【若手ビジネスパーソンに向けて】
第1回 会計力を身につけるメリットとは?

~会計力とは、正しい会計知識を身につけ、会社の数字を客観的に読み取り、ビジネスに活かすことができる⼒のこと~

2020年6月15日

 

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この連載では、社会⼈に必要な「会計力」について、分かりやすくお伝えしていきます。

「会計力」とは何でしょう?

この連載では、「正しい会計知識を⾝につけ、会社の数字を客観的に読み取り、ビジネスに活かすことができる⼒」と定義付けたいと思います。

 

もしかしたら、先輩や上司から、

「会計はビジネスの共通言語だよ」

「社会人になったら決算書ぐらい読めるようになれよ」

などという言葉を聞かされた方も多いでのではないでしょうか。

 

しかしながら、

「経理部じゃないから私は関係ない」

「管理職になれば求められるけど、今はまだ必要ないな」

「なんとなく必要っぽいけど、今の仕事でどう活かすのかなぁ」

という後ろ向きな気持ちを抱く人が多いものです。

 

しかし、事実を直視していただきたいと思います。

 

ダイヤモンド社が実施したアンケート調査によると、実に83%もの企業が、自社の社員に対し決算書ぐらい読めるようになっておいて欲しい、と思っているようです。これは何も、幹部社員や管理職に限定した話ではありません。つまり、新入社員や若手社員も含め、全階層の社員に対して一定の「会計力」を企業側は期待しているのです。

にもかかわらず、「自分には関係ない」」「私はまだ若手だから」などと言って、「会計」から逃げていたのでは、会社から評価されない「お荷物社員」に成り下がってしまいます。

 

最近は、黒字であっても社員のリストラを行う企業が増えています。入社年次に関係なく、能力次第で給料に差を大きくつける企業も増えてます。これは一時のブームではなく、今後もこの傾向は続くことが予想されます。

年功序列と終身雇用は過去の遺物となり、会社にとって本当に必要な人材だけが生き残れる、残酷な世界があなたを待ち受けています。そのとき、引く手あまたの「優秀な社員」になっているか、あるいは、どの企業も拾ってくれない「使えない社員」になっているか、その分かれ目は「会計力」の有無にかかってているかもしれません。

 

このように時代が変化しているのは、(1)経済環境の変化と(2)株主との関係の変化という2つの理由があると考えられます。

 

(1)経済環境の変化

かつては、経済全体が右肩上がりで推移し、既存の事業をいかに伸ばすか、同業他社からシェアを奪うかなどが、ビジネスにおける主題でした。そのため、会計数値は経営層だけが見ていればよく、それ以外の多くの社員は、ただ目の前の仕事にガムシャラに取り組んでいればよかったのです。

しかし今、多くの企業が既存事業の延長線では限界が来ています。顧客のニーズが多様化・細分化し、各企業が正解の見えない状況で将来の方向性を模索しています。

例えば、新規事業を立ち上げたり、M&Aで事業領域を大胆に拡大したり、事業の選択と集中で既存事業から撤退したり、その手法は様々です。たとえどんな手法であっても、より高度な経営戦略の立案と実行が求められるようになったのは紛れもない事実です。

そのためには、ビジネスの最前線で戦う社員たちに、自分の頭で考え、判断・行動し、上層部に積極的にビジネス提案できる力が求められます。つまり会社全体の総合力が企業の成長には不可欠な時代になったのです。

ユニクロの柳井会長も「全員経営」という言葉をよく使いますが、まさに社員全員があたかも経営者のように、高い視座に立って業務を行う時代なのです。そのために不可欠なのが、会社の数値を見る力「会計力」なのです。

 

(2)株主との関係の変化

多くの日本企業は、銀行や取引先と株を持ち合う関係にありました。株を持っているということはその会社の株主ということです。本来、株主は株主総会に出席し、会社の重要な経営判断に意見し、議案に賛否を投じます。しかし、お互いがお互いの株主であるため、相手の経営には口出しをしないという暗黙のルールによって、自由に経営ができていました。その結果、経営に緊張感がなく、生ぬるい経営できてしまう環境だったのです。

ところが最近は、株の持ち合いの解消が進み、多くの外国人投資家が日本企業の株を購入するようになりました。海外の機関投資家に代表されるような「モノを言う株主」の出現で、経営に緊張感が生まれました。

赤字にならなければOK、倒産しなければOKという、かつての甘い考えはもう通用しません。高い成長性と収益性が株主から期待され、その期待に応えられないと株価が下がります。株価が低迷すると、敵対的買収の脅威にさらされ、経営陣も解任させられる恐れがあるのです。

もちろん、そうならないように経営陣は努力をしますが、いくら威勢よく社員を鼓舞しても、社員に当事者意識がなければ上滑りするだけです。そうなってしまっては、経営陣と従業員との間に溝が生まれ、経営はうまく回りません。やはり、全社員が一枚岩となって経営課題に取り組む姿勢が求められます。そのためには「会計」というツールを用いた共通認識が必要となり、少なくとも決算書が読めるぐらいの「会計力」が社員に求められるのです。

 

このように、「会計力」は身につけなければいけないという「必要性」が明確にあります。そう聞くと、「やらなきゃ」というネガティブな印象を持ってしまうかもしれません。しかし、それと同時に、「会計力」を持つと様々な恩恵が得られるのです。

ぜひポジティブに捉えてていただきたいので、以下、「会計力」を身につけるメリットを列挙します。

 

<「会計力」を身につけるメリット>

●取引先企業が、安定しているのか、収益力は高いのか、などを客観的に判断できる。
●日常業務において、経営者視点に立って業務を捉え、+αの提案や行動ができる。
●経済ニュースの背後にある企業の思惑、見えないトレンドも深読みできる。
●取引先や顧客企業、同業他社などの決算書を読み解くことで、業界全体を俯瞰できる。
●数字に基づいた論理的な説明やプレゼンができ、上司や顧客から信頼してもらえる。
●収益構造・財務構造を読み解くことで、ビジネスの「勝ちパターン」を見極められる。

 

もちろん、ここに列挙したのはあくまで一例で、これ以外にも様々なメリットはあるでしょう。

 

さらに、「会計力」は次の3つの特徴を持っています。

 

●ポータブル

仮に、あなたが今の部署から別の部署に異動になったとしても、同業他社に転職したとしても、全く異業種の世界に飛び込んだとしても、「会計力」は持ち運び可能(ポータブル)なスキルとして活かせます。なぜなら、「会計」が不要な会社はこの世に存在しないからです。どんな会社でも決算書の作成は義務付けられており、ビジネスの成果は会計数値に反映されます。

したがって、「会計力」はどんな職種になったとしても、どんな業種に行ったとしても、無駄になることはないのです。

 

●グローバル

会計上のルールや決算書の構成要素は、日本固有のものではなく、世界共通です。もちろん、国ごとに細かなルールの違いはありますが、基本的な考え方は一緒です。そのため、海外企業の決算を分析するときも「会計力」はそのまま活かせますし、外資系企業に転職したとしても、決してゼロから覚え直す必要はありません。

世界中の国の言語をすべてマスターするのはとてつもなく大変ですが、「会計」一つ覚えるだけで、数字でコミュニケーションができます。これが「会計はビジネスの共通言語」と言われる所以です。数字を使ってグローバルにコミュニケーションする術を身につければ、どんな国でも恐れる必要はないでしょう。

 

●エターナル

決算書作成に不可欠な複式簿記の仕組みは、西暦1400年代にイタリアで誕生したと言われています。複式簿記は人類最高の発明の一つと言われており、600年経った現代においても、会社の実態を表すツールとしてこれを超えるものは現れていません。恐らく、複式簿記が別の手法に取って変えられることは、まずないでしょう。

したがって、「会計力」はこの先何十年経っても、あなたが定年退職するまで(あるいは定年退職した後も)陳腐化することはありません。一度身につければ、永遠(エターナル)に使えるスキルとしてあなたの中に生き続けるはずです。

 

 

ビジネスの世界には、ビジネスのルールというものがあります。それが「会計」です。ルールを知らない者はカモにされ、ルールを熟知している者が勝利を手にする、そんな弱肉強食の世界なのです。

「会計力」はあなたがビジネスの世界でサバイブするための武器です。「会計力」を持たずに仕事をするのは、丸腰で戦場に行くようなものです。逆に「会計力」を持っていれば、優位にビジネスの世界を生き抜くことができるでしょう。

ぜひ、この連載で、社会人として必要な「会計力」を身につけて、優位な立場で社会人生活を送っていただきたいと思います。

 

 

 

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公認会計士川⼝宏之

「監査法⼈」「証券会社」「ベンチャー企業」「会計コンサル」という、4つの
視点で「会計」に携わった経験を持つ、数少ない公認会計⼠。これらの経験を
もとに、「会計」という⼀⾒とっつきにくいテーマを、図解で分かりやすく説
明することに定評がある。
主な著書に、「決算書を読む技術」(かんき出版)、「いちばんやさしい会計
の教本」(インプレス)など

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