第2回 2024年1月以降の電子取引データの保存の5パターン
~袖山喜久造税理士が問題を解決~

2023年10月25日

 

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令和6年1月1日以降の電子取引データの保存に当たっては、電帳法施行規則第4条第1項の規定に従って保存することが義務付けされます。電帳法の法令要件全てに対応して電子取引データの保存ができている場合には、税務調査の際の調査官のデータの提示や提出の求め(ダウンロードの求め)に応じる必要はなく、調査官自らが保存されている電子取引データの抽出を行うことになります(図・令和5年度改正後の電子取引データの保存方法のパターン「1」)。

令和5年度改正では、電子取引データの保存方法について小規模事業者の場合の検索機能の免除、出力書面による保存方法、検索機能の一部免除などの改正も行われており、電子取引データの保存の検討を行う場合の保存方法は5パターンあります。今後、社内の電子取引データの保存方法の検討する際には、この5パターンの内、どの保存方法により電子取引データの保存を行うかを検討することになります。図の保存方法の「2」から「5」までの保存方法のパターンでデータを保存する場合には、税務調査の際の調査官のデータの提示や提出の求め(ダウンロードの求め)に応じる必要があります。

保存方法「2」のパターンは、日付情報、金額情報、取引先情報で分類して保存している場合には、当該電子取引データの検索方法(範囲指定や複合条件設定)の要件が免除されます。

保存方法「3」のパターンは、2事業年度前の売上高が5千万円以下の事業者が対象で、調査官から保存されている電子取引データの提示や提出の求めに応じることができる場合にはすべての検索機能の確保要件が免除されます。

保存方法「4」及び「5」のパターンは、新たな猶予措置として当該電子取引データと出力した書面の両方の保存を行う方法となります。出力書面と共に当該電子取引データを保存する場合には、電帳法施行規則第4条第1項の規定のうち、検索機能の確保要件が免除されることとなります(図「5」のパターン)。さらに、電帳法の法令対応が困難であることについて「相当な理由」(相当な理由については前回コラム参照)がある場合は、電帳法で規定される保存要件すべてが免除されます(図「4」のパターン)。

電子取引データの保存において出力書面とデータを保存する場合には「相当な理由」の有無により保存要件の対応範囲が異なることになります。

 

図・令和5年度改正後の電子取引データの保存方法のパターン
保存方法 対象事業者 相当な理由
有無
出力書面の保存
(整理保存原則)
ダウンロード
の求め対応
検索機能の
確保要件の対応
その他要件の対応
(措置・見読)
保存形態
1 全ての事業者 不要
(3項目・日付金額範囲指定・
2項目以上組み合わせ)
データのみ保存
2 全ての事業者 一部要
(日付・金額・取引先による分類)
3 売上高基準
(5千万円以下)
不要
4 全ての事業者 不要 不要 データと出力
書面を保存
5 全ての事業者 不要

 

令和5年度改正の電子取引データの保存方法の見直しでは、出力書面による保存も可能となりますが、同時に電子取引データの保存も合わせて必要となり、書面とデータをそれぞれ調査官の提示又は提出の求めに応じる必要があり、保存の手間が発生することにもなります。できる限り電帳法の法令対応を行って電子取引データの保存を行い、データが活用できる業務DX化の検討を行うことが重要となります。

 

 

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税理士袖山 喜久造 氏

SKJ総合税理士事務所 所長・税理士
SKJコンサルティング 代表社員

中央大学商学部会計学科卒業・平成元年国税専門官として東京国税局採用。国税庁調査課、東京国税局調査部において約15年間を大企業の法人税調査等を担当。平成24年7月東京国税局を退職。同年9月税理士登録。同11月千代田区神田淡路町にSKJ総合税理士事務所を開設。令和元年5月SKJコンサルティング合同会社を設立。電子帳簿保存法関連の電子化コンサルティングを行っている。

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