インボイス制度導入に伴うシステム変更
~最終チェック!消費税インボイス制度の実務

2023年1月19日

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インボイス制度導入に伴って、適格請求書発行事業者は、適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に対応したレジシステムや販売管理システムの変更が必要となります。また、会計システムについては、仕入税額控除の経過措置(適格請求書等以外の課税仕入れにつき80%控除)に対応したシステムに変更しなければなりません。

それぞれのシステム構築に相当の期間を要するため早期に対応策を講じる必要があります。具体的なシステム変更の内容については、以下のようなものが考えられます。

 

( 1 )レジシステム等の変更


適格請求書発行事業者が、小売業などの不特定多数の者に対する事業を行っている場合には、レジシステム等の変更が必要となりますが、具体的には以下のような項目となります。なお、適格請求書発行事業者であるタクシー事業者などのレシートの表示についても変更が必要となります。

① レシートや領収書の表示方法の変更

適格簡易請求書の記載事項(登録番号、税率ごとに区分して合計した対価の額〔税込価額又は税抜価額〕、税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率)を満たす変更が必要となります。

② 返品等の処理に関するシステム変更

適格返還請求書の記載事項(税率ごとに区分して合計した対価の返還等の額〔税込価額又は税抜価額〕など)の内容を満たす変更が必要となります。

③ 誤った処理をした場合のシステム変更

インボイス制度導入後は、誤った処理をした場合におけるレシート等の再交付が求められる可能性があり、システム上でその処理ができるかどうかを確認し、できなければシステムを変更する必要があります。

④ レシート情報の保存システムの構築

インボイス制度導入後においては、交付した適格請求書等の写しの保存が義務づけられますので、それに対応したシステムに変更する必要があります。

なお、複数の適格請求書の記載事項に係る一覧表や明細表、適格簡易請求書に係るレジのジャーナルなどの保存でも問題ありません。

⑤ 端数処理に関するシステム変更

インボイス制度導入後は、適格請求書等につき税率ごとに端数処理が1 回と定められていることから現行のシステムで不備がある場合には、そのシステム変更が必要になります。

⑥ レジシステムと連動しているシステムがある場合のシステムの変更

レジシステムと販売管理システムや会計システムが連動している場合には、その内容に不備がないようにシステムの変更を行う必要があります。

 

(注1 )新システムの導入時期
レジシステムの変更については、適格請求書発行事業者の登録日から稼働する必要がありますが、一般的にはインボイス制度の施行日(令和5 年10月1日)から稼働することとなります。ただし、税率等の変更があるわけではないので施行日前から導入したとしても支障はないものと考えられます。

(注2 )レジシステムの入力方法(操作方法)
レジシステムについては、変更後のシステムの入力方法やレシート・領収書の表示内容を確認しておく必要があります。返品処理や訂正があった場合のレジの入力方法やレシート等の表示などについても確認しておく必要があります。

 

 

( 2 )販売管理システム等の変更


適格請求書発行事業者が適格請求書等を発行する場合には、従来の区分記載請求書の記載内容から適格請求書等の記載内容へ変更されていることから請求書発行システムである販売管理システムの変更が必要となりますが、具体的には、以下のような項目が考えられます。

① 適格請求書等の記載方法の変更

適格請求書等の記載事項(登録番号、適用税率、税率ごとに区分して合計した対価の額〔税込価額又は税抜価額〕、税率ごとに区分した消費税額等など)の内容を満たす変更が必要となります。

② 納品書発行システムの変更

販売管理システムが、納品書発行システムとも連動していて、納品書と請求書を併せて適格請求書等の記載事項の内容を満たす場合には、その連動したシステムを変更しなければなりません。

③ 仕入明細書発行システムの変更

事業者によっては、得意先(販売先)とシステム連動していて、その販売先のシステムから発行される仕入明細書等をもって適格請求書等とする場合には、その仕入明細書等が適格請求書の記載事項の内容を満たすかどうか確認した上でシステムの変更をする必要があります。

④ 返品等の処理に関するシステム変更

売上の値引・返品・割戻しを行った場合には、適格返還請求書を発行しなければなりませんが、その適格返還請求書の記載事項(税率ごとに区分して合計した対価の返還等の額〔税込価額又は税抜価額〕など)の内容を満たす変更が必要となります。なお、適格請求書と適格返還請求書を同一の書類で発行する場合には、その記載内容の要件を満たす変更をする必要があります。

⑤ 誤った処理をした場合のシステム変更

インボイス制度導入後は、誤った処理をした場合における請求書等の再交付が求められることとなり、システム上でその処理ができるかどうかを確認し、できなければシステムを変更する必要があります。

⑥ 発行した適格請求書等の情報を保存するシステムの構築

インボイス制度導入後においては、交付した適格請求書等の写しの保存が義務づけられますので、それに対応したシステムに変更する必要があります。

なお、複数の適格請求書の記載事項に係る一覧表や明細表などの保存でも問題ありませんが、電子帳簿保存法の要件等も確認した上でシステムを構築しなければなりません。

⑦ 端数処理に関するシステム変更

インボイス制度導入後は、適格請求書等につき税率ごとに端数処理が1 回と定められていることから現行のシステムで不備がある場合には、そのシステムの変更を行う必要があります。

⑧ 会計システム等と連動している場合のシステム変更

販売管理システムと会計システムが連動している場合には、その内容に不備がないようにシステムの変更を行う必要があり、また、納品書や返還請求書のシステムなども含まれる場合には、それらも含めてシステムを変更する必要があります。

 

(注)入力上の注意点(操作方法)
販売管理システムの入力について、システム変更後の入力方法を確認し、表示方法が正しいかどうかをチェックしておく必要があります。また、値引・返品・割戻しの表示方法や誤りがあった場合の訂正方法なども確認しておく必要があります。

 

 

( 3 )会計システムの変更


インボイス制度導入後において、会計システムの場合には、仕入税額控除の経過措置に対応するシステムに変更する必要がありますが、具体的には、以下のような項目が考えられます。

① 経過措置に対応するためのシステムの変更

インボイス制度導入後において、適格請求書発行事業者以外の事業者から行った課税仕入れについては、原則として仕入税額控除の適用を受けることができませんが、施行日(令和5 年10月1 日)から令和8年9月30日までの3 年間については、経過措置規定として課税仕入れの80%相当額を仕入税額控除として適用を受けることができます。

この経過措置に対応するように会計システムを変更する必要がありますが、課税仕入れを全額控除できる課税仕入れと80%しか控除できない課税仕入れに区分しなければならないので注意が必要です(税抜経理の場合、仮払消費税等をいくらで計上するかも問題となります。)。

なお、インボイス制度導入後であっても課税売上高の会計処理については、今までと同様の計算方法となります。

② 仕入れに係る対価の返還等のシステム変更

適格請求書に係る課税仕入れとそれ以外の課税仕入れ(80%控除)に区分した上で、その仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等があった場合には、経過措置に係る課税仕入れに係る返還等は返還等対価の金額の80%で処理することとなり、それに対応したシステムに変更する必要があります。

なお、インボイス制度導入後であっても課税売上げに係る対価の返還等や貸倒れの処理についてはシステム等を変更する必要がありません。

③ 確定申告書及び添付書類(付表)の変更

インボイス制度導入後は、確定申告書等や付表が変更されることからそれらの帳票を会計システムから印刷する場合には、それらに対応したシステムの変更を行う必要があります。

④ 他のシステム等と連動している場合の会計システムの変更

会計システムと他のレジシステムや販売管理システムと連動している場合には、その内容に不備がでないようにシステム等の変更を行う必要があります。

 

(注)会計システムの入力方法
会計システムについては、システム変更が適正に処理されていることも重要となりますが、そのシステムの変更後の入力方法を経理担当者等が把握していることが一番重要となります。インボイス制度導入前は、その事業者が行う取引が課税取引かどうかという点に注意して入力すれば問題なかったのですが、インボイス制度導入以後は、その取引が適格請求書等の発行なのかそうでないのかを区分して入力しなければならず、入力担当者の入力ミスが生じる可能性が高くなります。

さらに、レシートや領収書にて食料品とそれ以外の仕入れが混在している場合には、そのレシートを軽減税率と標準税率の2 回に分けて入力する必要があるので注意しなければなりません。

市販の会計システムを利用する場合、勘定科目の設定や消費税率の設定を事前に行うこととなりますが、施行日以後については自動的に適格請求書に係る課税仕入れとして会計処理される可能性があり、経過措置が適用される取引の場合には、消費税のコード等を変更して入力を行うこととなります。

なお、経過措置を適用する場合には、帳簿等の摘要欄の記載事項として経過措置である旨の表示(『経過措置適用』、『※ 』、『80 %控除』など)をしなければならないので注意しなければなりません。

 

 

( 4 )システムの修繕費用(損金算入処理)


消費税率の引上げと軽減税率制度の導入の場合と同様に、インボイス制度導入に伴ってレジシステム、商品の受発注システム(販売管理システム)、会計システム等のプログラムの修正を行った場合に要した費用については、支払い時に全額修繕費(損金算入)として取り扱うことができます。

この取扱いは、各システムのプログラムの修正が、インボイス制度の実施に対してなされているものに限定されていることにつき、作業指図書等で明確にされている場合に適用できることとなっています。

なお、そのプログラムの修正が、ソフトウエアの機能の追加、機能の向上等に該当する場合には、その修正に要する費用は資本的支出として取り扱われることとなり、修繕費とはなりません。

インボイス制度に伴うプログラムの修正の中に、新たな機能の追加、機能の向上等に該当する部分が含まれている場合、その部分に関しては資本的支出として取り扱うことから、合理的に区分できるようにしておく必要があります。

 

 

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税理士島添 浩(しまぞえ ひろし)

2006年アースタックス税理士法人を設立。現在、一般企業の税務顧問業務のほか、企業再編や事業承継対策などの経営コンサルティング業務にも従事し、さらに豊富な実務経験を活かした税法実務セミナーの講師や執筆も数多くこなしている。また、1998年より会計税務の専門学校(TAC)にて税理士講座やFP講座の消費税法、所得税法、相続税法の講師も務めており、実務に役立つ実践的な講義を行っている。

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