SPECIAL INTERVIEW 
日本公認会計士協会東京会青年部特別委員会 委員長 
ファナティクス・ジャパン合同会社 コーポレート部 マネージャー  宮本翔氏

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日本公認会計士協会東京会の中に、20代から30代の若手公認会計士によって構成される非営利(ボランティア)組織の「青年部特別委員会」(青年部)がある。今回、編集部では事業会社で企業内会計士として活躍しながら、青年部の委員長を務める宮本翔氏にインタビューを行い、青年部の活動内容や、公認会計士の活躍可能性等についてお話いただいた。

 

─青年部とはどういった組織なのでしょうか。

青年部は、20代から30代の若手公認会計士によって構成される、日本公認会計士協会東京会の総務グループ内のダイバーシティユニットに所属する非営利組織です。従来まで若手公認会計士特別委員会(通称:青年部)とされていた名称を変更し、今年度から青年部特別委員会として新たにスタートしました。若手公認会計士向けのセミナーや勉強会などのイベントなどを開催しています。任期は1年で、毎期メンバー募集を行っています。今期は過去最多の応募者数となる47名がメンバーとなりました。メンバーのキャリアは多種多様で、監査法人が15名、独立が10名、事業会社が9名、そのほかコンサル、予備校などで活躍中のメンバーもいます。

私は2017年よりメンバーとして参加していて、今年7月の新体制からは委員長を務めています。就任間もない(編注:インタビューは8月20日に実施)ところではありますが、今期は以前から掲げていた組織としての目標を整理する形で、「ミッション」、「ビジョン」、「バリュー」の3つを策定しました。
ミッションとは、組織が果たすべき使命、存在意義、どのような価値(バリュー)を提供するかです。ミッションには、「公認会計士の若手が集まり、それぞれが様々な組織のハブとなることを通じて、世の中に貢献する」ことを掲げています。  次にビジョンとは、組織の将来ありたい姿、ミッションが実現したときの姿です。ビジョンには、「様々な個人・組織・団体の懸け橋となる、魅力あふれる公認会計士が増え、心豊かな社会を実現する」ことを掲げています。

そしてバリューとは、組織共通の価値観、行動基準、大事にしている考えのことです。私たちの定義するバリューは、「公認会計士の価値を高めること」、「業界内外の利益に貢献すること」です。
第6期は、青年部の認知度の向上や、若手の方々がまだ気付いていない公認会計士の魅力を知ってもらうための活動に取り組んでいきたいと考えています。

 

─具体的には、これまでどのような活動をされてきたのでしょうか。

主な活動としては、①会計士のキャリア、②世代、③普及、④各小委員会活動の4つにわけられます。例えば①では、我々は毎年「CPA TALKs」というTED形式のプレゼンテーションイベントを開催しています。2019年3月には、「会計士の多様性」をテーマに多様なフィールドで活躍する公認会計士4名の方に登壇頂きました。②では、公認会計士試験合格祝賀会の開催や、同窓会なども開催しています。③では、高校生・大学生とのワークショップや、受験生へのキャリアセミナーなどを行いました。④は、青年部にはスポーツ、国際、スタートアップ、事業承継といった各小委員会がありますので、それぞれの領域でイベントなどを開催しています。
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─宮本様はこれまでどのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

大学在学中に、自分の可能性を広げるスキルを身に着けたいと思い公認会計士を志しました。2009年に会計士試験合格後、あずさ監査法人の国際事業部で7~8年監査業務に携わり、およそ40社、製造業、自動車のディーラー、ホテル、半導体、食品、アパレルなど、多岐にわたる業種を担当しました。様々な業種の監査業務に触れるなかで、今後の自分のキャリアを考えるようになりました。そうした中、スポーツという答えに辿り着きました。スポーツには僅かな一瞬の間で、多くの人をポジティブな感情に転換できる力があります。スポーツというコンテンツが日本を活性化させるインフラだと気づいたんです。自分はもともとスポーツが好きで、スポーツの持っている価値を信じている人間であり、スポーツに携わることで世の中に貢献できる人材になりたいという思いがあることに改めて気づくようになりました。その思いに気づいた時とほぼ同じタイミングで東京オリンピックパラリンピックの開催が決まり、その流れを受けて、あずさ監査法人内に、2015年にスポーツ分野へのコンサルティングを主な業務とする「スポーツアドバイザリー室」(当時)ができ、日本だけでなく、公認会計士業界の中でもスポーツとの接点ができ始めてきたんですね。

そこで私は監査業務に従事する傍ら、夜間は早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科に通いました。業務の中でスポーツと交わったことがなかったためです。あずさ監査法人の中でスポーツの専門部署ができたことは、私の中で当時「仕事をするのはここしかない」と思いました。無事修士課程を修了した2017年に、希望が叶ってスポーツアドバイザリー室で勤務することができました。

今思えば、スポーツとの接点がこれまで全くなかった中で大学院に進む決断をし、そこで学んだ知識、培った人脈は非常に大きな財産になったと思います。監査法人は公認会計士が大半という、ある種特殊な環境ですが、公認会計士がマイノリティーの環境に身を置くことで、改めて公認会計士の価値とは何か考えるきっかけとなりました。私が通っていた大学院では、パラリンピックのメダリストや、甲子園常連の野球部の監督、事業会社の新規事業責任者としてスポーツ部門を立ち上げる方、商社勤務から後にクラブチームの社長に就任した方など、様々な多様性ある優秀な方々が様々な研究室に在籍していました。彼らに囲まれて切磋琢磨し、また恩師から厳しくも温かい指導を受け、様々な優秀なスペシャリストの方々と濃密な時間を過ごさせていただいたことで、自分自身大きく変わったと感じています。環境が人を変えることを身をもって体験しました。青年部での今の活動もこの時の環境が大きく影響しています。

青年部との出会いもそのころで、先ほどお話しましたように、非常に多様な人材が揃っている組織ですので、そこで会計士には様々な可能性がある、やりたいと思ったことにチャレンジできると改めて気づきました。青年部の中には自身で会計事務所を経営していたり、スタートアップ企業で活躍していたり、様々なチャレンジをしている公認会計士が多く在籍しています。彼らに刺激を受け、また自分自身スポーツにより深く携わっていきたいと考えていたので、監査法人の枠を超えて自分自身新たなチャレンジをしようと決意するようになったのは、まさに青年部での活動がきっかけです。

 

─現在は企業内会計士というお立場ですが、どのような仕事をされているのでしょうか。

現在、Fanatics Japan G.K(ファナティクス・ジャパン合同会社)の管理部長を務めています。ファナティクス・ジャパンは、米国に本社を置く世界最大級のオフィシャルライセンススポーツマーチャンダイズ企業であるFanatics Inc.(ファナティクス)が、新たなグローバル戦略の拠点として2018年1月に設立した日本法人です。ファナティクスは、MLB、NFL、NBAなどの米国スポーツ、そしてマンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリードなどの欧州サッカークラブなどのグッズの企画製造、小売機能等を担っています。

私はもともと経理部長として入社したのですが、2019年にコーポレート部という、ファイナンスだけではなく管理部門としての役割も担う部署が出来ましたので、それまで私の業務としては経理、税務、財務だったのが、人事と広報と総務も手掛けるようになりました。マネージャーという立場ではありますが管理のみではなく実際に手を動かしておりまして、当社は12月決算なので2月~3月は法人税・消費税の申告もありますし、普段は月次決算や給与計算、資金計画の策定、メディア向けのプレスリリースの作成、取材対応、時には記者会見の準備なども行っていたりしています。

幸い、監査法人時代に外資の日本法人の監査を経験しており、業務プロセスが似ていますので、当時の経験が今の業務に活きていると感じます。私個人としては、それまでの監査をする側から財務諸表作成者側に変わったわけですが、財務諸表に書いてある数字ひとつとってもどれだけの人が携わり、どれだけの苦労が積み重なって出来たものなのかということが、本当の意味で理解できたように感じています。その背景を知ったことで、監査法人時代とは全く見え方が変わりました。これは監査法人と事業会社、両方を経験したからこそ思えたことだと思います。
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─公認会計士のキャリアが多様化している中、若い世代の方々は、自身のキャリアをどう考え、決断していくべきだと思われますか。

自分のキャリアを考えるときに、過去、現在、未来という時間で捉えることが大事だと思います。まずは過去、自分のことを振り返ることです。就職活動でいう自己分析でしょうか。自分の性格、考え方は過去の経験に紐づいているわけですから、私のように過去の振り返りから自分の強み、やりたいことに気付くことがあります。

現在という視点では、自分が今、いかに満足した時間を過ごせているかが重要です。そのためには自分の取扱説明書、いわゆる”トリセツ”を作る必要があると思います。自分は何が好きなのか、何が嫌なのか、何にワクワクするか…それらの先に、自分なりの満足できる状態があるはずです。私は自分の好きなスポーツという分野に深く携わることができて、今は仕事のオンオフという概念がなくなるくらい、楽しく過ごせています。

若い方々に伝えたいことは、公認会計士試験に受かるほど努力ができて、能力の高い皆さんなら、なんでもできるはずだということです。社会的信用が非常に高く、その能力も担保されている公認会計士の活躍のフィールドはどんどん広がっていて、この変化が激しい時代に幅が広いキャリアを歩めるということは、どんな未来が来ても生きていける力があるということです。青年部では、メンバーでなくとも参加できる様々なイベントを企画していますので、ぜひそういったイベントを通して自分が社会に対してどのように貢献できるかを考えてもらい、もしよかったら、一緒に青年部の仲間として皆さんの力を発揮していただけたなら嬉しく思います。

 

【今後開催予定のイベント一覧】
・2019年10月22日(火・祝):多様な分野の会計士と会える受験生向け企画(交流会)
・2019年11月:事業承継セミナー
・2019年12月16日:公認会計士試験合格祝賀会
・2020年1月~2月:有識者と深める管理会計実地講座―プロ野球収益管理編―
・2020年2月:事業承継パネルディスカッションイベント
・2020年6月頃:CPA TALKs 2020、同窓会
※上記の開催計画は変更になる可能性がある点ご留意ください。

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宮本 翔(みやもと・しょう)氏

慶応義塾大学経済学部卒業後、2009年に公認会計士試験合格。有限責任あずさ監査法人にて、グローバル企業に対する監査業務に40社以上従事。在職中、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科卒業(総代)後、2017年7月よりスポーツアドバイザリー部門へ異動。2018年11月よりファナティクス・ジャパン入社、2019年7月に青年部特別委員会委員長に就任。早稲田大学ビジネス研究所招聘研究員。 青年部の詳細については、以下ウェブサイトを参照。
https://jicpa-tokyo-cpa-youth.jp/

 

 

税務研究会について

当社は昭和22年4月、「納税者と税務当局との架け橋」となることを目的に創設されました。その年の11月には『税務通信』を創刊し、以来一環して「税務・会計分野における的確な情報提供を通じて広く社会に貢献する」ことを企業理念として、サービスを展開しています。

本件に関する
お問い合わせ先
株式会社税務研究会
経営財務編集部
E-mail:webmaster@zeiken.co.jp

企業情報

株式会社税務研究会

事業内容
税務、経理、会計などの実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍、データベースなどを展開
所在地
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-2
鉃鋼ビルディング19階
代表者名
代表取締役社長 山根毅
上場
非上場
資本金
5,400万円
URL
https://www.zeiken.co.jp/

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