令和 5 年分 年末調整の ポイント
[アクタス税理士法人 News Letter2023.10]

令和 5 年分 年末調整の ポイント [News Letter

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経理や人事部門における12月の大きなイベントが「年末調整」です。基本は年に一度の業務でありその内容を忘れがちですし、事前の資料収集など業務も煩雑です。最近では電子化を加速させる改正も行われております。そこで今回は、間近に控えた令和 5 年度の年末調整の変更点やポイントについてお伝えしていきます。

 

 

■令和 5 年度からの変更点

●扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族の範囲の見直し

令和 5 年 1 月から、扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族は、年齢 16 歳以上 30 歳未満の人、年齢 70 歳以上の人に加えて、30 歳以上 70 歳未満のうち、次の①~③のいずれかに掲げる人とされました。

①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人、②障害者、③扶養控除の適用を受けようとする所得者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を 38 万円以上受けている人

 

●住宅ローン控除の見直し

住宅ローン控除の要件のうち、下記の点が変更となりました。また、令和 5 年 1 月 1 日以降に取得した住宅については、年末調整時に提出していた「借入金残高証明書」の添付が不要となりました。

・住宅ローン控除の適用対象者の所得要件は合計所得金額 3,000 万以下から 2,000 万円以下へ変更
・借入限度額は住宅性能や居住開始年別に変更となり、控除率は 1%から 0.7%に変更
・控除期間について新築住宅は 13 年に延長、中古住宅は従来どおり 10 年
・「認定住宅」に加え、「ZEH 水準省エネ住宅」と「省エネ基準適合住宅」が追加

 

 

■年末調整の電子化への対応

煩雑な年末調整手続きの簡便化効率化のため、令和2年10月から年末調整書類を電子で作成・申告を行うことが可能となりました。また、令和3年度分より、2年前に発行した給与の源泉徴収票等の法定調書が種類別に 100 枚以上ある企業は、法定調書の電子申告が義務化され、年末調整業務についても書類の電子データでの作成提出について税務署長の承認が不要となり、電子化に向かう環境整備がされました。

法定調書の作成提出業務だけでなく、年末調整業務からの一連の業務を電子化するメリットは大きく、e-TAX の法人利用率が 87.9%(令和 3 年度分)と年々電子化の流れが進んでいます。現時点では法定調書の電子データでの申告が義務化の対象ではない任意の企業でも、今後は年末調整を含めた電子化のより一層の推進が予測されます。

 

 

■年末調整の誤りやすいポイント

●扶養親族の要件となる「生計を一にする」の判定

扶養親族で要件となっている「生計を一にする」ことについては、必ずしも同一の家屋に起居しているということではなく、勤務や修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない場合であっても、生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

 

●遺族年金のある母親の扶養親族判定

合計所得金額の金額で該当を判定する扶養親族や控除対象配偶者について、その金額に所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得は含まれません。よって、非課税所得である遺族年金は含めずに扶養親族の判定をすることになります。

 

●共働き世帯において、子供がいる場合の所得金額調整控除の計算

共働き世帯において扶養親族の「扶養控除」の適用は、夫婦のいずれかで受けることになります。一方、所得金額調整控除(子ども等)の適用においては、扶養控除と異なり、扶養親族に該当する年齢 23 歳未満の子がいる場合、夫婦の双方で所得金額調整控除(子ども等)の適用を受けることができます。

 

●扶養親族としている子どものアルバイト収入

扶養親族となるためには、対象者の合計所得金額が48 万円以下(給与収入が 103 万円以下)でなければならないため、子どものバイト収入がその金額を超えていないか正確に把握する必要があります。

 

●親族等が契約者となっている生命保険契約等の保険料又は掛金

給与の支払を受けている人自身が締結した生命保険契約等の保険料又は掛金だけに限らず、給与の支払を受ける人以外の人が締結したものの保険料又は掛金であっても、給与の支払を受ける人がその生命保険料を支払ったことが明らかであれば、控除の対象とすることができます。

 

 

■□■Q&A■□■ 

Q1.手書き年末調整書類や郵送受領の控除証明書類をスキャンしたデータを原本とすることはできますか。 

A.従業員が手書きで書いた年末調整書類については、「電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置」を講ずることでスキャンしたデータを原本とすることができます。

具体的には、提出された電子データが従業員本人から提出されたことが確認できるよう担保しておくことです。例えば、マイナンバーカードを利用して申告書情報に電子署名をする方法や、年末調整申告書データそのものにパスワードを付すなどという方法を取る必要があります。

なお、郵送で受領した控除証明書類はスキャンしたデータを原本とすることはできません。

 

 

Q2.年末調整の電子化が進んできているようですが、企業と社員それぞれどんなメリットがありますか。 

A.それぞれ次のようなメリットと注意点があります。

 

Q3.年の途中退職する従業員について、再就職が決まっていない時は年末調整を行うことはできますか。 

A.年の中途で退職した人のうち、退職した会社で年末調整の対象となるのは、次の①~④に該当する人ですので、再就職が決まっていないだけの方については年末調整を行うことはできません。

死亡により退職した人、②著しい心身障害のために退職した人で、その退職の時期から本年中に再就職が不可能と認められ、かつ、退職後本年中に給与の支払を受けないこととなっている人、③12月に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人、④パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が 103 万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる人を除きます。)

 

 

Q4.令和 5 年中に海外転勤する従業員に対する年末調整は、いつまでに行うのでしょうか。 

A.「扶養控除等申告書」を提出している人が海外支店等の転勤で出国することにより非居住者となる人については、出国する時までに年末調整を行います。

 

 

Q5.国税庁が年末調整用のソフトを用意しているようですが、どのようなものでしょうか。 

A.国税庁が配布している年末調整書類作成支援アプリ「年調ソフト」は無料で利用することができます。

「年調ソフト」を使って作成することで、控除額の計算扶養親族等の年齢の判定控除が受けられるかの判定などを自動で行うことができます。給与ソフトなど、他システムへの連携機能は無く、あくまでも年末調整の書類のみを作成するアプリのため、電子化のメリットの享受は限定的ではありますが、紙での保管・確認作業や、従業員の記載誤りなどによる手戻り作業を削減できる効果が期待できます。

 

 

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