【同一労働同一賃金ガイドライン、10月1日に改正施行】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第41回

2026年5月19日
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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。
令和8年4月28日にいわゆるパートタイム労働法の施行規則等の改正が公布及び告示されました(令和8年厚生労働省令第87号、厚生労働省告示第201~203号)。これによってこれまでの「同一労働同一賃金ガイドライン」が大幅に改正されるほか、「雇入れ時の労働条件通知書」の明示事項も変更になります。施行は令和8年10月1日からとなり、企業としては対応すべき事項も多いため、早めに準備しておく必要があります。今回は、特に重要な変更点をできるだけ具体的にみていきます。
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「(雇入れ時)労働条件通知書」の記載事項の追加と説明の方法【パート・有期労働法 施行規則】
パートタイム・有期雇用労働者(以下パート・有期)を雇用した場合、各人毎に「労働条件通知書」(原則書面)にて、契約期間や就業の場所、従事すべき業務の内容に加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」などを明示しなければなりませんが、さらに、【待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる】旨の明示が新たに必要になります。
<労働条件通知書(追加例)>
| 賃金(参考) | ・時給( ○,○○○円) ・通勤手当(月 ○,○○○円)
・締日 末日 ・支払日 翌月○○日 |
| その他
今回追加 |
・次の窓口に対して通常の労働者*との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
_部署名( )担当者職名( )連絡先( ) |
| ・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口 _部署名( )担当者職名( )連絡先( ) |
*「通常の労働者」は自社の呼称(正社員等)に置き換えて記載することも可能。
<待遇の相違等に関する説明方法>
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパート・有期との間で待遇差がある場合、パート・有期から求めがあれば、「待遇差の内容や理由」「賃金や教育訓練、福利厚生施設、通常の労働者への転換、について考慮した事項」を説明しなければなりません。
| A(説明の方法)「資料を活用し、口頭により説明」または「説明すべき事項をすべて記載したわかりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかにより説明。 |
| B(説明希望がない場合での周知)パート・有期から説明の希望がない場合でも、契約更新時等に正社員とパート・有期との間の「待遇差の内容や理由」のわかりやすい資料交付や、「説明を求めることができる」ことを周知することが望ましい。 |
上記Aの「資料を活用し、口頭により説明」の場合でも資料交付することが望ましいとされています。つまり「就業規則の変更等、説明に使える資料を新たに作る必要がある」ということになります。
同一労働同一賃金のガイドラインが改正【告示】
正社員とパート・有期との間で不合理な待遇差(基本給や各種手当、福利厚生等)が発生しないように「同一労働同一賃金ガイドライン」が策定されていますが、今回、これまでの内容に加えて策定後の裁判結果等を踏まえ、以下の内容が追加されています(☆は今回の追加項目)。
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賞与 ☆退職手当 |
目的として「労務対価の後払い」「功労報償等」さまざまなものが含まれるが、これらの目的が妥当(該当)するにもかかわらず、「相違(職務内容、責任度合等)に応じた均衡のとれた内容(金額)を支給しない場合」⇒不合理 |
| ☆無事故手当 | 業務内容が同じ場合にはパート・有期も同一の手当を支給 |
| ☆家族手当 | 契約更新して継続的な勤務が見込まれる場合、パート・有期も同一の手当を支給 |
| ☆住宅手当 | 転居を伴う配置変更の有無に応じて支給される場合、パート・有期も同一の手当 |
| 福利厚生 | 待遇差は不合理 |
| 病気休職・休暇 | 契約更新して継続的な勤務が見込まれる場合、パート・有期も正社員と同様の病気休職・休暇期間中の給与を保障しなければならない |
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☆夏季冬季休暇 |
パート・有期も正社員と同様の休暇を付与 |
| ☆褒賞 | 「一定の期間勤続した者に付与するもの」については同様の褒賞を付与 |
留意すべき事項
上記のように多くの内容が追加されていますが、「不合理か否か」「待遇差の解消」については以下の留意すべき事項が厚生労働省のリーフレットに記載されています。
| ①「正社員の待遇を引き下げて待遇差を解消」する | 正社員をパート・有期の基準に引き下げるのではなく、パート・有期の改善を図るべき |
| ②定年再雇用後の有期雇用労働者 | 定年再雇用=直ちに不合理ではない、と認められるわけではない |
| ③いわゆる「正社員人材確保論」 | 「正社員人材の確保や定着を図る」という目的だけで直ちに不合理ではない、と当然に認められるわけではない |
| ④無期雇用フルタイム労働者 | パート・有期労働法の対象外だが、均衡の考慮にあたっては、ガイドラインの趣旨を考慮すべき |
雇用管理の改善等に関する措置の内容変更【告示「雇用管理指針」】
以下の点が改正されています。
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必要な職業訓練と教育訓練等受講機会の援助等に努める |
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評価、昇給のため正社員と共通の賃金・評価制度の設置が望ましい |
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就業規則の作成・変更時の過半数代表者の要件等の順守 |
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パート・有期が正社員と同じく利用できるよう要配慮 |
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上記<待遇の相違等に関する説明方法>に記載 |
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話し合いの機会確保、アンケート等での意見聴取等工夫の努力 |
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正社員転換制度や実績をパート・有期に明示努力+公表が望ましい |
まとめ
今回は同一労働同一賃金ガイドライン改正施行等を取りあげました。会社の対応手順としては①現状把握、②待遇差の見直し・是正、③説明書面、就業規則変更等の整備、④運用、フォローアップの順番になるのではと思われます。特に②待遇差の見直しについては、追加の支出が必要になるケースが多いと思われますので、そのあたりも踏まえて早めのシミュレーションをお勧め致します。
また、労働者の立場からも、待遇差に関する原則的な考え方や問題となる具体例が示されたことで交渉や相談がしやすくなることが考えられます。現在パートタイムや有期雇用で働いている方はもちろん、それ以外の働き方の方もしっかり内容を確認しておきましょう。
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特定社会保険労務士小野 純
一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。















