【要確認】
第10回 原価計算の必須知識はこれだけです

~原価計算とは?計算の仕方は?~

2021年1月10日

 

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「簿記や会計のことをググってみたら原価計算っていうのが出てきたけど、原価計算って何?」そんな疑問にお答えします。簡単にいうと「モノを作るのにかかったコストを計算する方法」ということです。今回は、原価計算の必須知識を解説します。

 

1.原価の計算?

コストのことを「原価」といいます。ですから「売上原価」は、「売った製品・商品のコスト」のことをいいます。例えば製品を作るのに80円かかって100円で売れた場合は、売上原価は80円ということです。「なんだ、簡単じゃん!」と思うかもしれませんが、実務の世界ではコストがいくらかはっきりわからないこともあります。例えば、様々な材料を異なる単価でたくさん購入して30%くらい使って製品を作った場合、コストはいくらかと聞かれると「えーっと・・・」となりますよね。こんな感じで、ビジネスは複雑に動いています。

 

 

 

2.計算の仕方にはいくつか方法がある

はっきりわからないから計算しないというわけにはいかないので、原価計算では仮定を置いた上で計算していきます。そこで、実務の世界で主に採用されている原価計算の方法と簡単な特徴を紹介します。

 

(1) 個別原価計算

1つ1つ特徴的な製品の原価を計算するときに使う計算方法です。A製品を10個みたいな感じではなく、A製品もB製品も1個ずつ作るような場面です。1個ずつ製品の原価を計算するので一番正確な計算方法ですが、例えば使った材料とか工場スタッフの方が製品を作るのに何時間かけたとか、どの機械を何時間使ったなどの情報をしっかり把握集計しておく必要があります。つまり、正確だけど手間がかかる計算方法ということです。

 

 

(2) 総合原価計算

毎月たくさんの製品を製造するので、個別原価計算は現実的にできない場合に使う計算方法です。「1年間の最初(=「期首」といいます)に材料が10kgあって110kg買って1年間の最後(=「期末」といいます)に20kg残っているから、材料は90kg使った」とか「期末に製品が未完成の状態で残っていたら、○%できあがっているから加工代金も○%かかっている」といった、ある程度間接的な計算をしながらコストを計算する方法です。1つ1つの製品に個別原価計算のような厳密性の高い計算が求められていない場合に使います。

 

 

(3) 標準原価計算

「製品Aだったら材料は○kg必要で、工員さんは2時間の作業でできるはず」みたいな感じで、製品を作るのに普通だったら発生する材料や工数と予想されるコスト(=理論上予想されるコスト)をあらかじめ計算することがあります。この「理論上予想されるコスト」のことを標準原価といい、実際に製品Aが完成したら、実際にかかった原価と標準原価を比較します。そうすることで、実際に発生した原価は、何が不効率だったから理論上予想される原価よりも多く発生してしまったのかなどの原因を検討することに使えます。

このような作業を「差異分析」といいます。但し、「理論上予想されるコスト」が実態とあまりにもかけ離れすぎていると、差異分析の意味が乏しくなってしまう一方で、あまり手間をかけて計算すると余分なコストが発生してしまいます。ですから、「理論上予想されるコスト」をどれくらいの水準まで作り込むかは会社の考え方次第です。

 

 

 

3.原価計算の基本的な仕組み

製品を作るのに発生するコストを3つ(直接材料費・直接労務費・製造間接費)に分けて、製品に紐づけていきます。労務費は要するに工員さんへの賃金のことです。「直接とか間接って何だ?」と気になりますが、これは製品に紐づけられるものが直接で、紐付けられないものが間接です。

例えば、材料費や労務費だったら製品Aに使ったとか製品Bに使ったという感じで、「何に使ったのか?」を紐づけることができます。ですから「直接紐づけられる材料費/労務費」という意味で直接材料費とか直接労務費という呼び方をします。一方の工場の固定資産税のような場合、製品を作るためだけに固定資産税を払っているわけではないので、製品へ直接紐づけることはできません。ですから、このようなコストは製造間接費として工夫しながら製品へ紐づけていきます。

 

 

 

4.強制ルールではない

原価計算の方法は「原価計算基準」という文章に定められていますが、実は強制規定ではありません。少しだけ基準の文章を見ると「個々の企業の原価計算手続を画一に規定するものではなく・・・基本的なわくを明らかにしたもの」と書かれていて、「これはルールだから守らなきゃダメ」とは書かれていないのです。だからといって多くの会社が風変わりな原価計算をしているかというとそういうわけではなく、結局は原価計算基準で紹介されている計算方法に近いものを採用しています。

 

 

5.原価計算は何に使うの?

ここからは、原価計算は一体何に使うのかをみていきます。

 

(1) 値段を決める

会社は儲けないといけませんが、儲けは作った費用よりも高い値段で売れないと発生しません。値段を決める前提として「作るのにかかったコスト」を計算しておき、そこに他のライバル会社の値段もチェックしつつ「ほしい利益」をプラスして販売価格を決めます。原価計算は「コストの計算」なのでコストにばかり目が向きがちですが、実は値段を決めるのにも役立っています。

 

 

(2) 利益の予測

販売価格と製品を作るのに発生するコストがわかれば、「製品を○個売ったら利益はいくらになる?」という疑問にも答えることができます。会社は行き当たりばったりで行動しているわけではなく、「製品が○個売れた場合」とか「製品の値段を15%下げた場合」みたいな感じで、いろいろシミュレーションをしながら、方針を決めています。そんな時にも原価計算は役立っています。

 

 

(3) 効率の良くない原因をチェック

過去に製品を作った経験などをもとに「コストはこれくらい発生するはず」という予測を立てておけば、実際にコストが発生したときに比較をすることができます。比較をすると、何か不効率な作業や割高な材料を買ってしまったなど、日常の製造作業で改善しないといけないところを見つけることもできます。

 

 

 

第10回はここまでです。またどこかでお会いしましょう!

 

 

 

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【要確認】原価計算の必須知識はこれだけです (7:19)

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公認会計士・税理士内田正剛

うちだ会計事務所代表。
週刊「経営財務」での連載のほか、Twitter(@uchida016)やYouTubeを通じて、「難しい会計」を「わかりやすく簡単に」解説した情報を発信中。主な著書に「売上・収益の会計ルール入門」、「不正会計対応はこうする・こうなる」、「赤字決算の原因と対策がわかる本」(いずれも中央経済社)など。

» Twitter https://twitter.com/uchida016
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