「不安」も「ぬるさ」も若者を逃がす~ 離職を防ぐ心理的安全性づくり ~
【中小企業のための経営情報|マネジメント倶楽部デジタル8月号】

2026年8月12日

 

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このコラムでは、中小企業の経営に役立つヒントや、おさえておきたい今話題の情報などを、中小企業診断士の立場から、わかりやすく解説します。
※本記事は「マネジメント倶楽部デジタル」に掲載されたものです
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人手不足が常態化するなか、若手の早期離職は採用費用がムダになるにとどまらず、現場負荷の増大や品質低下を通じて経営リスクになります。厚生労働省の集計では、令和4年3月卒新規入職者の3年以内離職率は、大卒で33.8%、高卒で37.9%です。若年層は、「個人人格(自分の本音を実現しようとする人格)」と「組織人格(組織の期待に応えようとする人格)」の切り替えが苦手だとされています。切り替えを暗黙的に求められる場面でつまずきやすく、早期離職に直結しがちです。本稿では、離職の背景を整理し、「心理的安全性」を軸に中小企業でも取り組める定着策を述べます。

●最近の若者の離職理由

若手社員の離職理由は、報酬に関するものを除くと、①人間関係、②成長実感の不足、③期待と現実のギャップに集約されます。職場定着に関する調査でも、教育訓練の不足や職場コミュニケーションの乏しさが背景として指摘されています。ここで問題になるのが、「組織人格として期待されること」の曖昧さです。上司・先輩・顧客の期待が食い違うと、個人として納得しながら組織人として振る舞うことができなくなり、不安や不満を抱えたまま疲弊し、突然退職届を提出する、といった事態につながります。

 

●心理的安全性は「ぬるさ」と違う

心理的安全性とは、「率直に意見を言っても、拒絶や罰を受ける不安がない」という信念が、組織内で共有されている状態です。「安全」とは、個人への甘さに満ちた「ぬるい組織」ではなく、組織人格として高い基準を求めるものです。一方で、「言わなくてもわかるだろう」と、相手の個人人格(本音)に依存するのも禁物です。質問・報告・異論表明・失敗共有が気兼ねなくできる、組織としての「学習の土台」だと捉えます。

 

●VUCAの時代だからこそ

変動性の高い不確実なVUCAの時代では、分からないことを早く聞き失敗を小さく止めることが成果に直結します。しかし「言いにくさ」があると相談が遅れ、ミス→叱責→自信喪失の連鎖が起きます。心理的安全性はこの連鎖を断ち、学習と修正を前倒しします。さらに、若手の本音を引き出すことで、上司が組織の期待(優先順位・基準・裁量)を言語化でき、個人人格と組織人格の「すり合わせ」が早期に進みます。

 

●中小企業でもできる心理的安全性づくり

まずは日々の組織内のコミュニケーションを見直しましょう。どんな組織でも使いやすい効果的な方策としては、次のようなものがあります。

① 役割を「紙1枚」で明示: 優先順位、個人の裁量範囲、相談先などを明文化する。
② 上司が「期待の通訳」に: 人によって表現が異なる期待を、直属上司が整理して伝え、部下の混乱を防ぐ。
③ 「質問を奨励」: 質問は失敗の芽を摘み、成果につながる行動として評価する。
④ 「ミスは再発防止」で扱う: 責任追及の前に、事実→影響→再発防止の順で整理し、個人人格への攻撃(人格否定)をしない。
⑤ 「短時間1on1」を実施: 5分でもいいので、業務の進捗、到達目標の認識合わせ、不安や不満がたまっていないかをこまめに点検する。

 

●心理的安全性を離職防止と学習に活用する

中小企業は、経営者と社員一人ひとりの間でコミュニケーションを取りやすい一方で、距離が近すぎる分、本音が隠れてしまいがちです。本音と期待をすり合わせ、職場から不安やぬるさを取り除きましょう。そして、離職を防ぎ早く学び早く成果を上げる心理的安全性の高い職場づくりに取り組みましょう。

 

 

 

※本コラムでは、さまざまな経営者にとって役立つ記事が集まるデジタル情報誌『マネジメント倶楽部デジタル』に掲載されている記事の一部を公開しています。


 

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