ワクチンの接種費用に消費税はかかるの?

~消費税の「非課税取引」とは?~

2021年7月6日

 

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1.ワクチンの接種費用と消費税の関係


新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が本格化してきました。

「ワクチンの接種費用に消費税はかかるの?」という質問をいただいたのですが、その答えは「YES」でもあり「NO」でもあります。

新型コロナウイルス感染症のワクチンは、接種に係る費用の全額が公費で賄われるため、無料で接種を受けることができます。無料、つまり、お金のやり取りがないということは、当然、消費税もかかりません。消費税は、本体価格(税抜金額)に10%や8%の税率を乗じて計算するため、無料(タダ)のものには消費税はかからない仕組みになっています(一部例外あり)。

インフルエンザの予防接種のように接種費用が有料のものや、健康診断費用や常備薬の購入費用など、会社が負担する医療関係(病院関係)のものに消費税がかかるのか、かからないのか、判断に悩むことがあります。

今回は、これらのものに消費税がかかるかどうかを判断する際のポイントになる消費税の「非課税取引」について解説をします。

 

 

2.消費税の「非課税取引」とは?


消費税の「非課税取引」とは、本来は消費税をかけるべき取引ですが、理由あって特別に消費税をかけない(課さない)こととしているものをいいます。

その理由は、①消費税の性格から課税の対象とすることになじまないもの、②社会政策的な配慮により課税することが適当ではないもの、の2つに分けることができ、具体的には次のような取引があります。

この中の「社会保険医療」の範囲を正しく理解することが、会社が負担する健康診断費用などに消費税がかかるかどうかを判断する際のポイントになります。

 

 

3.社会保険医療とは?


消費税が非課税になる「社会保険医療」には様々なものがあり、消費税法の別表第一に定められています。この中の代表的なものとして「健康保険法の規定に基づく療養の給付」があげられ、簡単にいうと「保険証を持って行って一部負担で受けられるもの」をいいます。

 

風邪をひいたAさんとBさんがいます。

Aさんは病院で診察を受けて薬をもらったのに対して、Bさんは病院には行かずにドラッグストアで市販の風邪薬を買ったとします。

Aさんは病院で保険証を提示して一部(1~3割)負担で診察費用を支払います。また、病院で出してもらった処方箋を持って、調剤薬局でも一部負担で薬を購入します。これらは、いずれも「健康保険法の規定に基づく療養の給付」に該当するため、診察費用、薬代ともに非課税、つまり消費税はかからないということです。

 

Bさんはドラッグストアで市販の風邪薬を買いました。この風邪薬の購入は、「健康保険法の規定に基づく療養の給付」には該当しないため、保険証を提示したとしても一部負担で買うことはできません。また、「健康保険法…」に該当しないということは、消費税の非課税取引にならず、さらに風邪薬などの医薬品は、軽減税率の対象となる飲食料品に含まれないため、10%の消費税がかかります。

 

 

4.健康診断費用・インフルエンザの予防接種は?


ここまで整理ができればあとは簡単です。

健康診断やインフルエンザの予防接種、常備薬の購入はいずれも、「保険証を持って行って一部負担で受けられるもの」、つまり、非課税の対象となる「社会保険医療」には該当しません。したがって、これらに係る費用には、すべて10%の消費税がかかります。

非課税取引は、本来は消費税をかけるべき取引の一部を「特別に消費税をかけない」こととしています。「特別」なので、その線引きは厳密にされています。「病院関係」とか「薬」といった、ザックリとしたキーワードで判断をしないように注意をしましょう。

 

 

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税理士石井幸子

東京地方税理士会 横浜中央支部所属
勝島敏明税理士事務所(現:デロイトトーマツ税理士法人)ほかを経て、石井幸子税理士事務所を開業。
主な著書に「接待飲食費を中心とした交際費等の実務」(税務研究会)、「消費税率引上げ・軽減税率・インボイス〈業種別〉対応ハンドブック」(日本法令、共著)等がある。

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