【インボイスの要件を満たさない場合どうしますか?】
消費税インボイス ~ 税務担当者の苦悩 第3回

2023年11月1日

 

 

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消費税インボイスと予算管理

税務担当者の皆さんは、これから消費税インボイスの要件を満たさない請求書等と対面するはずです。例えばタクシーの領収書は簡易インボイスですが、「税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率」の記載要件を満たさないものがあります。こういった領収書をインボイスとして処理するのかどうか、判断を迫られます。

そのほか

「登録番号がないけど、これは消費税インボイスのない取引として処理して良いの?」

「請求書等がありません。どうすれば良いですか?」

等の照会も想定されます。

 

現場では自分の責任で判断し、処理を進めることは基本しません。専門家である税務担当者のお墨付きがあれば、万一正しい処理でなかった場合でも免責されるからです。その判断を迫られる税務担当者も相当追い込まれます。最大の原因は余裕がないということです。

消費税インボイスだけがアサインされている人は稀で、ルーチン業務のほかインボイス以外の業務課題を抱えています。一つひとつ対応していたらインボイス対応だけで業務が終わってしまいます。

 

しかし、そこは頑張りどころです。制度開始後の混乱が収まるまでは歯を食いしばり、現場に寄り添うことが重要かと思います。そこで経営者、上司の方にお願いです。形式基準に沿った判断を仕方ないと割り切って良いかどうかの方針を決めてください。これだけでも税務担当者の負荷が相当軽減されます。

 

また、明らかにインボイスを交付してくれる取引先にも関わらず、受領した請求書等がインボイスの要件を満たさない場合にどうするか、という論点も悩ましいです。例えば、10月に届いた請求書等がインボイスの要件を満たしていなかったものの、11月に届いた請求書等はインボイスの要件を満たしているような場合です。販売側が9月分売上を10月に請求する場合はインボイス不要ですが、販売側が10月分の売上を10月に請求する場合はインボイスが必要です。継続的短期前払費用として処理するもののうち9月以前に支払ったものについては、インボイスは不要です。

 

判断を求められる税務担当者の苦悩はしばらく続きます。顧問税理士等の支援が得られるだけでもずいぶん違うはずです。同業他社と情報交換するのも良いと思います。決して独りで悩むことのないようにしてください。

 

 

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税理士金子 真一 氏

金子真一税理士事務所代表
合同会社ピナクル・コンサルティング代表

広島大学経済学部卒業後、大手信託銀行にて25年間決算・税務業務を担当。2019年に退職し、東京・目黒にて金子真一税理士事務所を開業。TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員。現在、企業へのインボイス制度対応支援、グループ通算制度のシステムへの入力支援や経理システムを中心とした経理体制構築支援等に取り組む。著書に「消費税インボイス導入へのサクセスロード」(税務研究会刊)がある。

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