第284回 令和8年度税制改正後の「租税特別措置の適用除外」

2026年8月1日

 

 

 

 

 

■「租税特別措置の適用除外」とは

企業収益が増大している租税特別措置法上の中小企業者および農業協同組合等以外の法人(以下、「大法人」といいます)のうち賃金引上げや国内設備投資に消極的なものに対して、果断な経営判断を促すためという趣旨により、試験研究費の税額控除制度を始めとする生産性の向上に関する一定の租税特別措置の適用を制限することとされています。これを「租税特別措置の適用除外」または「特定税額控除規定の不適用措置」といいます。

 

■令和8年度税制改正による見直しの内容

次の見直しを行った上で、その適用期限を令和11年3月31日まで延長するとされました。

大法人で、所得の金額が前期の所得の金額を超える一定の事業年度で、かつ、次に掲げる要件の両方を満たさない場合には、一定の税額控除制度を適用できないとされます。

① 継続雇用者給与等支給額に係る要件

  • 下記以外の法人:継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して1%以上増加すること(改正前:継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること)
  • 前年度が黒字の大法人(資本金10億円以上かつ常時使用する従業員数1,000人以上、または、常時使用する従業員数2,000人超の法人):継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して2%以上増加すること(改正前:継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して1%以上増加すること)
② 国内設備投資額に係る要件

  • 下記以外の法人:国内設備投資額が当期償却費総額の30%を超えること
  • 前年度が黒字の大法人(資本金10億円以上かつ常時使用する従業員数1,000人以上、または、常時使用する従業員数2,000人超の法人):国内設備投資額が当期償却費総額の40%を超えること

太字が令和8年度税制改正による改正点です。所得の金額が前期の所得の金額を超える一定の事業年度で、2つの要件の両方を満たさない場合に制限がかかるという点で、改正前と比べて厳しくなっています。ただし、試験研究費の税額控除制度については、①または②のいずれかを満たせば制限措置は課せられないとされます。

試験研究費の税額控除制度については、従前どおり、継続雇用者給与等支給額に係る要件および国内設備投資額に係る要件のいずれかを満たせば制限は課せられないとされているのは、試験研究費に係る税額控除制度以外の他の租税特別措置は設備投資に関連した税制であるため、国内設備投資額に係る要件を満たすことはある意味で当然と考え、両方の要件を満たすことが求められると考えられたことによるものです。

 

■適用除外の対象となる租税特別措置

租税特別措置の適用除外の対象に、研究開発税制のうち重点産業技術試験研究費の額に係る措置(繰越税額控除制度を除く)が加えられました。また、令和8年度税制改正により新設された特定生産性向上設備等投資促進税制も適用除外の対象に加えられました。
結果として、改正後は、次の各措置が対象になります。

一定の要件を満たさない場合に適用除外とされる租税特別措置

  • 試験研究費の税額控除制度(一般試験研究費、特別試験研究費、重点産業技術試験研究費の各措置)
  • 地域未来投資促進税制に係る税額控除制度
  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制に係る税額控除制度
  • 特定生産性向上設備等投資促進税制に係る特別償却制度および税額控除制度

なお、特定生産性控除設備等投資促進税制については、要件を満たせない場合には、税額控除制度だけではなく、特別償却制度および税額控除制度のいずれも適用できないとされている点に留意する必要があります。

 

 

 

 

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