【職場の熱中症対策は今から準備を!】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第42回

2026年6月16日

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

令和8年6月4日に厚生労働省等より各都道府県市町村、労働局宛に「熱中症予防の普及啓発・注意喚起について(周知依頼)」が出されました。今年の夏も酷暑が予想されますので、会社経営者や事務担当者の方は下記内容をご確認いただき、自社の熱中症対策に役立ててください。

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職場における熱中症による死傷者の発生状況

職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数は、2025 年に1,803人と2024 年と比べて約43%も増加しています。これは統計を取り始めた2005年以降、最多です(以下の統計は、厚生労働省「令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」より一部抜粋)。

(人)
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
462
(12)
544
(14)
1,178
(28)
829
(25)
959
(22)
561
(20)
827
(30)
1,106
(31)
1,257
(31)
1,803
(19)
下段カッコ内は死亡者数

また、業種別では製造業が最も多く、次いで建設業、商業、運送業となっています。

(人)
業種 建設業 製造業 運送業 警備業 商業 清掃等 農業 林業 その他
2025年 292
(5)
365
(2)
220
(1)
199
(3)
237
(2)
121
(1)
34
(2)
9
(0)
326
(3)
1,803
(19)
下段カッコ内は死亡者数

興味深いのが月別の発生状況で、昨年は6月から数多く発生していることがわかります。

(人)
4月以前 5月 6月 7月 8月 9月 10月以降
2024年 3 18 57 588(17) 431(13) 156 4(1) 1,257(31)
2025年 11 23 268(1) 718(12) 583(3) 188(3) 12 1,803(19)
カッコ内は死亡者数(発生月のみ記載)

 

 

改正労働安全衛生規則への対応

上記のような職場での熱中症による死傷者増加の影響を受け、令和7年6月1日には改正労働安全衛生規則が施行されました。これにより会社には以下の「職場の熱中症対策が義務化」されています。

A 熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための体制整備

B 熱中症の重篤化を防止するための措置手順の作成

C これらの体制や手順の関係作業者への周知

なお、上記を実行するため下記のような現場想定シート(筆者作成)の準備も有効と考えます(クリーム色の背景の部分は例示です。業務内容等に応じて自社で記入してください)

現場想定シート(作成例)

熱中症のおそれのある者発見

(または自覚症状あり)

熱中症が疑われる症状例

【他覚症状】ふらつき、生あくび、失神、大量発汗

【自覚症状】めまい、筋肉痛、筋肉の硬直、頭痛

(行うべきこと)作業離脱、身体冷却
当社での発生想定場所
どこで 工場内・倉庫 どこで 室内 どこで 営業・屋外作業
誰が 周囲の者 誰が 周囲の者 誰が 同行者or本人
状態 症状発生 状態 症状発生 状態 症状発生
連絡先 本社 総務部 担当:鈴木・佐藤 TEL 03-○○○○-××××

意識の状態 意識がない、意識はあるものの様子がおかしい 意識はしっかりしている
*判断に迷う場合は#7119等活用

取るべき対応 救急隊要請
医療機関への搬送

十分な水分摂取、引き続き冷却

*医療機関までの搬送の間や経過期間中は1人にしない(単独時は連絡状態維持)

経過報告 会社の担当部署に必ず報告

*回復後の体調急変等により症状が悪化した場合は、上記会社連絡先に連絡する。

その他注意事項

  • 1人でいる際は特に早めに対応
  • 自動車内は原則NG。屋内等屋根のある場所での休憩を心掛ける
  • ペットボトル等の水(重症ならばホースで)を身体に直接かけて冷却
  • 対策有効品準備(WBGT測定器、スポーツドリンク、冷えピタシート、アイスノン 等)

本シートに関する連絡先  総務部 担当:鈴木・佐藤 TEL 03-○○○○-××××

 

 

職場における熱中症防止ガイドライン

また、厚生労働省から「職場における熱中症防止対策のためのガイドライン」(令和8年3月18日付 基発0318第1号)が出されました。このガイドラインのポイントは以下になります。

(1)熱中症リスクの評価と対策の選択

職場ごとに高温・多湿、連続作業、通気性の悪い服装、身体負荷の大きい作業などのリスク要因を特定し、JIS規格のWBGT指数計で実測してリスクを評価。その結果に応じて適切な対策を選択・実施する。

(2)労働衛生管理体制の確立

衛生管理者(衛生推進者)を中心に、衛生委員会や職場懇談会等で労働者と協力しながら熱中症防止対策を検討し、作業手順や報告体制を整備し、全員に周知。

(3)作業環境・作業管理の徹底

WBGT値の低減(遮へい物や屋根の設置)、休憩場所の整備、作業時間の短縮、休憩時間の確保、暑熱順化期間の設定、プレクーリング、水分・塩分の定期摂取、通気性の良い服装の着用などを実施する。

(4)健康管理の強化

健康診断結果や日常の健康状態を確認し、従業員の健康状態を常に把握。

(5)労働衛生教育と異常時の対応

熱中症予防に関する教育を実施。異常時は身体を冷やし、水分・塩分摂取、迅速な救急対応を徹底する。

なお、上記対策を的確に行うために、対策に関わる熱中症予防管理者(「教育研修」を受講し選任された者)、職長等、及び作業従事者に対し、労働衛生教育を行うことが望ましいとされています。

 

 

 

まとめ

夏は確実に訪れますので早目の準備を心掛けてください。企業としては、可能な限り今回紹介したガイドラインの実施、最低でも現場想定シート程度は準備しておくようにしましょう。

また、働く人一人ひとりが、熱中症に関する正しい知識をもち、実践することも重要です。

 

 

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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