【コラム】フリーレント期間の定めのある賃貸借取引にかかる通達の新設
[あいわ税理士法人コラム]

【コラム】フリーレント期間の定めのある賃貸借取引にかかる通達の新設

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1.はじめに


オフィスや店舗の賃貸借契約において、契約開始当初の一定期間について賃料の全部または一部を免除する、いわゆる「フリーレント」は、テナント誘致などを目的として広く用いられる契約形態となっています。その一方で、税務上の取扱いについては、⾧らく法令や通達において明確な取扱いが示されていませんでした。

こうした中、令和7年度税制改正に伴い、法人税基本通達12の5-3-2が新設され、フリーレント期間(無償等賃借期間)を含む賃貸借契約に係る借手の法人税処理について一定のルールが示されました。本稿では、通達新設までの実務慣行を踏まえつつ、新通達の内容と実務上の留意点を整理します。

 

2.通達新設までの取り扱い


通達新設前の実務においては、フリーレント期間中は契約上、賃料の支払義務(債務)が発生しないことから、法人税法上も「債務の確定」がないとして、実際に賃料の支払義務が生じた事業年度に損金算入する処理が広く行われていました。

この背景には、法人税法上、販売費及び一般管理費に係る損金算入の考え方として債務確定基準(①債務成立、②具体的な給付原因事実の発生、③金額の合理的算定)が採用され、フリーレントについては、①②の充足が難しいと整理がされていた点があります。

一方で、会計処理では、発生主義の観点から、賃料総額を賃借期間で按分し、フリーレント期間を含めて費用計上する処理が採用される場面も少なくありませんでした。

その結果、会計と法人税の処理が一致せず、法人税の申告上、別表四で「未払家賃否認(加算・留保)」と「未払家賃認容(減算・留保)」という税務調整を行う必要があり、実務負担が生じていました。

 

3.通達新設による取り扱いの変更


令和7年度税制改正により法人税法53条が新設され、法人が賃貸借取引により資産を賃借した場合に、契約に基づき支払うこととされている金額のうち「各事業年度において債務の確定した部分」は各事業年度の損金に算入するという別段の定めが設けられました。

そのうえで、新設された法人税基本通達12の5-3-2では、フリーレント等の「無償等賃借期間」を含む契約については、「課税上弊害があるものを除き」、損金経理を要件として、賃料総額を賃借期間にわたり均等に支払われるべきものと仮定した場合の金額を、各事業年度の損金の額に算入する取扱いが定められました。

改正通達の取扱いは、従来の債務確定基準の形式に当てはめると「無償期間は債務なし」となり、フリーレント期間の費用認識ができない一方で、取引の経済的実態(契約全体の対価の配分)に照らすと、契約期間を通じた費用配分として按分が合理的と考えられる場面があるという問題意識に対応したものです。

加えて、新リース会計基準において、無償等賃貸期間を含めた使用料の総額を契約期間にわたり計上する考え方が示されたことも、税務上の整理の契機となった点が通達解説で示唆されています。

また、本通達では「損金経理要件」が求められているため、会計上、フリーレント期間を含めた按分額の費用計上を行っていない(損金経理していない)場合には、従来どおり賃料支払時の損金算入となります。

なお、改正通達の適用時期については、令和7年4月1日以後に開始する事業年度分から適用され、令和7年4月1日前開始事業年度分(既契約分)について遡及適用されません。既契約分の申告調整を行っている場合には、引き続き申告調整を継続することとなります。

 

4.課税上の弊害とは


上記3.のとおり、本通達はすべてのフリーレント契約について按分処理を認めるものではなく、「課税上弊害があるもの」に該当する場合には適用を認めていません。

「課税上弊害があるもの」の具体例としては、①フリーレントがないと仮定した場合の賃料総額と実際の契約に基づく賃料総額の差額が、実際の契約に基づく賃料総額のおおむね2割を超える場合、②フリーレント期間が4か月を超える場合で、特定の事業年度において、賃借期間のおおむね5割を超える期間がフリーレントとなる見込みである場合などが挙げられています。

例えば、2年契約(24か月)で、フリーレント期間終了後の月額賃料が100万円、フリーレント期間が5か月とされているケースを考えます。この場合、フリーレントがないと仮定した賃料総額は2,400万円(100万円×24か月)となる一方、実際の契約上の賃料総額は1,900万円(100万円×19か月)となります。その差額500万円は、実際の賃料総額1,900万円のおおむね2割(約380万円)を超えるため、「課税上弊害があるもの」に該当し、本通達の適用は認められないこととなります。

このように、フリーレント期間が契約期間の一部に過ぎない場合であっても、賃料総額に占める割合によっては、通達の適用対象外となる点に留意が必要です。

 

5.終わりに


フリーレント通達の新設により、借手側の法人税実務における取扱いは一定の明確化が図られましたが、契約内容次第では従来どおりの支払時損金算入となる場合もあります。

そのため、今後はフリーレント期間の⾧さや賃料水準を踏まえ「課税上弊害があるもの」に該当しないかを、契約締結の段階から意識することがより重要になります。

また、今回は法人税基本通達の新設であり、消費税法については改正がないため、従来どおり、実際に賃料を支払ったタイミングで課税仕入れを認識することに留意が必要です。インボイス制度の下では、適格請求書の交付時期や記載内容との関係から、法人税と消費税の処理を完全に一致させることが難しい場合もあり、法人税とは異なる取扱いを意識した対応が求められます。

 

 


 

筆者:山中 まりや

 

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