遺産が未分割状態における留意点
[アクタス税理士法人 News Letter2022.11]
2022/11/29
遺産が未分割状態における留意点[News Letter]
被相続人が死亡した場合、その所有する財産は、原則遺言がある場合を除いて、相続人間の協議によって遺産分割方法が決定されます。その遺産分割の協議は、相続人間での話し合いがまとまらないこともあり、そのような状態を「未分割状態」といいます。未分割状態では多方面にわたる影響があるため、その留意点について解説いたします。
■遺産分割協議及び未分割状態の主な留意点
① 遺産が共有状態になる
相続人が複数人いる場合、相続開始日から遺産分割協議が確定するまでの間、遺産は複数の相続人が共有している状態となります。共有状態では、例えば不動産の売却手続きに共有者全員の同意が必要になる等、財産の管理・処分に制約が生じます。
② 数次相続発生のリスク
数次相続とは、被相続人の遺産分割協議の確定前にその相続人が死亡し次の相続が開始されることをいいます。未分割状態が長期化する程、この発生のリスクは高まることになります。数次相続が発生すると、死亡した相続人の相続人が、遺産分割協議に参加することになり、更に意見がまとまらない状態になるなど、遺産分割協議が長期化・複雑化する可能性があります。
■遺産分割の期限
遺産分割協議そのものには期限はありませんが、相続税の申告書は、「その相続の開始があったことを知った日の翌日から10 ヶ月以内」に提出しなければならないと定められています。各相続人等の相続税額は、相続税の計算構造上、全体の税額を取得した財産の課税価格に応じて配分されるため、申告書の提出期限までに、遺産分割協議が確定していることを前提としています。しかし、申告書の提出期限までに遺産分割協議がまとまらない場合もあることから、このような場合には、遺産分割協議が確定するまで申告期限を延長するのではなく、課税の公平の観点から、民法で定められた相続分等(法定相続分等)の割合により財産を取得したものとして、相続税の申告及び納税を行わなければなりません。
■未分割状態における相続税申告の主な留意点
① 各種特例の不適用
相続税の申告に際しては、相続税負担の軽減が図られる特例があります。代表的なものとしては、「配偶者に対する相続税額の軽減」と「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の2つです。これらの特例は取得者が確定し一定の要件を満たしている場合に、その取得者である相続人等の税負担を軽減するという趣旨の規定であるため、未分割状態においては、その適用を受けることができません。ただし、当初の申告の際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することにより、申告期限後3年以内に分割協議が確定した場合には、その時点でこれらの特例を適用した状態で相続税額の再計算をし、税額が少なくなる場合には還付を受けることができます。
なお、相続等に関する訴えが提起されているなど一定のやむを得ない事情がある場合において、申告期限後3 年以内に分割が確定しない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、承認を受けることにより、その後であってもこれらの特例の適用を受けることができます。
② 納税資金の準備
未分割状態で申告する場合、上記①の特例が適用できないため、分割が確定している場合に比べ、納税額が多くなることが予想されます。遺産分割が確定しなければ、不動産の売却や預金の解約等の財産の処分に制約がかかるため、相続財産を納税資金に充てることができず、別途納税資金を準備する必要があります。
■未分割後に分割協議が確定した場合の取り扱い
未分割状態の申告書の提出後に分割が確定した場合に、法定相続分等による取得分と異なる遺産分割となったときは、当初の申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合には修正申告、税額が少ない場合には更正の請求をすることができます。ただし、更正の請求を行う場合は、原則、分割等が行われたことを知った日の翌日から4月以内と定められているため、分割後は速やかに更正の請求を行う必要があります。
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