【コラム】新リース会計基準に係る税務上の取り扱いについて
[あいわ税理士法人 コラム]
2025/10/16
【コラム】新リース会計基準に係る税務上の取り扱いについて
1.はじめに
「リースに関する会計基準」(以下「新リース会計基準」)が令和6 年9 月に公表され、令和9 年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用されることになります。新リース会計基準の特徴は、新たにリースの識別に関する定めが設けられ、これまでリースとして認識していなかった取引もオンバランスの対象になる可能性があること、そして、借手側の会計処理はファイナンス・リース、オペレーティング・リースの区分を廃止し、使用権資産とリース負債を計上する単一の会計モデルを採用することです。
新リース会計基準に対応する税務上の取扱いについては、令和7年税制改正大綱において、以下が示されました。
①オペレーティング・リースによりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合において、引き続き賃貸借取引として支払賃借料(債務の確定した部分の金額)を損金の額に算入することとされました。【借手側】
②令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約に係るリース資産の減価償却(リース期間定額法)については、そのリース資産の取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとされました。【借手側】
③新リース会計基準において割賦基準第2法(リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法)が認められなくなったことを踏まえ、法人税法上のリース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(延払基準の特例)は、廃止されました。【貸手側】
本稿では、上記①について、国税庁から令和7 年6 月30日に公表された「オペレーティング・リース取引に係る借手の申告調整について」を紹介いたします。
2.借手の申告調整(オペレーティング・リース)
資産の賃貸借取引がリースに該当し、かつ、オペレーティング・リースに該当する場合、会計と税務の差異として以下の申告調整が必要になります。
<前提>
・リース期間5 年
・リース開始日:X1 年4 月1 日(支払日は毎月末)
・月額リース料:1,000 千円
・決算日:3 月31 日
・借手の追加借入利子率:8%
・減価償却方法は定額法
①会計仕訳
▶リース開始日
(使用権資産)49,318 千円/(リース負債)49,318 千円
※借手の追加借入利子率を用いて借手のリース料総
額60,000 千円を現在価値に割り引いた金額
▶Ⅹ1 期の期中処理(12 回分の月額リース料合計)
(リース負債)8,356 千円/(現金預金)12,000 千円
(支払利息) 3,644 千円/
▶Ⅹ1 期の決算処理
(減価償却費)9,864 千円/(償却累計額)9,864 千円
※B/S 使用権資産 49,318 千円
減価償却累計額 9,864 千円
リース負債 40,962 千円
※P/L 当期純利益 △13,508 千円
②税務上の取扱い
▶リース開始日
処理なし
▶Ⅹ1 期の期中処理(12 回分の月額リース料合計)
(賃借料)12,000 千円/(現金預金)12,000 千円
▶Ⅹ1 期の決算処理
処理なし
③申告調整(会計と税務の差異の調整)
会計上は、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上し、減価償却費及び支払利息の費用計上を行うのに対し、税務上は、資産・負債とは認識せず、また、費用計上額に係る損金算入額は支払賃借料相当額となります。
3.フリーレントに係る借手の税務処理
フリーレント期間が定められた賃貸借契約における借手の賃料の損金算入時期については、税務上明確な規定が存在しませんでしたが、法人税基本通達の改正により(法人税基本通達12 の5-3-2)、令和7年4月1日以後に開始する事業年度からは、課税上弊害があるものを除き、賃料総額を賃借期間で按分した金額を賃借期間中の各事業年度において損金算入されるようになりました。
4.最後に
新リース会計基準の適用による会計への影響について既にシミュレーション等を行っている会社も多いと思われますが(税効果へ影響を与える可能性もあります)、次のステップとして、税務における申告調整及びその金額集計の方法の検討、さらに、外形標準課税への影響の確認も必要となります。早めの準備が大切といえます。
執筆者:豐海 航
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