実は影響大!2022年4月からの年金制度大改正!

2021年12月10日

 

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経済活動がいよいよ本格的な再開になるかと期待しておりましたが、ここにきて「オミクロン株」という変異株が発生!まだまだ気を抜けないようですね。会食時の人数制限の緩和もなされてはおりますが、忘年会などは羽目を外しすぎないよう、会社担当者の方は引き続きご配慮いただきたいと思います。
さて、今回は来年4月からの年金制度改正について取り上げたいと思います。今回の改正は会社のシニア給与やパートタイマーの社会保険加入に影響するほか、個人の老後のプランにも影響しますので、なかなか気を抜けない内容です。会社担当者の方は基本事項についてぜひとも理解しておきましょう!

 

改正1 ~在職中の老齢年金見直し

60歳から64歳までの間に支給される「特別支給の老齢厚生年金」は、年金月額と総報酬月額相当額(月給+過去1年の賞与額月換算額)が合計で28万円を超えると、超えた額の2分の1が支給停止になる仕組みです。この28万円が2022年4月からは47万円に改正となります。これによって働いて月給が多いという理由で年金額が減るという事態が、大幅に改善されます。但し、昭和36年4月2日以降生まれ(女性は5年遅れ)は老齢年金の支給は65歳以降になりますので、対象者は少ない見込みです。

 

改正2 ~75歳繰り下げ可能に!

これまで老齢基礎年金、老齢厚生年金は原則65歳からの支給で、本人の希望により5歳繰り上げの60歳、5歳繰り下げの70歳、まで変更ができましたが、これが2022年4月から75歳まで繰り下げが可能となります。

75歳まで繰り下げる場合のメリットは、65歳時点の年金額を1.0とした場合、1.84倍(1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額)となりますので金額的にかなりの増額になります。

 

改正3 ~繰り上げ減額率の改善
上記2のように年金を繰り下げする方がいる一方、65歳より前に繰り上げて受給する方も存在します。この場合、1ヶ月繰り上げるごとに0.5%減額されますので60歳まで繰り上げた場合、65歳時点と比較して70%の金額に減額されます。これが2022年4月から1ヶ月当たり0.4%に引き下げになりますので30%から24%に減額幅が小さくなります。但し、これには年齢制限があり、1962年4月2日以降生まれが対象ですのでご注意ください。

請求時年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳
減額率
(改正後)
70%
(76%)
76%
(80.8%)
82%
(85.6%)
88%
(90.4%)
94%
(95.2%)
100%

 

改正4 ~在職定時改正

高年齢者法の改正等もあり、65歳を超えて働きながら年金をもらう方は今後増えると思われますが、この場合これまで65歳以降に納めた厚生年金保険料が自分の年金額に反映されるのは資格喪失時(70歳到達時・退職時)になったときからでした。これが2022年からは毎年1回10月分から改定された年金額が反映されるようになります。

 

改正5 ~短時間労働者の適用拡大

現在、従業員数501人以上の会社では、週20時間以上、月額賃金が8.8万円以上、勤務期間1年以上の見込み、等の条件を満たした場合は社会保険に加入しなければなりませんが、法改正により下記のように適用拡大されます。

現在 2022年10月~ 2024年10月~
従業員数501人以上 従業員数101人以上 従業員数51人以上

勤務期間が【1年以上の見込み】から→【2ヶ月を超える見込み】に2022年10月から改正されます。

 

改正6 ~国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え

これまで国民年金手帳に基礎年金番号が記載され、この番号をもとに転職後も年金加入期間の通算が行われていきましたが、現在は主にマイナンバーを利用することで手続きが完了し、基礎年金番号の明示は不要になっています。この現状を踏まえ、2022年4月からは【国民年金手帳の交付】から【基礎年金番号通知書の送付】に変更となります(年金手帳の再交付は廃止されますが、法施行までに交付された年金手帳は引き続き基礎年金番号を明らかにすることができるものとして利用可能)。
厚生労働省HP

 

まとめ

今回の年金制度改正は個人に関する改正内容が多いですが、会社で働くシニア世代も増えておりますので、会社にも無関係ではないでしょう。また、改正5は対象となる会社については影響が非常に大きいですし、改正6も担当者にとっては重要な変更点となります。従業員からの質問や実務に反映できるように今のうちから整理しておきましょう。

 

雇用調整助成金おまけ情報

先月「雇用調整助成金(雇調金)の特例措置は来年3月まで延長になった」とお知らせしましたが、この変更後の内容について令和3年11月19日、厚生労働省から発表がありました。

判定基礎期間の初日 令和3年 令和4年
5~12月 1月・2月 3月
中小企業 原則的な措置 4/5(9/10)
13,500円
4/5(9/10)
11,000円
4/5(9/10)
9,000円
業況特例・地域特例 4/5(10/10)15,000円 4/5(10/10)15,000円
大企業 原則的な措置 2/3(3/4)
13,500円
2/3(3/4)
11,000円
2/3(3/4)
9,000円
業況特例・地域特例 4/5(10/10)15,000円 4/5(10/10)15,000円

注)括弧書きの助成率は解雇等を行わない場合です
どうやら1人の1日あたりの上限額が引き下げられるようです。今後申請用紙の変更に注意ですね。
厚生労働省HP
お問い合わせは下記になります。
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
コールセンター 0120-60-3999 受付時間9:00~21:00 土日・祝日含む

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

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