【完全初心者向け】
第5回 利益の意味と違いをシンプルに解説

~利益の意味は?どの利益をチェックすればいいの?~

2020年8月5日

 

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決算書を見ると、営業利益とか経常利益とかいろんな利益があります。どれも似たような意味に聞こえますが、それぞれ意味や内容が違います。今回は、それぞれの「利益の意味」とともに、「どの利益をチェックしたらいいのか?」をわかりやすく簡単に解説します。

 

 

なお、イメージをつかみやすくするために、ググって上場会社の決算書を眺めながら読んで下さい。ググり方は「好きな会社名 有価証券報告書」と検索すれば、どの会社のものでもOKです。

 

 

1.利益の意味

決算書には「連結財務諸表」と「(単体の)財務諸表」があります。連結と単体では利益の名前に少し違いがありますが、難しくなるので今回は単体の財務諸表を前提に解説します。

 

(1) 売上総利益

モノを作ったり仕入れたりするのにかかったコストと、売値の差額のことです。例えば、コスト100円をかけて製品を作ってそれが120円で売れたら「売上総利益」は20円で、コストのことを「売上原価」といいます。つまり、日常生活で「利益はいくら?」と聞かれたときにパッと思い浮かぶ利益は「売上総利益」ということです。

実際のビジネスの世界では売上総利益は、「粗利」(あらり)とも言われたりします。例えばどこかのお店へ行って「売上総利益はいくらですか?」と聞くと意味を聞き返されるかもしれませんが、「粗利はいくら?」と聞くと、(教えてもらえるかは別として)すぐに意味を理解してもらえます。

ちなみに、会社で発生するコストは様々です。例えば、本社ビルの電気代をはじめ、経理部門の人たちの給料や、工場で製品を実際に作っている人の賃金などなど。このうち、製品を製造するのに直接かかったコストだけを、売上原価として扱います。ですから、本社ビルの電気代だったり経理部門の人たちの給料は、製品を製造するのに直接かかったコストではないので、売上原価には含めません。

 

(2) 営業利益

ビジネスの世界で一番重要視される利益です。営業利益は、売上総利益からビジネスをするには欠かせないコストだけど売上原価には含まれなかったコスト(=「販売管理費」といいます)をマイナスして計算した利益のことをいいます。販売管理費には、先ほど出てきた本社ビルの電気代だったり、経理部門の人たちの給料などが含まれます。販売管理費も会社のビジネスをしていく上で欠かせないコストですが、製品に直接紐づけられないので売上原価には含めません。

会社に入社すると口すっぱく言われるのは「営業利益を増やせ!」ですし、銀行からお金を借りるときにも一番重要視されるのは営業利益です。特に銀行が営業利益を重視するのは、営業利益がマイナスということは事業を続ければ続けるほど、会社からお金が消えていくということを意味するからです。会社を動かすのに利益が出ていないのなら、お金を貸しても返してもらえない可能性が高いと銀行は考えています。

 

(3) 経常利益

多くの会社は銀行からお金を借りていて、銀行に対して利息を払っています。また、株を売ったら儲かったり損をすることもあります。このような、銀行や投資がらみの儲けや損を営業利益にプラスマイナスして計算された利益が経常利益です。営業利益には一歩譲りますが、ビジネスの世界では営業利益に次いで重要視される利益です。

 

(4) 税引前当期純利益

会社で発生するコストや稼ぎは、毎年ある程度定期的に発生するものもあります。例えば銀行への利息支払いはお金を借りている限り発生するコストですし、売上原価もモノを売っている限りは必ず発生するコストです。同じように、他社にお金を貸していたら、ある程度の利息を貸し続けている限り受け取ります。一方で、会社の将来見通しが悪化したり、ある固定資産の価値が大きく落ちた時に発生する損である「減損損失」は、見通しが悪くなったり固定資産を使わないという状況にならない限りは発生しない損です。

このような臨時的にしか発生しない損や儲けのことを特別損失とか特別利益といい、経常利益に特別利益や特別損失をプラスマイナスして計算された利益を「税引前当期純利益」といいます。「税引前」という用語が気になりますが、これは「会社の儲けに課税される税金をマイナスする前の利益」という意味です。個人に限らず会社も儲かったら税金を払うことになっていて、この税金のことを「法人税」といいます。細かくいうともう少しいろんな税金があるのですが、とりあえず入門・初心者のときは、「法人税」だけ覚えてもらえれば大丈夫です。

 

(5) 当期純利益

税引前当期純利益から法人税をマイナスして計算した利益のことを「当期純利益」といいます。法人税を計算するときには、「税効果会計」という難しい会計ルールを使って計算した「法人税等調整額」という項目も検討しないといけませんが、会計の勉強をはじめたばかりのタイミングでは税効果会計は勉強しなくてOKです。

 

 

2.どの利益をチェックすればいいの?

(1) 営業利益と当期純利益

営業利益と当期純利益の2つをチェックして下さい。営業利益がマイナスになっているということは、何らかのテコ入れをしないと会社のビジネスがうまくいっていない証拠です。また、いろんなコストや稼ぎをプラスマイナスした結果とはいえ、当期純利益も見逃せない利益です。なぜなら、最終的に利益が残らないと会社からお金がどんどんなくなっていくからです。「ビジネスのそのものの利益(=営業利益)がプラスで、しかも最終的な利益(=当期純利益)もプラス」これが理想的な会社の姿です。

 

(2) 他の会社と比較するときは?

他の会社の決算書と比べながら決算書を見るときには金額そのもので比較をするのもいいですが、パーセントなどの比率を使う方がより良い分析ができます。金額だけで比較をすると、規模の大きい会社の方が優秀に見えてしまうからです。例えば、同じ利益100円を稼いでいる会社でも、コストを10円しかかけていない会社と100,000円かけている会社では、「利益を稼ぐ力」はかなり差があります。たとえ利益の金額が少なくても、少ないコストで大きな利益を稼いでいるのなら、その会社の方がより優秀ということです。

 

 

第5回はここまでです。難しいイメージのある会計が、少しでも「なるほど」と思ってもらえたならうれしいです。

 

 

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■【完全初心者向け】利益の意味と違いをシンプルに解説 (7:08)

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公認会計士・税理士内田正剛

うちだ会計事務所代表。
週刊「経営財務」での連載のほか、Twitter(@uchida016)やYouTubeを通じて、「難しい会計」を「わかりやすく簡単に」解説した情報を発信中。主な著書に「売上・収益の会計ルール入門」、「不正会計対応はこうする・こうなる」、「赤字決算の原因と対策がわかる本」(いずれも中央経済社)など。

» Twitter https://twitter.com/uchida016
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