なぜインボイスは導入されるの?今すぐ登録しなきゃダメ?
~猫でもわかるインボイス制度②
<3分で読める税金の話>
2022年12月1日
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■なぜ政府はインボイス制度を導入しようとしているのか
現状、事業者はインボイス(適格請求書)ではなく「区分記載請求書」を発行しています。区分記載請求書とは、あと一歩でインボイスといえるもので、インボイスに記載事項はかなり似ているのですが、決定的に違うのが、区分記載請求書は記載内容に不足があった場合、「軽減税率対象品目である旨」と「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」について、受取り側での追記が可能だということです。
現在の区分記載請求書では、飲食店で飲食し(10%)、お土産を購入した(食品8%)場合、飲食店側が税率ごとに記載していなかったら、支払った側は支払総額のうち、いくらが10%でいくらが8%かわからないため正確な処理ができません。記載不備があったら再発行をしなくてはならない、しっかり税率を伝える「インボイス(適格請求書)」に制度変更をする必要があるのです。国税庁がインボイスを「適格請求書(インボイス)とは、 売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの」と説明しているのはこのためです。
現在、課税売上高1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務がありませんが、請求書に消費税額を記載することを違法とされていません。免税事業者は請求書に書いた消費税分は納税義務がありませんから、消費税として納税するのではなく免税事業者の「売上」となり、これが「益税」として批判されています。国としては、今後税率を引き上げたいと考えていますので、これ以上税率が高い状態での「益税」はさすがに見過ごせなくなってきているのではないかと思われます。
また、免税事業者と取引をしている課税事業者は、免税事業者への支払いであるにもかかわらず、前回の例で説明しますと88,000円であれば8,000円を消費税分として処理してよいことになっています。支払いを受けた免税事業者は消費税を納税をしていませんので、これは納税なき控除であり、本来の消費税の理想の姿ではないのです。
■経過措置
このようにインボイスを導入する理由はありますが、導入すると多大な影響があるのは国としても理解しています。そこで、激変緩和措置として経過措置が設けられています。令和5年10月から令和8年9月までの間、免税事業者に対して支払った88,000円の8,000円のうち、80%分、消費税を支払ったとして処理できることになっています。つまり、6,400円が消費税とみなされるのです。令和8年10月から令和11年9月までは50%となります。
この経過措置があるため、課税事業者としても、インボイスがもらえないからといってすぐに免税事業者と取引を打ち切るということは少ないのではないでしょうか。免税事業者は、すぐに税務署へインボイス登録申請をして課税事業者になるのではなく、この経過措置期間中に、取引先に確認することも含め自身が登録すべきかどうかをしっかり見極めてもよいかもしれません。
■登録をチャンスととらえる向きも
免税事業者の中には、取引先から求められたわけではないけれども、すでに登録申請を終え、令和5年10月のインボイス制度スタートから課税事業者を選択した事業者もいます。基本的には課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者であり、その場合、経過措置の間は免税事業者を維持するであろうとの予測のもと、経過措置期間中からインボイス登録済みとすることで、課税売上高1,000万円を超えている「売れっ子」アピールになるとみているのです。新しい制度を自身の戦略のひとつとする、ポジティブでユニークな考え方だと思います。
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