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経理DXのメリット

経理DXとは?』では、経理DXとは何か、何がゴールになるのかといったことを説明しました。
今回は、経理DXのメリットを中心にお話をしたいと思います。

1.業務効率化


2022年の出生数が80万人を切るといったように、少子化の勢いが止まりません。少子化が進むということは、労働力人口が減ることを意味しており、経済成長の阻害要因になりえます。

経理の現場でも、少子化の影響は様々出てきています。働き手が減ることで、採用が容易ではなくなってきています。採用が容易でないと、仮に退職者が出た場合や定年退職となる人が生じた場合に、代替要員を充足させることが難しくなります。

また、経理部門のような管理部門は営業部門等の事業部門と比較して人員の補充がされにくい傾向があることについて留意が必要です。これは、売上等で直接会社に貢献することが少ない分、やや人員補充に消極的な経営者がいることも要因と考えられます。

このように労働力人口が減少している中で、経理部門を適切に回していくためには、業務プロセスを効率的にしていくこと、できるだけ時間をかけずに同じ成果を上げるようにしていくことが求められてきます。

そこで経理DXが威力を発揮することになります。経理DXを推し進めることによって得られるメリットの一つは業務効率化が進むことといえます。


具体的には、次のような変化を通じて業務効率化が進むことが多いです。

■今まで人が行っていた作業がコンピュータに置き換わる業務が増えることで人の関与を減らすことができます。経理DXが、不足する労働力を代替する機能を有していると言えます。

■属人的に行っていた業務に関して、システムを導入することで誰でも実施ができるようになり、この結果、業務のブラックボックス化がなくなり、業務の移管等もスムーズに実施することができるようになります。

■二重作業をしていた分が、自動化やデータの連携を通じてなくなり、業務の重複がなくなります。作業の重複がなくなることで、全体の作業時間が圧縮されることになるので、生産性向上に寄与することとなります。

業務の効率化が進むことで、少ない人員で経理部門を回すことができれば生産性の向上につながり、賃上げ等の余地も生じてきます。

2.様々なワークスタイル提供


経理DXの中で、クラウドシステムの利活用というシーンがありますが、これによって、在宅勤務等の様々なワークスタイルを提供することができるということもメリットの一つです。

クラウドシステムを活用する場合は、インターネット回線につながる状態であれば、パソコンにソフトウェアをインストールしなくともインターネット経由でサービスを利用することが可能です。

そのため、リモートワークなど、オフィスに出社しなくとも仕事ができる環境を提供しやすくなります。

もちろん、自社システムで運用している場合でも、環境を整えることで同様の対応は可能ですが、サーバの管理や維持等をする必要があり、セキュアな環境を提供してくれるクラウドシステムベンダーのサービスを活用する方が、コスト効果が高いという側面もあります。

いずれにしも、リモートワークができる環境が整うことで、リモートワークを希望する社員のニーズに応えることが可能ということはもちろん、地方に在住する人材を活用することも可能となります。さらに、介護や育児等で出社ができないけれど一定の時間であれば就業が可能な社員の活用をするといったことも可能となります。

経理DXは、労働力人口が減っている中での解決策の一つになっていると言えるでしょう。

3.ペーパーレス化


経理業務とは、従来は紙の書類でのやりとりが多い業務であったと言えるでしょう。

ただ、コロナ禍で在宅勤務を余儀なくされたことで、紙からの脱却を図ろうとした企業も多くありました。

請求書の発行というプロセスを考えても、紙を前提としていると、請求書発行のために出社して請求書を印刷する必要がありますし、印刷した請求書の控えの保管も必要となります。

この点、経理DXを進めて、請求書のペーパーレス化が実現できれば、リモートワークができることもメリットの一つになります。さらに、書類を紙で保管せずに、電子取引として保存をすることで紙を使わずに業務を進めることが可能となります。

また、電子帳簿保存法で電子取引データの保存が義務化されたこともあり、紙を使っての業務が前提となっていた経理業務に関して、ペーパーレス化の波が打ち寄せています。

さらに地球環境への影響も考慮して紙の印刷を減らす傾向もペーパーレス化に拍車をかけてきています。

現時点では、紙の書類をスキャンしてワークフローシステムや経費精算システム上保管するといった流れも多いですが、データのみで経理業務が進められるデジタライゼーションが浸透すると真の意味でペーパーレス化が実現できるといえるでしょう。

4.業務時間創出と成長・やりがいの創出


経理DXで業務効率化が進むということについて説明をしましたが、その結果、今まで対象業務に使っていた時間が短縮されることになります。

つまり、その分だけ他の業務に振り向けられる時間が創出されることになります。

経営者としては、経理部門のメンバーにはより経営に資するような業務をしてもらいたいという期待を寄せています。ただ、経理の現場としては、月次決算等の実績づくりに忙しいため、なかなか経営者の期待に応えることが難しいという実情もあるでしょう。

そこで、経理DXを進めた結果、業務時間を創出することができれば、今までできなかった経営者の期待する業務を実践することも可能となります。


具体的には、次のような業務があげられます。

●管理会計の設計・構築や集計された結果の分析
●ESG視点を加味したストーリー性のある中期経営計画策定
●投資計画に対する分析と意思決定のための検討資料作成
●買収案件での財務・税務デューデリジェンス作業
●新規ビジネス参入時のバックオフィス業務全般のグランドデザイン設計   等

これには、副次的な効果もあります。経理部門のメンバーには、日々のルーティーンワークに飽きてしまって、もっと創造的に働きたいと考えている人もいます。

やりがいや成長を求めているメンバーにとって、上記のような業務は創造的であると同時に付加価値の高い業務と言えますので、働く人々の満足度も高めることが可能となるのです。

5.意思決定の迅速化


経理DXを進めると日常業務が効率化されると説明しましたが、例えば、経理業務であれば月次決算の早期化がなされることもあります。

今まで手入力で処理をしていた伝票処理が、API連携等を活用して自動化が進められた結果、入力が早く完了することで決算早期化が実現するのです。

この結果、経理部門としては早期に締めた決算の内容を経営陣にフィードバックすることができます。当然、その結果を受けた経営者は意思決定を迅速に行うことができます。

迅速な意思決定の結果、企業を成長軌道に乗せることができるのであれば、経理DXは会社に大きな貢献をしているといえるでしょう。

執筆者:公認会計士/税理士 中尾 篤史


CSアカウンティング株式会社  代表取締役社長 
日本公認会計士協会 租税政策検討専門委員会 専門研究員

上場企業グループから中堅・中小企業まで幅広く経理・人事のアウトソーシング・コンサルティング業務に従事。
著書に『経理業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)活用のススメ~新しい経理部門が見えてくる50のポイント~』、『DX時代の経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、 『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、 『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、 『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、 『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、 『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、 『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、 『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。

≫HP:CSアカウンティング株式会社

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