【信託】遺言・遺言信託・遺言代用信託について
[あいわ税理士法人 News Letter 2026.6]

【信託】遺言・遺言信託・遺言代用信託について

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1.はじめに


遺言、遺言信託、遺言代用信託。これらの言葉を「聞いたことはあるものの、違いはよく分からない」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。特に、信託が関わる制度については、仕組みが分かりにくく、「自分には難しそう」「まだ先の話」と感じられがちです。

しかし実務の現場では、これらの違いを十分に理解しないまま選択した結果、「本来想定していた備えができていなかった」「別の制度を使えば、もっと負担を減らせた」といった声を聞くことも少なくありません。そこで、本ニュースレターでは、遺言・遺言信託・遺言代用信託の違いを改めて整理して、それぞれがどのような場面で活用される制度なのかを解説します。

 

2.三つの制度の全体像


相続対策として耳にすることの多い「遺言」「遺言信託」「遺言代用信託」は、名称が似ているため混同されがちですが、それぞれ役割や特徴が異なります。

「遺言」は、亡くなった後に財産を「誰に、どのように分けるか」を決めておくための、最も基本的な方法であり、民法に定められている(単独の)法律行為です。

「遺言信託」は、遺言の内容は通常の遺言と同じですが、金融機関などの第三者に、遺言書の作成支援、保管、相続発生後の手続きを任せる仕組みです。手続き面でのサポートを受けられ、安心感があります。

「遺言代用信託」は、信託という仕組みを利用し、生前から亡くなった後までを見据えて、財産の管理や引き継ぎを行う方法です。近年では、認知症への備えとして利用されることも増えています。

これら三つの制度は、「いつから備えたいか」「どのような不安があるか」「金銭的な負担はどうなるのか」「親族の状況はどのようになっているのか」によって、向いている場面が異なります。以下では、それぞれについて解説していきます。

 

3.遺言とは


(1)遺言の役割

遺言とは、ご自身が亡くなった後に、財産を誰にどのように引き継ぐかをあらかじめ決めておくためのものです。法律で定められた形式に従って作成された遺言がある場合には、原則として法律で定められた相続割合(法定相続分)よりも、遺言の内容が優先されます。もっとも、相続人全員の合意があれば、遺言とは別の遺産の分け方をすることも可能とされています。

(2)遺言の主な種類

遺言にはいくつかの種類がありますが、一般的によく利用されているものは次の二つです。

①自筆証書遺言
ご本人が全文・日付・氏名を手書きして作成する遺言です。比較的手軽に作成できますが、書き方に誤りがあると無効になる恐れがあります。2020年からは、法務局で遺言書を保管できる制度が始まり、遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについての外形的なチェックが受けられます。紛失や改ざんの心配は軽減され、また、家庭裁判所での検認が不要になるなど、遺言書保管制度にはたくさんのメリットがあります。

②公正証書遺言
公証人が関与して作成する遺言です。形式面での不備が生じにくく、亡くなった後に家庭裁判所で検認を受ける必要がありません。安心感が高い方式として、多くの方に利用されています。遺言作成時には、公証人に相談しアドバイスを受けながら、遺言者の真意を正確にまとめて作成してくれるという利点もあります。

(3)遺言の注意点

遺言の効力は基本的に「亡くなった時点」から始まります。そのため、認知症などで判断能力が低下した後の「生前の」財産管理は遺言では対応できないため、別途の対策が必要となります。

また、ご家族構成や財産の内容が変わった場合には、遺言の見直しが必要になることもあるため、一回作ったら終わりではないことにも留意が必要です。もっとも本来は、状況の変化に応じて定期的な見直しが望ましいといえるでしょう。

 

4.遺言信託とは


(1)遺言信託の概要

「遺言信託」とは、主に信託銀行などの金融機関が提供しているサービス(商品)のことを指します。遺言の作成支援から、遺言書の保管、作成後の内容の見直し、そして相続が発生した後の遺言執行や各種手続きまでをまとめて任せることができます。

遺言そのものの法的な性質が変わるわけではありませんが、第三者が関与することで、遺されたご家族の相続に係る手続きの負担が軽減される点が特徴です。

(2)遺言信託のメリットと留意点

遺言信託には、次のようなメリットがあります。

  • 遺言の内容や形式について、専門的な確認を受けられること
  • 遺言書を安全に保管してもらえること
  • 相続発生後の手続きを、中立的な立場で進めてもらえること

一方で、遺言信託は、相続発生前後における、相続に係る遺言の作成・執行等を補助するサービスであり、生前の認知症対策や長期間にわたる財産管理を行う仕組みではありません。また、利用には相当程度の手数料や報酬がかかるため、「どこまで何をサポートして欲しいのか」を明確にし、事前に内容を確認することが大切です。

 

5.遺言代用信託とは


(1)遺言代用信託の仕組み

遺言代用信託とは、「信託」という仕組みを使って、将来の相続に備える方法です。生前に信託契約を結び、ご本人が亡くなった後には、あらかじめ決めた方が財産を受け取るように設計します。信託法という法律に基づく制度で、遺言と似た役割を果たします。

大きな特徴は、生前から契約が効力を持つ点です。そのため、認知症などによって判断能力が低下した場合でも、信託契約に基づいて財産の管理や引き継ぎを行うことができます。

(2)利用が広がっている背景

近年、遺言代用信託は次のような理由から注目されています。

  • 認知症による預貯金や不動産の管理が心配な場合
  • 配偶者の生活を守りつつ、その後は子に財産を残したい場合
  • 障害のあるお子さまの将来を長期にわたって支えたい場合

ご本人がご自身の財産を信託して、生前はご本人を受益者とし、お亡くなりになった後は、ご本人の配偶者やお子さまなどを受益者と定めることによって、ご本人がお亡くなりになった後における財産の分配を信託によって実現しようとするものです。

遺言だけでは対応が難しい「生前から亡くなった後までの管理」を考えられる点が特徴です。遺言代用信託は、信託という「契約」であるため、その契約内容を確実に実行することができます。

 

6.三つの制度の違い


どの制度が優れているかではなく、「目的に合っているか」が重要となります。

なお、遺言代用信託を利用した場合でも、遺言(遺言信託)と同様に、原則として、財産を引き継ぐ際には相続税の対象となります。信託を利用したからといって、税金が安くなるわけではありません。

 

7.おわりに


相続について考えることは、ご自身やご家族の将来を考えることでもあります。大切なのは、「まだ先のこと」と思わずに、「ご家族のことを想いながら」できるところから少しずつ備えていくことです。

遺言、遺言信託、遺言代用信託はいずれも、将来の安心につながる選択肢です。しかし、どの制度が適しているかは、ご家族の状況や財産の内容によって異なります。特に遺言代用信託は仕組みが複雑であるため、専門家と相談しながら検討することが安心につながります。

本ニュースレターが、ご自身やご家族の将来を考える際の一助となり、ご家族で話し合うきっかけとなれば幸いです。

 


筆者:税理士 二村 嘉則

 

■本ニュースレターについて


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