第1回 コロナ禍だからこそ活用したい中小企業の管理会計
~管理会計とは!?将来の予測をするための手段です!~

危機から救う、売り上げを伸ばす。いざという時のために日ごろから準備を。

管理会計とは何かと聞かれると、将来の予測をするための手法と答えます。会社の経営は、上手くいっている時ばかりではないと思います。スタートアップ、成熟期、第二創業期といった会社のステージや、世の中や業界の好景気・不景気といったものにも影響を受けます。とくに、現在はコロナ禍の中で、今まで経験したことのない状況が続いています。

このような中で、例えば、コロナ禍で売上が2割落ちる見込みだけど、利益はいったいいくらになるのか、そもそも黒字なのか赤字なのかといったことを考えたうえで、将来の活動の方向性を示していくことができるようにするのが管理会計です。

このため、管理会計は、とくに普段とちがった状況でも十分使えるものであり、いざという時のために日ごろから活用する準備をしておくことが重要になります。

会計事務所の方は、管理会計を使って、経営者の感覚を数値化してあげることで、経営のサポートをしていっていただけたらと思います。

 

管理会計をさらに深堀していきましょう。

前回までのパートⅠの6回では、管理会計が実は身近なところにあるという考えのもとに、すぐに実践できる管理会計の手法をご紹介してきました。

今回からのパートⅡでは、たくさんある管理会計の手法の中から、中小企業にとって大事と考えられる10のトピックを、実例をまじえながら、解説していきます。この中には、少し手間をかけたり、ある程度の知識が必要であったりというようなところも出てくると思います。その部分も、丁寧に説明をし、このコラムの中で理解できるようにしていくつもりです。

 

管理会計ここだけは押さえよう10大トピック

①管理会計とは

②変動費・固定費

③管理会計PL

④CVP分析

⑤予算

⑥予測

⑦部門別PL

⑧売掛金・在庫・買掛金の残高管理 回転期間など

⑨運転資金・資金繰り

⑩投資評価(回収期間)

 

管理会計は、大学や大学院での学問としては大変ヴォリュームの大きなものとなっています。例えば、管理会計を体系化した名著『原価計算/六訂版』岡本清著は、1000ページ弱の膨大な情報量の書籍です。すべて大事な情報ですが、中小企業の実務家が情報を得て現場に落とし込もうとすると、実際にはそもそも読み解くことが難しい量と内容です。また、他の市販されている書籍においても、中小企業の現場では使わない論点も数多くあるように感じます。

このような膨大な管理会計の情報の中から中小企業に必要な部分を抜き出し、一つのまとめたものとして紹介していくのがこのパートⅡのねらいです。このため、中小企業の管理会計に必要な知識のほとんどを、実務への活用方法も含めて説明していけると考えています。

 

管理会計と「天気予報の」意外な共通点。将来に関する有益な情報をわかりやすく。

まずは、管理会計のイメージからつかんでいきましょう。実は、これまでパートⅠでは管理会計になじんでもらうことを優先して、「管理会計ってそもそも何?」ということには触れてきませんでした。パートⅡでは、管理会計の全体像の理解をより進めるために、少し見ておきましょう。

下にある図は「天気予報」と「天気・災害関連情報」です。実は、どちらかが「管理会計」を、もう一方は「財務会計」をイメージしています。それぞれどちらに当たるかを考えてみてください。

 

 

わかりましたか?正解は、「天気予報」が「管理会計」を、「天気・災害関連情報」が「財務会計」を、それぞれイメージしています。なぜなのかを理解するために、まずはそれぞれのイラストの特徴を整理してみましょう。

 

天気予報は、
●絵が使われていて理解しやすい
●アクションも提案している(例えば、熱中症に関する警戒度で熱中症への備えを促す)
●将来情報を対象としている
と、いった特徴があります。

これに対して、 天気・災害関連情報は、
●文章のみで淡々と説明している
●モノサシが明確である(例えば、震度)
●過去情報を対象としている
と、いった特徴があります。

 

実は、私たちにとても身近な天気予報の特徴は、管理会計のあるべき姿と一致しているのです。具体的にいうと、「将来についての有益な情報を利用者にわかりやすく伝える」という管理会計の目指すべき姿が、天気予報のなかで身近な形で実現されているといえます。例えば、天気予報の中には、花粉の飛散量や洗濯指数などが紹介されていますね。これは、皆さんがその日をどう過ごしたらいいか、つまりとるべきアクションまで提案してくれています。このように、天気予報の特徴は、将来に関する情報をわかりやすく、また有益なかたちで経営者に届ける管理会計の理想の形に通じています。

管理会計で指数にあたるのは、経営指標です。経営指標については、パートⅠ第5回を参照ください。
▷パートⅠ 第5回 ROE、ROAって何?会社の実態に合わせた経営指標とは!?

 

天気予報と管理会計が似ているというのは、決して偶然ではありません。天気予報と管理会計は、人または組織の活動の方向性を示すという役割の点で共通しているため、特徴も一致して当然なのです。管理会計のあるべき姿は「天気予報」。まずはこのイメージを頭に描いたうえで、管理会計の世界に入っていきましょう。

 

「やらされてる会計」と「自分からやる会計」。

ここでは、会計を「やらされてる会計」と「自分からやる会計」の2つに分けて考えてみたいと思います。「やらされてる会計」は財務会計のことで、共通のルールに従って処理、報告する会計になります。目的は、利害関係者の保護や適正な税務計算です。このため、正しさが求められ、数値は、ふつう財務数値のみを扱います。利用する人は、外部の投資家、税務署、銀行などが考えられます。外部というのが特徴になります。

中小企業であれば、「やらされてる会計」と言えば、税務計算のための税務会計となるのではないでしょうか。ともすれば払いたくない税金を、自分で計算するというわけです。

 

一方の「自分からやる会計」ですが、これは管理会計のことで、まず、決まったルールはありません。ではどうするかというと、目的が大事になってきます。

「自分からやる会計」の目的は、経営者の経営判断に役立つこと、日々の行動の管理に役立つことです。この目的を達成するために、自分の好きな方法・フォームで、財務数値だけでなく、販売数量だとか客数のような財務数値でないものも扱いながら、情報を活用していく会計が「自分からやる会計」となります。この会計は、社内で利用するものなので、他社と比較できることや、税務に求められるような公平性は必要はありません。

この経営判断や日々の管理に役立つための会計というところを常に意識して頂きたいと思います。何か迷った時には、決まったルールはないので、会社の経営判断に役立つ方に進んでいっていただく必要があります。

 

中小企業では会計事務所を巻き込んで。

ところで、中小企業ではなかなか管理会計が普及しないなんて話をよく聞きます。一番は時間がない、人材・ノウハウがないというところが大きなところかなと感じています。

このような中で、管理会計を活用するコツは、会計事務所を巻き込んでいくということではないでしょうか。中小企業では、会計事務所さんに対する依存度合が一般的に高くなっています。いつも数字を見てくれている会計事務所の先生や、担当者と一緒になって取り組んでいくことが、限られた時間や人材の中で、会計を経営に活用していく近道になるはずです。

一方で、会計事務所の方は、要望があるクライアントだけでなく多くクライアントに、ぜひ管理会計の手法を少しづつ取り入れていっていただき、日々の会計・税務顧問業務で得られた情報を、さらにクライアントの経営に役立つように提供していって頂きたいと思います。

 

公認会計士・税理士林健太郎

税理士法人ベルダ代表社員
監査法人トーマツ(当時)、辻・本郷税理士法人を経て、2011年に地元で独立開業し、広く四国・関西エリアで活躍中。管理会計を活用したアドバイスを中小企業の経営者に提供するとともに、大学院でも管理会計を教えている。「中小企業での会計の活用」を目指す。趣味は地元サッカーチーム、徳島ヴォルティスの応援。徳島県鳴門市出身。

» 事務所HP:http://www.kh-kaikei.com/

講師画像

公認会計士梅澤真由美

管理会計ラボ㈱代表取締役
通称「管理会計のマドンナ」。監査法人トーマツ(当時)を経て、日本マクドナルド㈱とウォルト・ディズニー・ジャパン㈱にて、経理業務などに10年間従事。「経理のためのエクセル基本作法と活用戦略がわかる本」(税務研究会)など著書多数。「つくる会計から、つかう会計へ」がモットー。趣味は、オンラインヨガと「あつまれどうぶつの森」。静岡県沼津市出身。

» 会社HP:http://www.accountinglabo.com/

講師画像

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ