青色事業専従者給与で否認されないために
<3分で読める税金の話>

2020年2月20日

 

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青色事業者は家族に給料を支払うことで所得分散ができ節税につながりますが、要件を満たしていない場合、調査で否認されることがあります。青色事業者給与に関する届出書に記入した金額を超えて支払わないことのほか、どのような部分に注意すべきでしょうか。

 

■青色事業専従者とは

青色事業専従者は青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であり、その年の12月31日現在で15歳以上であること、その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事している必要があります。

 

■「事業に専ら従事する」とは

例えば、青色事業者が税理士事務所を営んでおり、子どもが青色事業専従者として事業を手伝っていましたが、子どもが税理士を目指すといって6月より事業を手伝わなくなってしまった場合、その年を通じて6月を超えて従事していませんので1月から5月まで支払った青色事業専従者給与の必要経費への算入は認められないことになります。

子どもが事業を手伝っていたところ、他の会社に就職する、結婚して生計が一でなくなる、病気で入院するなどで6月から事業を手伝うことができなくなってしまった場合などは、1月から5月まで支払った青色事業専従者給与は必要経費に算入が認められます。

資格試験を目指すといったような、青色事業者の事業に従事することが可能であるのに従事しない場合は必要経費に算入はできませんが、従事することができなくなってしまった場合は必要経費に算入できると考えていただければよいと思います。

 

■入院している期間の給与は認められない

青色事業専従者が病気などで入院して事業に従事できなかった場合、その期間の青色事業専従者給与は必要経費への算入は認められません。支払った場合、贈与となります。

 

■青色事業専従者を辞めるにあたって退職金は払えるのか

青色事業専従者「給与」ですから、給与所得であり、退職所得とは所得の種類が違ってしまいますので退職金を支払うことはできません。しかしながら、中小企業退職金共済に加入することで月々掛金を支払い(青色事業者の必要経費に算入できます)、退職時に共済から退職金を支払うことは可能です。ただし、青色事業専従者が小規模企業共済に加入していないことが条件となります。

 

■青色事業専従者給与の未払いは認められない

所得税法第57条第1項で「従事するものが……給与の支払を受けた場合には……その居住者の……必要経費に算入し」とありますので、実際に支払ったもののみが認められ、未払いは基本的に認められません。ただし、青色事業者の資金繰りなどの理由で月末払いが翌月になった場合など、短期的なものであれば認められます。

 

■青色事業者が複数の事業を営んでいる場合

青色事業者が事業所得と不動産所得を営んでいて、青色事業専従者がどちらの事業にも従事している場合、それぞれの事業に従事した分量が明らかであればその従事した分量に応じて配分した金額をそれぞれの所得の必要経費とします。事業に従事した分量が明らかでない場合は、それぞれの事業に均等に従事したものとみなして計算した金額となります。

 

■青色事業専従者給与はいくらまで認められるのか

所得税法第57条第1項には「……その労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況……に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは……必要経費に算入し……(太線筆者)」とあります。

裁決例、判例をみても実際に事業に従事しているかどうか、どの程度従事していたのか、給与支払額は他の使用人や同業他社と比較して高額過ぎないかをチェックされています。他に使用人がいる場合には、専従者と使用人の従事した時間、仕事内容を記録し、どのような類似点、相違点があるのかを明確にする、他に使用人がいない場合には同業他社での給与額を転職サイトなどで調査して記録に残し、これらをベースに青色事業専従者給与の支払額を決定するとよいでしょう。

青色事業専従者給与は、給与を支払うだけの簡単な節税方法と思われている方も多いと思いますが、簡単で身内に対する給与であるがゆえ高額になることも多く、税務調査では必ずチェックされる項目となってきます。第三者の目で適正かどうかを判断することが大切でしょう。

 

 

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税理士高山 弥生

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