地方税(法人住民税・事業所税)における「事業所等」の判定基準|税務通信 READER’S CLUB

2026年7月8日

 

 

 

関連記事:No.3900(令和8年5月18日号) 08頁

Q1

法人住民税や事業所税の判定においては、まずは「事業所等」の判定が重要になると思いますが、その判定にあたり注意すべき事項はありますか?

 

A1

法人住民税などの地方税の課税権は、事業所等が所在する地方団体が持つため、地方税を検討するにあたり、この「事業所等」の定義を正確に把握することは極めて重要です。

地方税法上、事業所等とは「自己の所有か否かを問わず、事業の必要性から設けられた人的及び物的施設であって、そこで事業が継続される場所」をいいます。実務では、これを1.事業の必要性、2.人的・物的施設、3.継続性の3つの要件に分けて判定します。

 

1.「事業の必要性」の判定

該当しない例:便宜的目的

出張時の宿泊所など、従業員の便宜的目的のみに使われる場所は、事業の必要性から設けられたとは言い切れないため、事業所等には該当しません。

 

該当しない例:形式的な本店

登記された法人の本店所在地であっても、そこで実態として事業を行っていない「形式的な本店」であれば該当しません。

 

該当する例:収益の有無

事業を行う必要性さえあれば、たとえ現に収益(売上)が発生していなくても事業所等に該当することになります。

 

2.「人的施設」と「物的施設」の要件

人的施設(人)と物的施設(設備)の双方が揃って初めて事業所等となります。

(1)人的施設:事業活動に従事する人

正社員だけでなく、パートや派遣社員も含む概念です。月に数日出張して仕事をする程度で、普段は常駐の人がいない場所であっても人的施設に該当します。

 

【派遣社員の注意点】
自社(派遣元)の社員が他社に派遣されている場合、その派遣社員は派遣先企業の従業者としてカウントされます。そのため、派遣元企業にとっては派遣先の場所を自社の人的施設とは取り扱いません(派遣先企業にとっては、そこが人的施設となり得ます)。

 

【下請け丸投げのケース】
業務を受注しても、下請け業者に丸投げしており、自社工場内に自社社員がいない(工場内で作業しているのは下請け業者のみ)場合には、物的施設(建物)はあっても人的施設を欠くため、結果として自社の事業所等には該当しません。

 

【デパート内店舗等】
デパート内のインショップ等において、メーカー側の社員が常駐して販売業務を行っている場合には、そのデパート内店舗はメーカーの人的施設(事業所等)となります。

 

(2)物的施設:土地・建物・設備等

事業を遂行するために使用する土地、建物、事務設備等をいいます。この要件を満たせば、売店など狭小な場所であっても該当します。

 

(参考)リモート対応店舗の議論:
近年増加している、その場に店員がおらずリモートで画面越しに対応する店舗については、人的要件を満たすか否かが実務上議論となっています。現行の取扱いでは、完全無人の自動販売機などは人的施設を欠くため事業所ではないとされていますが、リモートでリアルタイムに応答・管理しているような新形態の店舗については、今後の課税当局の動向に注意が必要です。

 

3.「事業が継続される場所」という期間要件

その場所における事業活動の「継続性」が求められます。

該当しない例:2~3か月程度の臨時の現場事務所やポップアップストアなどは、この要件を満たしません。

該当する例:海の家やスキー場のロッジのように、観光地などで季節営業を行うことが常態化している(年中行事化している)場合は、事業の継続性があるものと判断されます。

 

【補足】法人住民税における「寮等」の取扱い
法人住民税の均等割においては、事業を行っていない「寮等」についても、均等割のみが課される事業所等とされています。ここでいう寮等とは、従業員の宿泊・慰安・娯楽等のために「常時」設けている施設(社宅、保養所など)を指します。ただし、特定の従業員が利用する独身寮や個別の社宅などは、この「寮等」には該当しない(均等割の課税対象にならない)点に注意が必要です。

 

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ

注目タグ