第167回 機械装置の移設費用に係る税務上の取扱い ~資本的支出となる場合と修繕費となる場合の区別~

今月のキーワード ―2016年11月―
公認会計士 太田達也

■機械装置の移設費が資本的支出となる場合

一般的には、機械装置の移設費は、修繕費等としてその移設の日を含む事業年度の損金の額に算入されます(法基通7-8-2(2))。しかし、法人税基本通達7-3-12においては、集中生産またはよりよい立地条件において生産を行う等のため一の事業場の機械装置を他の事業場に移設した場合、移設費の額はその機械装置(当該機械装置に係る資本的支出を含む)の取得価額に算入するとされています(法基通7-3-12)。このような場合の移設費は、移設により機械装置をより効率的に動かすことを期待して支出される費用であり、資本的支出の性格を有するものであるためであると考えられます。

「集中生産またはよりよい立地条件において生産を行う等のため」とされている趣旨は、移設により生産能力の増強または生産の効率化が図られ、その機械装置の効用・価値が高まるようなケースであると考えられます。

■主たる目的が何であるかがポイント

新規設備の導入により大がかりな配置替えを行ったからといって、その規模(金額の多寡)で判断するわけではないと考えられます。

その移設の主たる目的が、そもそも新規の生産設備の導入にあるのであれば、既存設備の配置替えは付随的に生じたものであるに過ぎず、その移設により機械装置の効用・価値が高まるものではないと考えられます。一方、新規設備を導入するに際して、それを機に既存設備の生産効率が高まるような配置替えを併せて行うようなケースもあり得ます(注)。そのようなケースを想定して、通達において「原則として」と付しているものと考えられます。以上の観点を勘案して、疎明することがポイントであると思われます。

(注)例えば、新規設備を導入することを機会として、中間製品を加工する既存設備をその中間生産の製造設備の場所に近接した場所(よりよい立地条件)に移転して、その結果として既存設備の生産効率が高まることが明らかであるようなケース。

■公共事業の施行に伴う移設の場合

収用換地等に伴い機械装置の移設が行われる場合は、たとえその移設が集中生産またはよりよい立地条件において生産を行うための移設であった場合でも、修繕費として損金算入することが認められます。また、被災した工場の機械装置を他の工場に移設するような場合も、その機械装置の現状の効用を維持するためにやむを得ず行われるものであると考えることができ、修繕費に該当するものと考えられます。

■工場の廃止に伴う移設の場合

2つの工場で同種の製品を生産していた場合に、生産量が減少したために、1つの工場を閉鎖し、そこにあった機械装置を別の工場に移設した場合の移設費については、集中生産またはよりよい立地条件において生産を行う等のための移設には該当せず、原則として修繕費に該当するものと考えられます。


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