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第6 デジタルインボイス(電子インボイス)について

 

1.デジタルインボイスとは?Peppol(ペポル)とは?


これまで電子インボイスと呼ばれていたものが、デジタルインボイスという呼び方に変わってきていますが両方同じものです。

デジタルインボイスの仕組みの普及と定着の取組は、デジタル庁が、民間の会計・業務システムベンダーの団体である「デジタルインボイス推進協議会(EIPA)」と連携して進めています。

EIPAは、2020年7月、設立発起10社でスタートし、2022年10月現在、180社程度まで会員が拡大しています。

また、2021年9月にデジタル庁は、Peppol(ペポル)という電子インボイスの国際標準仕様を管理する国際団体(OpenPeppol)のメンバーとなり、そのPeppolをベースとした日本のデジタルインボイスの標準仕様の策定作業を本格化しています。Peppolとは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」に関する国際的な標準仕様で、非営利組織である「Open Peppol」(本部:ベルギー)という団体で管理されています。

現在、「JP PINT」という標準仕様を公開しており、仕様の公開により多くのシステムベンダーがデジタルインボイスに対応したアプリケーションを開発することが見込まれています。

 

 

2.デジタルインボイスの特徴とメリット


デジタルインボイスとは標準化され、構造化された電子版の請求書で、適格請求書発行事業者の登録番号、相手先の名称、品名、単価、数量、取引金額といったデータがセットされています。デジタルインボイスを受け取った事業者は、これらのデータを活用した、後工程である支払業務や記帳業務等のデジタル化が期待できます。

デジタルインボイスは、各ユーザーのペポルアクセスポイントを通して送受信を行う仕組みであり、お互いのユーザーが同じソフトウェアを導入する必要はありません。この仕組みは、お互いで異なるインターネットサービスプロバイダーを利用していても送受信可能な電子メールと同じです。さらに、デジタルインボイスは、その送信時に整合性チェックが行われる仕組みで、インボイスの記載項目が網羅されているデータのみが送受信されることとなります。このため、事業者は安心してこのデジタルインボイスを利用できるほか、メール等を活用した電子での請求書等の送受信・保存といった従来の仕組みと比べ、経理業務のさらなるデジタル化を図ることができます。

Peppolを利用することにより、電子文書の送信時に整合性チェックが実施されるため、Peppolで受信するインボイスのデータについては仕入税額控除の要件等に関する整合性が担保されたデータとなります。

 

 

デジタルインボイスのメリットをまとめると、以下のとおりです。
 
(発行側)
 ●紙での印刷、発送業務がなくなる
 ●紙のインボイスより管理が容易
 ●経理業務のプロセスを自動化→請求業務、入金消込の効率化を図る
 ●郵送費を削減できる

(受取側)
 ●財務会計システム等への入力業務がなくなる
 ●入力誤りのリスクがなくなる
 ●紙のインボイスより管理が容易
 ●経理業務のプロセスを自動化 → 支払業務の効率化を図る
 ●請求書データの自動取り込み、確認・分類、仕入税額控除の計算の自動化
 ●仕入税額控除の要件等に関する整合性チェック

 

 

3.デジタルインボイスと消費税インボイス制度


デジタルインボイスはバック業務の効率化を図る目的で世界的に導入されており、日本でも同様の視点から導入が検討されています。消費税インボイス制度と時期がほぼ重なっているため、デジタルインボイスと消費税インボイスが同じものと誤解する方もいますが、そうではありません。デジタルインボイスは、課税事業者も免税事業者も関係なく、全ての事業者が使うことが出来る請求書業務に関する共通インフラとして位置づけられています。

これまで請求書等は各事業者がそれぞれの仕様で発行していますが、デジタルインボイスという標準のフォーマットを使えば効率的にシステムで情報を管理することができます。標準のフォーマットですので、消費税インボイスとしての情報を入れておけば当然消費税インボイスとしても活用できます。

なお、具体的な活用事例やサービスについては、EIPAに加盟しているベンダーから順次明らかにされると思われます。

 

 

 

の情報は2022年10月時点の情報をもとに執筆しています(2023年5月一部改訂)。

 

執筆者:税理士 金子 真一


金子真一税理士事務所代表。合同会社ピナクル・コンサルティング代表。
28年勤めた信託銀行を50歳で卒業し、税理士として独立開業。企業の制度対応支援など制度と既存システムとの調整に強みを持つ。現在、消費税インボイス制度への対応支援や経理システムを中心とした仕組み作り支援のほか、企業の税務人材育成に取り組む。主な著書として、「時間がない! ?消費税インボイス導入へのサクセスロード」(税務研究会)。

 

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