【経営管理】「可視化」から始める業務改善サイクルと、改善を加速するシステム 導入・データ連携
[あいわ税理士法人 News Letter 2026.3]
2026/03/11
【経営管理】「可視化」から始める業務改善サイクルと、改善を加速するシステム 導入・データ連携
1.はじめに
「忙しいのに成果が上がらない」「担当者によってやり方が違う」「ミスや差戻しが減らない」などは、多くの組織で耳にする悩みです。こうした状況の背景には、業務が⾧年の運用の中で複雑化し、いつの間にか“例外が標準”になっている、あるいは、手作業や転記が連鎖して全体最適が崩れているといった構造的な問題が潜んでいます。
業務改善は、アイデアではなく、可視化→課題抽出→改善検討→改善実行→モニタリングという「型」に沿って進めることで再現性が高まります。
本ニュースレターでは、業務改善の基本サイクルの進め方と、改善実行段階で成果を左右するシステム導入およびシステム間データ連携の要点を、実務目線で整理します。
2.業務改善の進め方:5ステップで“確実に前へ”
業務改善には、以下に掲げる5ステップを念頭に確実に前に進めることが重要です。
(1) 可視化:現状(As-Is)を「事実」で描く
改善の出発点は、現場の実態を“共通言語”にすることです。ここでのゴールは、きれいな資料作りではなく、後工程で迷わないための「地図」を作ることです。現場業務を事実ベースで整理する観点として、以下が挙げられます。
- 開始条件・終了条件:何が起点で、何をもって完了か
- 工程と分岐:標準ルートと例外ルート、差戻しや再処理の流れ
- 役割と受け渡し:誰から誰へ、何が渡るか(部署間・人とシステム間)
- 使う情報と媒体:Excel/メール/紙/チャット/システムなど
- 量と時間:頻度、件数、所要時間、繁忙期、待ち時間
- 品質:ミス、差戻し、再入力、問い合わせ
おすすめは、業務フロー(工程・分岐)に加えて、帳票・データ項目一覧と手戻りポイントを並記するやり方であり、「どこで・何を・なぜ二重に扱っているか」が見えやすくなります。
(2) 課題抽出:ムダ・ムリ・ムラを「構造」として捉える
可視化ができたら、次は課題を「感覚」や「感想」ではなく「構造」で洗い出します。典型的な課題は、次の5つに集約できます。
- 待ち( 滞留):承認待ち、確認待ち、回答待ちで止まっている
- 重複(転記・二重入力):同じ情報を複数の場所へ入力している
- 手戻り( 差戻し):不備・ルール曖昧・例外処理で戻りが発生
- 属人化(ブラックボックス):判断基準が人に依存し代替不能
- 見える化不足(追えない仕事):進捗・期限・責任が追えず催促が増える
ここで重要なのは、課題を列挙して終わらせないことです。
「発生箇所(工程)×原因×影響(工数/品質/納期/リスク)」で整理し、可能な範囲で定量化します(例えば月○件、平均○分、差戻し率○%等)。
定量化は、改善優先度と投資判断のブレをなくする“芯”になります。
(3) 改善検討:打ち手は「標準化→簡素化→自動化」の順
改善案を考える際に陥りやすいのが、「ツールを入れれば良くなる」という発想です。実際には、業務の曖昧さを残したままシステム化すると、運用で“例外対応”が増え、かえって非効率になることがあります。
改善策は、以下の優先順位で検討します。
- 標準化:入力ルール、判断基準、例外条件、承認基準を決める
- 簡素化:不要な承認・不要な帳票・不要な確認を削る
- 自動化:残った作業のうちシステムやツール等で対応できる部分を自動化する
また、To-Be(あるべき姿)を描くときは、「誰が」「いつ」「どの情報を」「どのシステムで」扱うかを具体に落とし、例外時の流れ(承認外・差戻し・補正・エスカレーション)まで設計しておくと、実行フェーズが格段に楽になります。
(4) 改善実行:成功の分かれ目は「運用目線」の実行
改善を実行に移す段階では、計画と体制を「運用目線」で固めます。ポイントは以下のとおりです。
- 体制:業務責任者(業務要件)とIT 責任者(技術要件)を分け、決裁者を明確化
- 計画:スコープ、成果物、期限、移行方針、影響範囲を明文化
- テスト:標準だけでなく、例外ケース・繁忙ピーク・権限切替を必ず確認
- 教育:操作マニュアルや操作説明により、ケース別手順(例外時の動き)とよくある誤りを整備
- 切替:旧運用との並行期間、データ移行、問い合わせ窓口、障害時の戻し方を用意
「作ったのに使われない」「現場が混乱する」の多くは、機能不足よりも例外・権限・責任分界の設計不足が原因です。“導入”することがゴールなのではなく、“円滑な業務運用”を実現することがゴールである点を再度認識しましょう。
(5) モニタリング:KPI で効果とズレを「見続ける」
改善は導入して終わりではありません。成果が出ているか、運用が詰まっていないかを継続的に確認します。KPI は以下の二段構えで設定することが有効です。KPI は、改善の成果と運用の状況に分けて把握します。
- 成果KPI:処理時間、リードタイム、差戻し率、ミス率、コスト、顧客影響
- 運用KPI:未処理件数、承認滞留、入力遅延、例外件数、問合せ件数
数値の悪化は個人の努力不足ではなく、プロセスとルールの不整合のサインであることが多いものです。
ログや現場の声も合わせて確認し、改善サイクルを再投入して“定着”へつなげます。
3.改善実行でのシステム導入:導入を成功させる3つの視点
改善実行において、システム導入は強力な武器になります。一方で、選定や連携の設計を誤ると、二重入力や例外対応が増え、期待効果が目減りします。ここでは「業務に合ったシステム導入」と「導入の進め方」と「システム間のデータ連携」の勘所を整理します。
(1) 業務に合ったシステムの導入:比較表の前に「要件の言語化」
システム選定を成功させるコツは、先に“業務側の要件”を固めることです。特に次は必須です。
- 目的:何を減らし(工数/ミス/滞留)、何を増やすか(可視化/統制/スピード)
- 対象範囲:どの工程・どの部署・どの例外まで含めるか
- 必須要件:承認、権限、監査ログ、検索、帳票、通知など“譲れない条件”
- 運用要件:締め時間、月次ピーク、権限変更頻度、引継ぎのしやすさ
- 非機能要件:セキュリティ、可用性、バックアップ、性能、サポート体制
- データ要件:入力項目、マスタ、コード体系、履歴の持ち方、確定タイミング
この整理ができると、「パッケージシステムで足りるか」「カスタマイズが必要か」「ローコードで十分か」「スクラッチ開発が必要か」などの判断が現実的になります。原則は、業務を標準機能に寄せること(標準化)であり、差別化領域や統制上必須の部分だけを拡張する方が、保守性・コスト・将来拡張の面で安定します。
(2) 導入の進め方:PoC→パイロット→段階展開で手戻りを減らす
一括導入は、要件の見落としが“全社混乱”につながりやすい手法であるため、以下の項目を段階的に確かめながら進める手法のほうが安全です。
- Po C( 試行):標準・例外・高頻度の代表パターンで短期検証
- パイロット導入:部署や業務を限定し、運用上の詰まりを洗い出す
- 段階展開:ルールが固まりやすい領域から順にスコープを広げる
- 定着化:運用ルール、教育、問い合わせ、改善要望の受付と反映を仕組み化
PoC で見るべきは、機能の充実よりも現場が迷わず使えるか(入力負荷、画面遷移、例外時の動線、権限設計の現実性)です。ここが固まるほど本番切替が滑らかになります。
(3) システム間のデータ連携:二重入力をなくし、整合性を守る
改善効果を大きく左右するのが、システム間のデータ連携です。単体で便利でも、データが分断されると転記が残り、ミスや滞留が温存されます。連携設計のポイントは次の通りです。
- 連携の目的:二重入力削減/転記ミス削減/リアルタイム可視化/統制強化
- マスタの“正”を決める:取引先・商品・部門等、どのシステムを正とするか
- 共通キー設計:突合できるID、採番ルール、桁・形式の統一
- 粒度調整:明細でつなぐか、集計でつなぐか(運用負荷・性能に直結)
- タイミング設計:リアルタイム/バッチ/イベント駆動など
- 例外処理:連携失敗時の再送、手動補正、責任部署、監視と通知
- データ品質:入力チェック、必須項目、フォーマット統一、確定タイミング
連携方式としてはAPI、ファイル連携、iPaaS/ETL、RPA などがありますが「流行」ではなく、運用負荷と統制(監査性)を含めて持続可能か否かを選定の軸に置く必要があります。短期的な応急処置と、中⾧期の基盤化(正規のデータ経路づくり)を分けて設計すると、改善が積み上がりやすくなります。
4.終わりに
業務改善は、可視化で現状を把握し、課題を構造化し、打ち手を設計して実行し、KPI で効果を見続ける。
この基本サイクルを丁寧に回すほど、成果は再現可能になります。そして、システム導入は「ツールを入れること」ではなく、業務要件・運用要件・データ要件を揃え、連携まで含めて“円滑な業務運用”をつくることが本質です。
あいわ税理士法人グループでは、業務の可視化から課題整理、改善設計、システム導入・データ連携までを一貫して支援しています。会計・税務の専門性を基盤としつつ、業務プロセスや実務運用に踏み込んだ改善支援を行うことで、「導入して終わり」ではなく「現場に定着し、成果が出続ける仕組み」の構築を重視しています。業務改善やシステム導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
■本ニュースレターについて
本ニュースレターは、一般的な情報提供であり、具体的アドバイスではありません。個別の案件については個別の状況に応じて検討が必要になります。お問い合わせ等がありましたら、下記専門家まで遠慮なくご連絡ください。
経営管理 プラクティスグループ(business-admin@aiwa-tax.or.jp)
公認会計士 高橋 雄一
税理士 松田 雄一
公認会計士/税理士 新川 智也
公認会計士 川﨑 美雪
公認会計士 元安 美智
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