副業収入は帳簿があれば必ず事業所得!?
<3分で読める税金の話>

2022年10月25日

 

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国税庁が2022年8月に行った、副業収入が300万円以下の場合は事業所得ではなく雑所得とする「所得税法基本通達の改正案に関する意見の公募」(パブリックコメント)には1カ月間で7,059件もの意見が寄せられ、関心の高さを物語っていました。

 

 

■事業所得のメリット

これまで、会社員の副業は事業所得か雑所得かは明確な基準がなかったため、事業所得によるメリットを享受したい納税者側と、過度な節税を封じたい当局側で度々問題となってきました。

 

【副業が事業所得に該当する場合のメリット】

  • 損益通算(給与所得など黒字の所得と事業所得など赤字の所得を差引可能)

 

【事業所得に該当し青色申告承認申請書の提出により得られるメリット】

  • 青色申告特別控除(記帳、電子申告など要件を満たすと所得から65万円控除可能)
  • 損失の繰越控除(損益通算後の赤字を翌年以降3年繰越し可能)
  • 青色事業専従者給与(家族への給与が必要経費となる)
  • 30万円未満の減価償却資産の特例(30万円未満は事業共用年の必要経費に算入可能)

 

 

■事業所得かどうかは帳簿の有無で判断

8月に国税庁が公表した改正案「副業収入が300万円以下の場合は事業所得ではなく雑所得」という線引きに対し、事業所得と雑所得の判断が明確になるとの意見があった一方で、「どのような所得が主たる所得に該当するか不明」「300万円という基準の根拠が不明」などといった反対意見も多くみられました。

国税庁は10月7日にパブリックコメントの結果についての書面と同時に、その結果を踏まえて内容を見直した通達を公表しました。今回の通達改正では、「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」ことを原則としつつ、収入金額300万円にはこだわらず帳簿があるかどうかで事業所得かどうかを判定するとしています。

 

 

■損益通算は話が別

ここまでを読んで、収入金額にこだわらず事業所得でよい、損益通算できると判断するのは早計です。「「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)(令和4年10月7日 課個2-21ほか)」のページの下部に掲載されている「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」には次のような記載があります(35-2の【解説】)。

 

(注) その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。

① その所得の収入金額が僅少と認められる場合

例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。

※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。

② その所得を得る活動に営利性が認められない場合

その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます

※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

 

 

■赤字申告は注意

やはり、今までの判例や裁決事例となんら変わることなく、損益通算をしたいがための副業は認められないということになります。毎年赤字で給与所得の源泉所得税を取り戻す申告をしている場合は注意する必要があるといえるでしょう。

 

 

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