第6回 管理会計は経営者の役に立ってこそ意味がある。経営者への伝え方のコツとは!?
~経営の判断に役立つための経営者とのコミニュケーション~

2021年4月1日

 

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経営者への報告やコミュニケーションにも気を使う。経営に役立つ情報の伝え方。

月次決算や年度の決算ができたら、経理の責任者は経営者に報告されますよね。また、会計事務所の先生も同様です。この経営者へ報告するときに、経営に役立つ情報をきちんと伝えるためのコツを説明していきたいと思います。

経理担当者や会計事務所の職員さんも、このコツを知っておくことで、上司や先生が何を求めているかを理解できます。そうすると、聞かれてそこから調べて答えるというスタンスから、あらかじめ求められているものを情報としてあげていくというスタンスにレベルアップできるでしょう。

 

経営者の気にする項目は、利益とお金。

経営者の一番関心があることと言えば、やはりお金、資金繰りということになろうかと思います。

この資金繰りと決算書上の利益との関係がすっきり腹落ちしないということが多くあります。売上が増えました、利益も増えました、税金も払わないといけない。なのに、税金を払う資金が足りないなんていうことがあります。

この数字の理由を説明する必要があるんですね。よくあるのが、売掛金が多くなっている、要は売上代金の回収が進んでいないから、利益は出ているけど資金は少ないということが考えられます。その場合、そのまま売掛金の増加ですよとだけ言ってしまうのでは芸がないんですね。

例えば、どこそこの得意先の入金が遅れていて普通は1か月分の売掛金が、2か月分たまってしまっているので売掛金が増えてしまっていますというところまで、説明したいです。そうすると、経営者は、あっ!あれのせいでお金が増えてないのか、というふうに分かってもらえます。そして、その得意先との入金時期の交渉や、今後のそことの取引の検討といった経営判断につながっていきます。

まさに、これは通訳、翻訳なんです。経営者の方の肌感覚と、目の前の決算書の数字を擦り合わせてあげること、というのがポイントになってきます。

 

担当者は木を見て森を見ずになりがち、ここだけは気にしてみましょう。

一方、経理担当者や会計事務所のスタッフが気にしておくと良いことは、皆さんがどうしても木を見て森を見ずになりがちということです。まずは、正確に処理をするということが大事になってきますので、森を見ろと言われてもちょっとハードルの高い要求かもしれません。ただ、経営者の役に立つ情報を提供する管理会計の元データは、日々の会計データ、つまり、皆さんの身近にある情報です。会社の規模によっては、お一人で全ての入出金の会計処理をされていることもあると思います。そうでなくても数名でやっているということが多いでしょう。実は、皆さんが一番状況を把握できるところにいるんです。

なので、正確な処理を心掛けるなかで、少し余裕がでてきたら、次のステップに進んでみましょう。例えば、次の表のようなことを時折気にしながら、日々の業務を進めていって頂くのから始めてみてください。これは、経営者が欲しい情報で、かつ、日常の経理業務の中で気づきやすいものをあげてあります。

多忙な実務では、利益か損失かも把握しないまま、会計処理をおわらせてしまっているケースもあるかもしれません。

 

経営者への報告で大事なのは3つの「使わせない」。

最後に経営者への報告で大事なポイントを3つ紹介します。経営者に経営判断に集中してもらうためのポイントと考えてください。

 

まずは、経営者に「時間を使わせない」。経営者は、スピードを重視します。一方、経理には丁寧な人が多く、検討した順番に細かい数字も正確に伝えるというスタイルを取る傾向があると感じます。その結果、気が短いことも多い経営者はイライラしてしまうこともあるようです。

限られた時間を有効に使うために経営者が気になることをテンポよく答えていけるようにしましょう。そして、やはり時間を使わせないために、なるべく相手が知りたいことを最優先して話しするように心がけましょう。

また、経営者からの質問を受けた場合ですが、正確性を大事にして後で回答しますと答えてしまいがちではないでしょうか。多少の正確性であれば犠牲にしても、その場で答え切ることを優先してください。その方が、経営者の役に立つというのが、実務では多くあります。経営者のニーズは、基本的には正確性よりはスピードにあることが大半といえます。

 

次の「使わせない」は「頭」です。数字だけを淡々と述べてしまうと、その意味合いを経営者自身の頭で考え始めてしまいます。口頭では、良い悪いという結論を重視して説明しましょう。数字が必要であれば、そのときに資料に目をやればよいのです。例えば、良い悪いの結論を書いたサマリーを冒頭に付けるというのも頭を使わせないための対処法の1つです。

また、口頭で報告する場合には、専門用語に注意しましょう。例えば、法定福利費という勘定科目名は、難しい印象を与え、すぐに理解できないことも多いです。このため、社会保険料と表現し、耳なじみのいいように伝えることも大事です。要は、通訳、翻訳をするということです。

私も、経理では当たり前の売掛金や買掛金も、社長と話す際には未収・未払というふうに言い換えることもしています。経営者の会計知識も一様ではないので、相手に合わせてムダに「頭」を使わせないようにしましょう。

 

そして、最後に「使わせない」のは、「気」です。これは頭を使わせないに近いのですが、さらにどうでもよい形式的なことに経営者の気を散らすことがないようにすることです。例えば、数字を間違えない、資料の流れは左上から右下へ、字は大きめにする、資料の配色はモノトーン(黒や白や灰色)を使用するなどの資料の形式面に関する注意を徹底して守るだけでも、かなり効果があると思います。

 

このように、経営者が求める情報を、簡潔に伝えることで、経営の判断に役立つ管理会計の実践につながっていきます。

 

 

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公認会計士・税理士林健太郎

税理士法人ベルダ代表社員
監査法人トーマツ(当時)、辻・本郷税理士法人を経て、2011年に地元で独立開業し、広く四国・関西エリアで活躍中。管理会計を活用したアドバイスを中小企業の経営者に提供するとともに、大学院でも管理会計を教えている。「中小企業での会計の活用」を目指す。趣味は地元サッカーチーム、徳島ヴォルティスの応援。徳島県鳴門市出身。

» 事務所HP:http://www.kh-kaikei.com/

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公認会計士梅澤真由美

管理会計ラボ㈱代表取締役
通称「管理会計のマドンナ」。監査法人トーマツ(当時)を経て、日本マクドナルド㈱とウォルト・ディズニー・ジャパン㈱にて、経理業務などに10年間従事。「経理のためのエクセル基本作法と活用戦略がわかる本」(税務研究会)など著書多数。「つくる会計から、つかう会計へ」がモットー。趣味は、オンラインヨガと「あつまれどうぶつの森」。静岡県沼津市出身。

» 会社HP:http://www.accountinglabo.com/

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