インボイス開始直前! 第1 回 売手側のポイント
[アクタス税理士法人 News Letter2023.8]

インボイス開始直前! 第1 回 売手側のポイント [News Letter

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インボイス(適格請求書)制度の開始が10 月1 日からと目前に迫り、準備も大詰めに入っているところかと思います。そこで、インボイス制度開始直前に再確認するポイントについて、「売手」側と「買手」側に分け、全2 回にわたってそれぞれ解説いたします。第1 回の今回は、売手側のポイントについて解説します。

 

 

■インボイス制度の概要

インボイス制度が開始されると、買手が仕入税額控除を受けるにはインボイス発行事業者から交付を受けたインボイス及び帳簿の保存が必要となり、その他からの仕入は段階的に仕入税額控除ができなくなります。売手としては、取引先が仕入税額控除を受けるためにインボイス発行事業者となり、記載事項の要件を満たす①インボイスの交付義務、②返還インボイスの交付義務修正したインボイスの交付義務交付したインボイス等の保存義務というインボイス発行事業者に課される4つの義務に対応する必要があります。

 

 

■インボイスの記載事項

インボイスには、①請求書発行者の氏名又は名称、②登録番号、③取引年月日、④取引内容(軽減税率の適用対象である旨)、税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載する必要があります。現行の区分記載請求書等保存方式による請求書に、登録番号適用税率税率ごとに区分した消費税額等を加える必要があります。記載事項をひとつの書類のみで満たす必要はなく、相互の関連を明確にし、取引内容を正確に認識できれば、複数の書類をもって記載事項を満たすことができます。

 

 

■インボイスの端数処理

インボイスは、記載する「消費税額等」の計算方法が定められており、取引に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額10%又は8%(税込の場合は10/110 または8/108)を乗じて1 円未満の端数処理を行い算出します。そのため、端数処理は1 つの適格請求書につき、税率ごとに1 行うことになり、例えば1 つの請求書に記載される個々の商品ごとに消費税額等を計算、端数処理することは認められないことに注意が必要です。端数処理の方法は任意の方法とすることができ、切上げ、切捨て、四捨五入などのいずれの方法も認められます。

 

 

■交付義務の発生時期

インボイス発行事業者は、商品の引き渡しや役務提供の完了がインボイス発行事業者登録日(インボイス制度開始から登録する場合は令和5 年10 月1 日)以後である取引について、相手方の求めに応じてインボイスを交付する義務が生じます。売手の売上計上時期と買手の仕入計上時期が異なる場合、売手の収益認識基準に基づき登録日以後売上が認識される取引から交付義務が発生します。

 

 

■交付したインボイスの控えの保存義務

インボイス発行事業者は交付したインボイスの写しの保存義務があり、保存方法は書面での保存又は電子データでの保存いずれの方法も認められます。電子データで保存する場合は電子帳簿保存法に準じた保存が必要となり、「電子帳簿等保存制度」による保存、もしくは、印刷した書面を「スキャナ保存制度」による保存を行うことが可能です。また、電子インボイスを交付して電子データのまま保存する場合「電子取引に係るデータ保存制度」により、交付したPDFや電子メール等の電子保存が求められます。なお、電子帳簿保存法では所得税及び法人税について、電子取引をした場合はその電子データを保存することが原則義務化されていますが、消費税法ではその保存が仕入税額控除の要件になっていることから、電子データを書面出力して保存することも認められています。

 

 

■□■Q&A■□■ 

Q1.インボイス制度開始から登録を受けたいのですが、今から登録番号を取得することはできますか?

A.令和5 年10 月1 日からインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の「インボイス発行事業者の登録申請書」の提出期限は、令和5 年度改正で実質的に令和5 年9 月30 日まで延長されました。申請書に令和5 年10 月1 日から登録希望する旨を記載し、令和5 年9 月30 日までに提出すれば、令和5 年10 月1 日までに登録通知が届かなかった場合でも、同日から登録とみなされます。なお、現在登録から通知受領までは、e-Tax 利用の場合約1 カ月、書面提出の場合は約2 カ月半かかる見込みです。

 

 

Q2.返還インボイスの交付義務の詳細について教えてください。

A.インボイス発行事業者が売上の返品、値引き等を行う場合は、記載事項を満たした返還インボイスの交付義務が発生します。返還インボイスは、返品、値引き等の単位ごとの金額が税込1 万円未満である場合は交付義務が免除されています。

 

 

Q3.振込手数料を売手が負担した場合、返還インボイスを交付する必要はありますか?

A.取引先との契約関係などにより、次のようにその対応が分かれます。

① 振込手数料を売上値引きとした場合、売上値引きは原則的に返還インボイスの交付が必要ですが、銀行の振込手数料は一般的に税込1 万円未満であるため交付は免除されます。

② 売上値引きではなく支払手数料として経理処理し課税仕入とする場合、返還インボイスの交付義務はありません(少額特例に該当する場合がありますが、原則的に取引先からのインボイスが必要です。)

③ 会計上は支払手数料、消費税法上は売上値引きとする場合は、支払手数料の消費税コードを課税仕入ではなく売上に係る対価の返還等とする必要があるため、通常の支払手数料とは別に科目登録をするなど、判別できるような方法をとる必要があります。

 

 

Q4.交付義務が発生するインボイス発行事業者登録日をまたぐ期間に係る請求書の対応を教えてください。

A.登録日以後の取引についてインボイスを発行することとなるため、対価の額や消費税額等の記載を登録日前の取引に係るものと登録日以後に係るものに分けて表示するなどの対応が必要です。ただし、令和5 年10 月1 日(インボイス制度開始日)から登録し登録日をまたぐインボイスを発行する場合は、買手において登録日前後の課税仕入がいずれも仕入税額控除の対象となるため、登録日前後の取引に区分せずインボイスを交付することも認められます。

 

 

Q5.インボイス制度開始後の取引に係る対価を制度開始前に前受した場合の対応を教えてください。

A.令和5 年10 月以降の課税資産の譲渡等に対する対価について、令和5 年9 月30 日以前に請求書を交付し受領した(前受した)場合、インボイスの交付義務への対応は次の場合によりその方法が分かれます。

① 登録番号の通知を令和5 年9 月30 日以前に受けている場合
前受金の請求書の発行時点でインボイスの記載事項を満たすことが可能であるため、交付した請求書をそのままインボイスとする方法。

② 登録番号の通知を令和5 年9 月30 日以前に受けていない場合
前受金の請求書の発行時点でインボイスの記載事項を満たせないため、記載事項を満たせることとなった時点で改めてインボイスを交付する方法、もしくは、交付した請求書で不足していた記載事項についてのみ別途書類で通知する方法のいずれかの方法。

 

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