第1回 電子帳簿保存法の押さえておきたいポイント!
~袖山喜久造税理士が問題を解決~
2023年10月11日
電子取引データの保存ができない相当な理由とは
令和3年度の電子帳保存法(以下、「電帳法」)の改正では、電子取引を行った場合の当該電子取引データの出力書面による保存方法が廃止されました。本改正前は、電子取引データを出力した書面を整理して保存し、調査官の求めに応じて提示や提出ができるように保存している場合には、電子取引データの保存は不要とされていましたが、令和6年1月1日以降に行う電子取引については、原則として電帳法の要件に従ったデータによる保存が必要となります。
令和5年度の電帳法改正では、電子取引データの保存にあたり、電帳法の法令要件に対応できない納税者の救済を行う目的で保存方法の見直しが行われ、出力書面による保存方法が追加されたほか、小規模事業者の検索機能の確保要件が見直しされています。
① 保存方法の見直し
新たな猶予措置として、電子取引データの保存において法令要件に従って保存ができない場合には、当面の間は税務調査時の提示や提出の求めに応じられるように電子取引データの出力書面と電子取引データの両方を保存することを認めることとしています。出力書面と共に保存する電子取引データの保存においては、保存ができないことについて相当な理由がある場合とない場合とでは法令対応範囲が違います。
なお、この保存方法の見直しについては、令和3年度改正前のようにその電子データの保存に代えてその出力書面のみを保存する対応は認められず、猶予措置の適用を受ける場合には、電子取引データ自体を保存するとともに、その電子取引データ及び出力書面について提示又は提出をすることができる必要があることが必要となるので注意が必要です。
② 相当な理由とは
相当な理由により電子取引データの保存に係る電帳法の法令に対応することができないような場合には、当該電子取引データを出力した書面、及び当該電子取引データを整然とした形式で明瞭な状態で保存し、調査官の求めに応じて提示又は提出ができるように保存している場合には、電帳法施行規則第4条第1項に規定されている電子取引データの保存要件は全て免除されます。
この、「相当な理由」とは、その電子取引データの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められることとされています。
ただし、システム等や社内のワークフローの整備が整っているにもかかわらず対応しないことや、電子取引データの保存において要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられないことになります。「法令対応したくない」、「面倒だから対応しない」などの経営者の信条に基づくような理由は相当な理由とはなりません。
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税理士袖山 喜久造 氏
SKJ総合税理士事務所 所長・税理士
SKJコンサルティング 代表社員
中央大学商学部会計学科卒業・平成元年国税専門官として東京国税局採用。国税庁調査課、東京国税局調査部において約15年間を大企業の法人税調査等を担当。平成24年7月東京国税局を退職。同年9月税理士登録。同11月千代田区神田淡路町にSKJ総合税理士事務所を開設。令和元年5月SKJコンサルティング合同会社を設立。電子帳簿保存法関連の電子化コンサルティングを行っている。