外貨預金の換算時期|税務通信 READER’S CLUB

2024年9月11日

 

このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

 

関連記事:No.3812(令和6年7月29日号) 38頁

ショウ・ウインドウ 「外貨建預金による株式等購入」
Q1

個人において、A銀行で契約している外貨普通預金の米ドル残高の全額を、B銀行の外貨定期預金に移動させた場合は、為替差損益を認識する必要がありますか?

 

A1

所得税法57条3第1項において、外貨建取引を行った場合には、為替差損益を認識するとされています。しかし、所得税法施行令167条の6第2項では、下記の通り、引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、外貨建取引には該当しないこととされています。つまり、この場合には、為替差損益が認識されることはありません。この外貨建取引に該当しない要件としては、同一の金融機関に、同一の外国通貨で、預け入れることです。

所得税法施行令第167条の6
2 外国通貨で表示された預貯金を受け入れる銀行その他の金融機関(以下この項において「金融機関」という。)を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、法第57条の3第1項に規定する外貨建取引に該当しないものとする。

この規定の背景は、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりがないから、というものです。実態に変化がないという判断です。

 

また、国税庁の所得税質疑応答事例では、下記のようなものがあり、ここでは、別の金融機関への預け入れですら、外貨建取引には該当せず、為替差損益を認識する必要がないと回答されています。

外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い
(国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm

他の金融機関への預け入れであっても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入や払出は所得税法施行令第167条の6第2項に類するものと解される、との説明です。

 

ご質問の内容も、この質疑応答事例に照らせば、為替差損益を認識する必要がないように思われます。

しかし、別の金融機関への預け入れであれば、契約内容や金利も異なるでしょうし、実態に変化がないとまで言い切れるのかは疑問です。仮にこの質疑応答事例を一般化するのであれば、所得税法施行令第167条の6第2項の規定を改正し、明示すべきだと考えます。

 

なお、法人税法においても、外貨建て取引について、下記のような質疑応答事例が存在します。

輸入貿易手形借入金の期限延長
(国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/10/01.htm

こちらも、従前の借入れと同額、同一条件によるものであるため、手形の差換えによる単なる期限の延長があったにすぎない、つまり、実態に変化がないものとして取り扱うことが相当であるという判断です。こちらの取扱いは、所得税法施行令第167条の6第2項の取扱いと比較しても妥当性があると思われます。

 

このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ

注目タグ