相続土地国庫帰属制度について
[アクタス税理士法人 News Letter2022.6]

相続土地国庫帰属制度について [News Letter

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相続登記がされないままの所有者不明土地が年々増加しており、その解消のために令和3 年に民法・不動産登記法の改正が行われました。これらの背景には相続登記の申請が義務ではないため、手続き未了のまま相続が発生するケースが増え、その結果土地共有者が増えていることが大きな原因の一つと言われています。またこの改正と併せて「相続土地国庫帰属法」が新設され、その施行日は令和5 年4 月27 日となっております。この法律は相続登記が進まないもう一つの原因である誰も相続をしたくない土地について、その将来負担を軽減させるということを目的としています。今月はこの相続土地国庫帰属制度についてお伝えいたします。

 

■ 相続土地国庫帰属制度の創設の背景

不動産の相続に際して、相続人にとっては利用価値が低い不動産であるにもかかわらず、固定資産税等の支払いや維持管理コストの負担があるなど、「望まない不動産の相続」が問題となっています。そのような不動産は実際には売りたくても売れないことも多く、そのような不動産を相続した際には、相続登記も行われずに放置されてしまい、その結果として、所有者不明の不動産が増加する現状がありました。

 

■ 相続土地国庫帰属制度の内容

相続土地国庫帰属制度とは、所有者不明の不動産が増加する現状に鑑みて、そのうち土地については、相続等により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。具体的な手続きとしては、①相続人が法務大臣に対して国庫帰属の承認を申請し、②法務大臣は要件の審査を行った上で妥当であれば承認を行い、③国が算出した負担金を申請した者が納付することで、④相続した土地が国庫に帰属される、という流れになります。手続きの詳細とポイントは以下のとおりです。

①承認申請
申請者は、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権を取得した者に限ります。その土地が単独所有でなく、他に持分を持つ共有者がいる場合には、共有者全員で共同して行う必要があります。具体的には、申請対象となる土地の情報等を記載した申請書と一定の書類を添付して法務大臣に提出し、申請手数料を納付する必要があります。なお、手数料額や申請期限の有無等の詳細は現時点では明らかになっておりません。土地については、建物の取り壊しや境界確定が必要である場合など、管理処分をするにあたり明らかに過分の費用や労力がかかる見込みのある土地は申請段階で却下されます。

②要件審査・承認
①の申請を受けた法務大臣は当該土地について、地上地下の工作物や有体物の有無など、管理処分をするにあたり過分の費用や労力を要しないかを改めて調査するなどして承認又は不承認の判断をします。

③負担金の納付
承認を受けた場合、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10 年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。負担金の算出方法は地目や面積、周辺環境等の実情に応じ詳細は政令で定めることとされています。法務省民事局の参考資料によれば、国有地の標準的な管理費用10 年分は、粗放的な管理で足りる原野の場合約20 万円、200 ㎡の市街地宅地の場合は約80 万円とされています。

④国庫帰属
負担金の納付後は、土地は国庫に帰属され、普通財産として国が管理し処分することになります。

 

■ まとめ

相続登記の義務化がされる中で、相続人等にとって不要な土地の相続に関しては、この制度の活用により手放すことができます。相応の費用はかかりますが、この制度の活用の場面は増えてくるものと思われます。次世代の方々に負担となるような財産を残さないためには、将来的に所有不動産をどうしていくか、できるだけ相続の発生前にご家族で話し合っていくことが必要であると思います。

 

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