第一次相続が未分割の場合における第二次相続での小規模宅地等の特例の適用

2026年6月30日

 

 

 

 

第一次相続が未分割の場合における第二次相続での小規模宅地等の特例の適用


[質問]

一次相続では被相続人Aから相続人3 名(B・C・D)へ令和4 年に相続が発生しています。今回、令和7年においてBの二次相続が発生しました。

現在一次相続については分割協議中であり、二次相続の申告期限までに完了する予定はありません。また二次相続については、相続人がEのみのため死亡時に分割確定します。

BとEが居住している土地αをAが所有していたため、一次相続においては3 年以内の分割見込書を提出することで分割確定後、措法69 の4④より小規模宅地の特例が適用できると考えます。

そこで相談ですが、二次相続においては相続人が1名の場合、分割が確定している当初申告で3年以内の分割見込書を提出して一次相続の際に未分割だった土地について分割確定後、小規模宅地の特例は適用できる可能性があるのでしょうか。

仮に二次相続において相続人2名以上の場合は遺産分割協議が必要となるため、当初申告で未分割財産として3年以内の分割見込書を提出することで一次相続の際に未分割だった土地についても分割確定後、小規模宅地等の特例の適用ができるものと考えられます。

相続人が1名の場合、いかように考えるかご見解いただけると幸いです。

 

[回答]

1  相続財産と遺産分割について

相続は死亡によって開始し(民法882)、その効力は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896)とされ、相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する(民法898)とされています。

また、遺産の分割に関しては、共同相続人は被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる(民法907)とされています。このため、相続人が数人ある場合は、共同相続人は遺産の分割をすることができますが、相続人が1人である場合は、当該相続人が遺産の分割をする余地はなく、相続開始の時に被相続人の相続財産を承継するものと解されています。そして、遺産の分割の効力は、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる(民法909)とされていますので、共同相続人による遺産分割によって特定の財産を取得した相続人は、相続開始時に被相続人から直接その財産を取得したものとみなされます(遺産分割の遡及効)。

 

2  被相続人Bの相続財産について

ご照会の事例では、第一次相続(被相続人A)の相続人はB、C及びDであるところ、第二次相続(被相続人B)の発生により、第一次相続の遺産分割協議にBが参加することができないことから、Bの相続人であるEが第一次相続の遺産分割協議に参加することになります。

そうしますと、Aの相続に係るBの法定相続分の権利はその相続人であるEに引き継がれることになりますので、Aの相続に係る遺産分割協議がBの相続に係る相続税の申告期限までに確定していない場合には、Aの相続に係る未分割財産のうちBの法定相続分に係る財産は相続税の課税の対象になります。

この場合、Bの相続人は1人だけですので、EはAの相続に係る未分割財産のうちBの法定相続分を、Bの固有財産に加算して相続税の申告を行なうことになります。

 

3  遺産が未分割の場合の小規模宅地等の特例の適用

租税特別措置第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》(以下「小規模宅地等の特例」といいます。)は、遺産分割された宅地等に適用される規定であり、未分割の宅地等に適用されることはありませんが、特例対象宅地等で未分割である宅地等に関しては、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した申告書を提出した場合には、分割された日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求により小規模宅地等の特例の適用が受けられるとされています(措法69条の4④⑤⑥、措法規則23条の2⑧六)

小規模宅地等の特例は、原則として、相続税の申告期限から3年以内に分割されたものであることが要件とされています。この規定を厳密に解釈すれば、ご照会の事例では、Aの相続に係る遺産分割協議が行われる前に死亡しているBは遺産分割によって財産を取得することはできないことになりますが、これはBが遺産分割の確定により事業用宅地等又は居住用宅地等を取得した後に死亡した場合に比較して、著しく不公平な結果になります。

 

そこで、租税特別措置法通達69の4-25《共同相続人等が特例対象宅地等の分割前に死亡している場合》は、「相続又は遺贈により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者(「共同相続人等」という。)によって分割される前に、当該相続(「第一次相続」という。)に係る共同相続人等のうち、いずれかが死亡した場合において、第一次相続により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が、当該死亡した者の共同相続人等及び第一次相続に係る当該死亡した者以外の共同相続人等によって分割され、その分割により当該死亡した者の取得した特例対象宅地等として確定させたものがあるときは、措置法第69条の4第1項の規定の適用に当たっては、その特例対象宅地等は分割により当該死亡した者が取得したものとして取り扱うことができる。」とされています。

したがって、ご照会の事例では、Aの相続に係る遺産分割協議が行われ、土地αをBが取得することとなった場合には、その分割前に死亡しているBが取得したものとして、Aの相続税の更正の請求において小規模宅地等の特例を適用することができます。

 

次に、第二次相続(B)の相続税の申告等における土地αに係る小規模宅地等の特例の適用ですが、Aの相続に係る遺産分割協議がBの相続に係る相続税の申告期限までに確定していない場合には、この土地は誰が取得するか確定していませんので、Bの所有する土地として小規模宅地等の特例の適用することはできません。

したがって、Bの相続人が1人だけであっても、上記の未分割の場合と同様に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した申告書を提出しておく必要があると思いますが、念のため、この手続きが必要か否かについてBの相続税の納税地の所轄税務署に相談されてください。

その後、Aの相続に係る遺産分割協議が行われて、土地αを分割前に死亡しているBが取得することとなった場合には、その分割はAの相続開始の時に遡ってその効力が生じますので(民法第909条)、この土地はAの相続開始の時からBが所有していたことになります。このため、この土地がBの相続開始の直前において小規模宅地等の特例の要件を満たす場合には、Bの相続税の更正の請求において同特例を適用することができるものと考えます。

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

 

 

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