 77円 8.1% 7年12月1日
長崎県 1,031円 953円 78円 8.2% 7年12月1日
沖縄県 1,023円 952円 71円 7.5% 7年12月1日

上記は令和7年の最低賃金決定後の内容ですが、中央で63円、64円とされた目安額が地方答申で71円、80円といった高額になり、そのまま決定しています。また、発効日も通常の10月1日からかなり遅くなっており、秋田県などは「6か月でまた上げるの?」といった不安要素もあります。引き続き経過を注視しておく必要がありそうです。

 

 

会社における注意点

まだ未決定ではありますが、注意しておくべき点が3点あります。1点目は月給者の最低賃金チェックです。最低賃金額は上記のように時給額で決定しますので月給者の方は時給単価に換算した上で基準を超えているかどうかを判断しなければなりません。

例)神奈川県が答申通り54円UPの場合 ⇒ 1,279円(現在1,225円)

1か月の所定労働時間が168時間の場合 ⇒ 計算式 1,279円×168時間=214,872円

つまり、月給額が21万円でも最低賃金を下回ってしまいます(最低賃金法違反は50万以下の罰金です)。

注意!最低賃金の対象にならない賃金とは?

最低賃金の対象は、毎月支払われる基本的な賃金とされ、臨時に支払われる賃金や賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当は含まれません。時間外勤務手当(残業代)や休日出勤・深夜勤務の手当も対象外となるためこの点も事前チェックが必要です。

そして、2点目は最低賃金の適用となる発効日は賃金締日とは異なるという点です。給与ソフトが1日単位で適用額を変更できない場合、「手修正を行う」か「発効日前の賃金締日で先に変更しておく」かのいずれかが必要になります。

最後に3点目はパートタイマー等時給者の対応です。毎年の最低賃金額の上昇で、長年勤務していたパートの時給額が最近入社したパートの時給額に追いつかれる事例が見受けられます。人件費が厳しいという事情もあることと思いますが、モチベーション維持の為にも長期勤務者にはある程度の配慮が望ましいと考えます。

 

 

 

まとめ

今回は今年の最低賃金の動向について取り上げました。上記のように今年は想定外の「小休止」といったところですが、まだ決定はしていません。今後の決定額と発効日について引き続きご注意ください。

 

 

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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