相続税の生前贈与加算のポイント
[アクタス税理士法人 News Letter2022.10]

相続税の生前贈与加算のポイント[News Letter

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令和 5 年度の税制改正では、ここ数年の税制改正でも検討課題となっている「相続税と贈与税の一体化」が大きなテーマの一つとなります。ここまで、年間 110 万円の基礎控除が適用される贈与税の暦年課税制度や相続時に贈与財産の課税の精算をする相続時精算課税制度の見直しなどが取りざたされておりましたが、現在、政府税制調査会「相続税・贈与税に関する専門家会合」では、被相続人からの生前贈与を相続財産に加算するという「生前贈与加算制度」の見直しが検討課題となってきております。今回は、現行の「生前贈与加算制度」におけるポイントや注意点を改めて整理するとともに、今後の検討課題について解説していきます。

 

 

■生前贈与加算制度の内容

●制度の内容
生前贈与加算制度とは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人から、その相続開始前 3 年以内に暦年課税に係る贈与によって財産を取得しているときは、その財産を相続財産に加算して相続税額を算出する制度をいいます。この制度は、亡くなる直前に生前贈与をして相続財産を故意に減らすことを防止するために設けられています。

●生前贈与加算の対象者
生前贈与加算の対象者は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」とされています。そのため、相続人だけではなく相続人以外の方が遺贈(遺言による財産の取得)により財産を取得している場合も含まれることになります。一方で、相続人であっても、相続又は遺贈により財産を取得していない場合には、相続開始前3年以内の贈与があったとしても相続税の課税には影響を及ぼしません。

●対象者の注意点
相続税法には相続又は遺贈により取得したものとみなす場合の規定があり、代表的な例としては被相続人が契約していた「死亡保険金の受取り」についてはこのみなし相続に該当することになります。そのため、死亡保険金を受け取った相続人や受遺者は、3年以内の贈与の有無は確認しなければいけないことになります。

●生前贈与加算の加算額
生前贈与加算の対象となる財産は、贈与時点での評価により加算額が決定します。このとき贈与税の支払いをしているかどうかは関係なく、贈与税の基礎控除額の範囲内かどうかも関係ないため、贈与税が発生しないから加算対象とならないということではありません。

●生前贈与加算の対象とならない贈与
以下の特例として設けられている贈与については生前贈与加算の対象からは外れており、基本的に贈与税も相続税も生じないことになります。

(1)贈与税の配偶者控除の特例(婚姻期間が 20 年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与)の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
(2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額(※)
(4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額(※)
※(3)及び(4)の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額は相続等により取得したものとみなして相続財産に加算される場合があります。

 

 

■税制改正の動向

現行の生前贈与加算制度は、3 年より前に贈与した財産は加算対象から外れることや、相当に高額な財産を有する層は贈与税を払ってでも生前贈与を行った方が結果として相続税の節税につながることから、過去の贈与も含めた財産の移転全体に係る税負担に差が生じることとなり、資産移転の時期の違いによって税負担が変動してしまうという問題を解消していません。

この問題の解消のため、2022 年 10 月 21 日に行われた税制調査会「第 2 回相続税・贈与税に関する専門家会合」では、現行の法定相続分課税方式の下での当面の対応として、以下のような観点を踏まえ検討する可能性があるとされており、今後改正動向には引き続き注目する必要があります。

(1) 相続時精算課税制度の使い勝手の向上
(2) 暦年課税による相続前の贈与の加算期間の見直し
(3) 各種の贈与税非課税措置のあり方

 

 

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