@zeiken_info
第235回 インボイス制度下における自動販売機・自動サービス機特例に係る留意点
2022年7月1日
このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー
■帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引
インボイス制度下においても、帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる取引があります。インボイス制度の下では、3万円特例は廃止され、「支払対価の額の合計額が少額である場合」に代えて「請求書等の交付を受けることが困難である場合」に帳簿のみの保存により仕入税額控除が可能とされました。
具体的には、次の①から⑨までに掲げる課税仕入れについて、当該課税仕入れを行った事業者において適格請求書等の保存を要せず、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除を認めるものとされました（新消法30条7項、新消令49条1項、新消規15条の4）。
帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる取引
| ① 公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送として行われるもの（3万円未満のものに限る）（公共交通機関特例） ② 適格簡易請求書の要件を満たす入場券等が使用の際に回収されるもの（入場券等回収特例） ③ 古物営業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの ④ 質屋を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの ⑤ 宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの ⑥ 適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品を買い受けるもの ⑦ 自動販売機または自動サービス機からのもの（3万円未満のものに限る）（自動販売機・自動サービス機特例） ⑧ 郵便切手類のみを対価とする郵便の役務および貨物の運送（郵便ポストに差し出された郵便物および貨物に係るものに限る） ⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等（出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当）（出張旅費等特例） |
※上記の③から⑥については、買い受ける者の棚卸資産に該当する場合に限ります。
本稿では、上記のうちの「⑦自動販売機または自動サービス機からのもの（3万円未満のものに限る）」について解説します。
■自動販売機・自動サービス機特例の取扱い
「自動販売機または自動サービス機からのもの（3万円未満のものに限る）」とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいいます（インボイス通達3-11）。
したがって、例えば自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー、金融機関のＡＴＭによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービス等のように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当します。
一方、ネットバンキングによる振込は、本特例の対象外です。ネットバンキングのように機械装置のみで代金の受領と資産の譲渡等が完結しないものは対象外となります（適格請求書Ｑ＆Ａ問38）。したがって、ネットバンキングで振込を行う場合の振込手数料は、原則通り、一定の事項が記載された帳簿およびインボイスの保存がなければ仕入税額控除の適用が認められなくなります。
この点本コラムの論点からは少し離れますが、銀行等の金融機関の窓口で振込を行う場合は、もちろん本特例の対象にはなりません。仕入税額控除の適用を受けるためには一定の事項が記載された帳簿および適格簡易請求書の保存が必要になります。適格請求書ではなく適格簡易請求書の保存でよいとされますのは、金融機関における窓口業務が、不特定多数の者に対して資産の譲渡等を行う事業に該当すると解されるからです。
また、コインパーキングや自動券売機のように代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等が別途行われるようなものも本特例の対象外となります。
■帳簿の記載事項
帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となる点に留意する必要があります。
| ・ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨（自動販売機・自動サービス機特例に該当する場合の例→例えば「自動販売機等特例」） ・ 仕入れの相手方の住所または所在地 |
なお、自動販売機・自動サービス機特例については、帳簿に「仕入れの相手方の住所または所在地」の記載が不要な一定の者を定めたインボイス通達4-7のいずれの取引にも該当しませんので、「仕入れの相手方の住所または所在地」を原則どおり記載する必要があると考えられます。この点については、自動販売機の設置場所を記載する対応でもよいと解されます。
このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー
