グループ間取引の書類保存の条文|税務通信 READER’S CLUB

2026年5月13日

 

 

 

関連記事:No.3892(令和8年3月16日号) 02頁

Q1

令和8年度税制改正で導入されたグループ間取引の書類保存制度は、条文のどこに記載がありますか?

 

A1

条文は2つであり、法人税法施行規則59条の2と67条の2が創設されています。
59条の2は、青色申告法人に対する規定、67条の2は、白色申告法人など青色申告法人以外の法人に対する規定となっています。

 

法人税法施行規則 第59条の2 (関連者間取引に係る書類の整理保存の特例)
青色申告法人は、当該青色申告法人に係る関連者との間で次に掲げる取引( 略 )を行つた場合において、当該関連者間取引に関して受領し、又は作成した注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類( 略 )で、前条第1項その他法人税に関する法令の規定により保存しなければならないこととされているものに次の各号に掲げる当該関連者間取引の区分に応じ当該各号に定める事項の記載又は記録がないときは、その記載又は記録がない事項( 略 )を明らかにする書類( 略 )を取得し、又は作成し、当該特定事項記載書類を整理し、前条第2項に規定する起算日から7年間、これを納税地又は当該関連者間取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。以下 略

 

法人税法施行規則 第67条の2 (関連者間取引に係る書類の整理保存の特例)
内国法人である普通法人等は、当該普通法人等に係る関連者との間で関連者間取引( 略 )を行つた場合において、当該関連者間取引に関して受領し、又は作成した注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類( 略 )で、前条第2項その他法人税に関する法令の規定により保存しなければならないこととされているものに当該みなした場合における第59条の2第1項各号に掲げる当該関連者間取引の区分に応じ当該各号に定める事項の記載又は記録がないときは、その記載又は記録がない事項( 略 )を明らかにする書類( 略 )を取得し、又は作成し、当該特定事項記載書類を整理し、第59条第2項(帳簿書類の整理保存)に規定する起算日から7年間、これを納税地又は当該関連者間取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。以下 略

 

法人税法施行規則59条の2は、下記の法人税法126条に定める財務省令であり、この126条(1項)に基づく帳簿書類の備え付け、記録又は保存をしていない場合には、127条により青色申告の承認取消しとなるため、法人税法施行規則59条の2に基づく書類の保存をしていない場合には、青色申告の取消し事由になるとされています。

 

法人税法 第126条 (青色申告法人の帳簿書類)
第121条第1項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。以下 略

 

法人税法 第127条 (青色申告の承認の取消し)
第121条第1項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。一 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第1項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと 当該事業年度以下 略

 

Q1

法人税法施行規則67条の2は、白色申告法人向けの規定とありますが、そもそも白色申告法人は青色申告取消しのデメリットがないことから、白色申告法人では新たに設けられたグループ間取引の書類保存をする必要はないのではないでしょうか?法人税法131条の推計課税も、帳簿書類がないことが発動要件にはなっていないと思いますので、推計課税のリスクが高まるわけでもないように思います。

 

A1

新たに設けられたグループ間取引の書類保存特例措置だけの話ではないですが、日本の法人税は申告納税制度を採用しています。納税者自らが「益金」と「損金」を計算して所得を算出するためには、その根拠となる客観的な記録(帳簿)が不可欠です。法人税法第150条の2において、青色申告法人以外の法人(白色申告法人)にも帳簿の備付け・記録・保存が義務付けられていますが、これは「税を正しく計算・申告するためには帳簿をつけることが当たり前の大前提である」という、制度の基盤を法的に明確化した訓示的・宣言的な規定としての意味合いが強いと言えます。
また、確かに、法人税法第131条の推計課税の規定は、「帳簿がないから推計課税する」とは書かれていません。

 

法人税法 第131条 (推計による更正又は決定)
税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税(その内国法人が通算法人(通算法人であつた内国法人を含む。以下この条において同じ。)である場合には、第127条第3項又は第4項(青色申告の承認の取消し)の規定により読み替えられた同条第1項各号に定める事業年度から当該事業年度後の事業年度のうち最初に青色申告書以外の申告書を提出する事業年度の前事業年度までの各事業年度に係る法人税を除く。)の課税標準若しくは欠損金額又は内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税、各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税若しくは各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税の課税標準の更正をする場合を除き、その内国法人( 略 )の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準(更正をする場合にあつては、課税標準又は欠損金額)を推計して、これをすることができる。

 

しかし実務上、帳簿が存在しない(または著しく不完全な)場合、税務署長は実際の取引額(実額)に基づいて所得を計算(更正・決定)することが物理的に不可能となります。その「実額計算が困難である」という事実状態が引き金となり、結果として同業者比準などの推計手法を用いざるを得なくなる、という側面もあると思いますし、条文の直接の要件ではないものの、実務上は「帳簿不保存」が推計課税の発動を誘発する最大の要因として機能しているように思います。今回新たに義務付けられたグループ間取引の特定事項記載書類が欠けている場合も、ひいては帳簿書類全体としての信憑性や完全性が疑われることにつながり、結果的にこれらの重大な不利益を被るリスクに直結する可能性もあり得ます。
その他にも、帳簿がないことによる「隠ぺい・仮装」と認定されるリスク、消費税の仕入税額控除の不適用というデメリットも考えられます。
このように、帳簿を備え付けないことによる不利益が事実上の強力な制裁として機能しているため、あえて法人税法上に強い独立した罰則を設ける必要がない、というのが実態としてあるとも考えられます。
また、そもそも、会社法では、厳格な会計帳簿の作成・保存義務が課されています(会社法第432条)。つまり、「法人である以上、株主や債権者等の保護のために帳簿を作成するのは当然の義務」であり、税法(法人税法)も当然にその事実を前提としているのかもしれません。

 

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