外貨預金の換算時期|税務通信 READER’S CLUB
2024年9月11日
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所得税法57条3第1項において、外貨建取引を行った場合には、為替差損益を認識するとされています。しかし、所得税法施行令167条の6第2項では、下記の通り、引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、外貨建取引には該当しないこととされています。つまり、この場合には、為替差損益が認識されることはありません。この外貨建取引に該当しない要件としては、同一の金融機関に、同一の外国通貨で、預け入れることです。
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この規定の背景は、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりがないから、というものです。実態に変化がないという判断です。
また、国税庁の所得税質疑応答事例では、下記のようなものがあり、ここでは、別の金融機関への預け入れですら、外貨建取引には該当せず、為替差損益を認識する必要がないと回答されています。
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他の金融機関への預け入れであっても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入や払出は所得税法施行令第167条の6第2項に類するものと解される、との説明です。
ご質問の内容も、この質疑応答事例に照らせば、為替差損益を認識する必要がないように思われます。
しかし、別の金融機関への預け入れであれば、契約内容や金利も異なるでしょうし、実態に変化がないとまで言い切れるのかは疑問です。仮にこの質疑応答事例を一般化するのであれば、所得税法施行令第167条の6第2項の規定を改正し、明示すべきだと考えます。
なお、法人税法においても、外貨建て取引について、下記のような質疑応答事例が存在します。
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こちらも、従前の借入れと同額、同一条件によるものであるため、手形の差換えによる単なる期限の延長があったにすぎない、つまり、実態に変化がないものとして取り扱うことが相当であるという判断です。こちらの取扱いは、所得税法施行令第167条の6第2項の取扱いと比較しても妥当性があると思われます。