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インボイス制度・電子帳簿保存法に関するアンケート結果について[金子先生からのコメント]

ZEIKEN PRESS(運営:税務研究会)では、インボイス制度に関する対応状況や実務の課題などのアンケートを実施いたしました。アンケート結果について、「今からでも間に合う! インボイス制度の実務対応」(ZEIKEN PRESS インボイス制度特設サイト掲載)の解説者である金子真一先生からコメントをお寄せいただきましたので、ご紹介いたします。

◆実施の概要


■ 実施期間:2022年11月24日~12月23日
■ 募集方法:(弊社のメルマガ読者を中心とした)インターネットによる回答
■ 有効回答:631件(課税事業者588、免税事業者43)

◆金子先生からのコメント


今回のアンケートは特に税制への関心の高い方々が対象ということもあり、インボイス制度や電帳法について、「負担ばかり増えてメリットが感じられない」という不満を持ちつつも、大半の会社は粛々と準備を進めている様子が伺えます。

その一方で、このまま無事インボイス制度導入を迎えられるのだろうかという不安をお持ちの会社も多く存在し、以下のような内容のコメントが寄せられています。

【インボイス】
► 他社がどのレベルまで対応しているのか情報がなく不安である
► 社内でも温度差があり、消費税インボイス制度=経理部門(税務部門)のタスクと整理され、協力が得られない
► システムの制約がある中、消費税インボイス制度が求める要求を満たすにはコストと時間を要するが、とても対応できない。何か良い方法はないだろうか

【電子帳簿保存法】
►漠然とした不安があり何をどうしたらよいかわからない
►前回の導入直前の令和3年12月に政令で急遽宥恕措置が導入されるなど真面目に取り組んでいた会社が肩透かしを食らわされたので、はっきりするまで様子見する

不安の要因はタスクの明確化とそれに対するアプローチが整理されていないことにあるのではないでしょうか。以下のアプローチをアイデアの一つとして提示しますので、よろしければ頭を整理する際の参考にしてください。

■インボイス制度について   

①登録等に関する事前アンケート
《お悩み》
►集めた登録番号情報の管理に苦慮する
►明らかに免税事業者ではない大企業などが返してくれない
►同じようなアンケートが経理部門に回付されるため手間がとられて業務の妨げとなることもある

《アプローチのアイデア》
◆アンケートを取る目的を明確にする(それによって送付対象、情報の集め方、集めた情報の管理を決める)
◆アンケートを送付する際は顧客の窓口となっている部門と情報連携する(経理部門があらかじめ整理しておかないと、トラブルになったときに協力が得られない)

②従業員教育
《お悩み》
►全社で取り組むべき課題なのに、経理部門(税務部門)のタスクとして、真剣に考えてくれない社員にどうアプローチすればよいか分からない

《アプローチのアイデア》
◆制度に対する理解を深めてもらう勉強会、説明会を行う
◆eラーニング等を活用して社内周知に取り組む

③端数処理
《お悩み》
►システム改修には時間と多額のコストを要する中、投資判断に苦慮している
►税務リスクはもちろんのこと、それ以上に外部からの指摘、内部統制部門からの税務コンプライアンスの視点からの判断が悩ましい

《アプローチのアイデア》
◆既存の証憑類(例えば納品書と請求書)をセットで保管してもらうことでインボイスの要件を満たす方法を検討する

④納品書の保管
《お悩み》
►現状納品書を保管するルールにしていないものの、納品書もインボイスとなる可能性がある中、保管ルールを変更するかが悩ましい

《アプローチのアイデア》
◆ケースバイケースで個別判断するのは現実的ではないため、保管対象を納品書に広げる

⑤免税事業者との接し方
《お悩み》
►優越的地位の濫用、下請法など法律的な問題に不安を感じる
►法律的な問題がない場合でも、SNS等で炎上するリスクが無視できないため、どのように対応していくべきか悩む

《アプローチのアイデア》
◆交渉方針を決める(経営としての方針を決める必要があります)
◆取引先と交渉する者に対し、留意点を共有しておく

■電子帳簿保存法について   

①課題の整理
《お悩み》
►何をしたらよいか分からない

《アプローチのアイデア》
◆令和5年度の税制改正を踏まえた制度を正しく理解する
◆マストとされている電子取引における電子データ保存と真実性、可視性の要件整備でどれを選択するのかを決める

②期限までに間に合わない
《お悩み》
►2024年1月に間に合うとは到底思えない

《アプローチのアイデア》
◆最初から100点を目指す必要はなく、まずは合格点を自分の中で決める。例えば、
 ・コストをかけず最低限の要件のみクリアする
 ・システムを入れて手間をかけず最低限の要件をクリアする
 ・足元の請求書等に関する業務の効率化を図る
 ・デジタルインボイスまで見越し、請求書等に関する業務の効率化を目指す
 等のゴールを定め、やるべきタスクを明確する
◆到達時期についてはベストエフォートと割り切り、ゴールを目指して工程表を書いて推進する

以上簡単ですが、不安感を取り除くためのアプローチの一つを紹介いたしました。

最後に、インボイス制度導入まで時間との闘いとなりつつありますので、ゴールからの逆算でアプローチすることも考えられます。

経理部門のゴールは決算・申告ですから、例えば下記のような流れになります。

⇒ 決算・申告に必要な情報を明確にする
⇒ それらの情報をどのシステムから入手しているかを確認する
⇒ そのシステムにデータを入力又は連携している上流工程を確認する
⇒ 必要な対策を関係者で相談する

残された時間がないのも事実ですが、課題を明確にして一つひとつ障害物を取り除いていくのが大切と考えます。

皆さん、一緒に頑張りましょう!

税理士 金子真一

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